【市況】【植木靖男の相場展望】 ─年末特有の材料株探しか?
株式評論家 植木靖男
「年末特有の材料株探しか?」
●投資マネーは金融引き締め国から緩和国へシフトするか
日経平均株価は11月後半から再び下げ出したが、10月安値の2万7300円処を売り崩そうとする海外筋の売りを持ちこたえ、12月に入って反発に転じた。だが、2万9000円という目前の目標値の奪回に失敗し、やや疲れ気味といったところだ。いよいよ年末相場を意識する日柄となり、投資家心理の慌ただしさを感じる今日この頃である。では、年末相場はどうなるのか。目下のところは、3万円大台を巡って強弱感が入り交じった見通しとなっている。
まず、材料面からみると、来週前半には年内最後のFOMC(連邦公開市場委員会)がある。12月10日発表の11月米消費者物価指数(CPI)はおそらく10月の6.2%という高い水準と同程度とみられるが、このところパウエルFRB議長の心理は大きく揺れ動いているようにみえる。インフレ抑制を重視し、金融引き締めを急げば、新型コロナウイルスの沈静が不透明な中、景気悪化、つまりスタグフレーションを招き、株価は大きく崩れる可能性がある。だが、物価上昇を放置すれば、インフレが加速するリスクもある。パウエル議長の胸の内はまさにシェイクスピアのハムレットの心境か。
いずれにしても、米国はテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を開始し、その後の利上げの方向には間違いないようだ。
こうした金融引き締めは株価にとってマイナスであることはいうまでもない。ましてリーマン・ショック後、金融緩和により巨額の資金が市場に流入し、株価は史上最高値を更新し続けてきただけに、厳しいマイナス材料となりそうだ。
一方で、わが国も米国に追随して異次元の金融緩和を続けてきたが、消費者物価の上昇率は2%達成にはほど遠く、緩和政策を維持する方針だ。となれば、投資資金は金融引き締め国から金融緩和国に流れるのは自明の理である。ここへきて年金マネーが1年8カ月ぶりの大きさで日本株を買ったという。納得がいく、株価が安くなったという理由よりも、先行きをみての買いであろう。
●ぜいたくな条件つき銘柄の短期売買
目先的にはどうか。値動きからみてみたい。12月に入ってからの動きは、7日に急上昇をみせ、それまでと変わって買い転換した。だが、戻り相場の肝は2万9300円処。株価はその水準どころか2万9000円も超えられず、やや軟調だ。
米国市場でもNYダウ、ナスダック指数のいずれも肝となる水準に到達し、そこで立ち止まったかにみえる。米国株は正念場を迎えている。この水準を一気に上回れば高値更新も可能となるのだが、はたしてどうか。やはり11月の消費者物価指数、FOMCでのパウエル議長の発言を見極めるまで動けないというところか。
では、日米ともに当面、動けないとすれば、この間の物色はどのような展開になるのか。週末にかけて米国株は景気敏感株でもなくハイテク株でもないディフェンシブ株、いわゆる安定株に逃げ込んだ。それほど収益が大きく改善するわけではないが、生活に欠かせない製品を生産している、市場的には地味な銘柄群である。これらは出遅れ株でもあり下値リスクは低いが、全般の方向性が見えてくれば、再び潜ってしまうリスクが大きい。
さらにもう1つは、年末特有の個別株物色である。年末が近づくと、人の気持ちも慌ただしくなる。結果として「1カイ2ヤリ」の短期投資になりやすい。となれば安くて、かつ値動きが比較的大きく、流動性があり、ここへきて信用取組が厚い銘柄。加えれば、なにか新材料が隠れていると思わせるような銘柄だ。少しぜいたくな条件つき銘柄といえようか。
いまでいえば日本CMK <6958> は仕手株に育つ条件を満たしているように思われる。地味な銘柄ではDMG森精機 <6141> だ。ここへきて工作機械業界の11月受注額は前年同月比64%増と回復が続く。
ディフェンシブといえば凸版印刷 <7911> も動きがよい。期待したい。
2021年12月10日 記
株探ニュース