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【市況】日経平均は3日ぶり小幅反落、「買い戻し一服感」と「FOMC前のインフレ懸念」/ランチタイムコメント

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

 日経平均は3日ぶり小幅反落。42.09円安の28818.53円(出来高概算4億6000万株)で前場の取引を終えている。

 8日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続伸し、35ドル高となった。製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、3回接種で変異株「オミクロン型」にも効力があるとの暫定的な試験結果が発表され、感染拡大への懸念が一段と和らいだ。ただ、前日までの大幅上昇を受けて利益確定の売りも出て伸び悩んだ。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も+0.64%と3日続伸したが、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-0.61%と軟調。日経平均も前日までの2日間で930円あまり上昇しており、本日はやや利益確定売り優勢で33円安からスタートした。寄り付き後は米株などの上昇を支援材料に下値こそ堅かったが、前日終値を挟みもみ合う場面が多かった。

 個別では、日立<6501>が3%超の下落。小島啓二社長の取材内容が一部メディアで報じられているが、日立金<5486>の売却手続きの遅れなどが意識されたようだ。その他売買代金上位では商船三井<9104>やソニーG<6758>が軟調で、川崎船<9107>や郵船<9101>は小安い。丹青社<9743>は決算を受けて売り優勢。また、欧州のごみ焼却発電プラントメーカー買収を発表した日立造<7004>は急落し、NCHD<6236>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金トップのソフトバンクG<9984>や2位のレーザーテック<6920>、それにJAL<9201>やANA<9202>といった空運株が堅調。任天堂<7974>や東エレク<8035>は小高い。業績上方修正の白銅<7637>や決算発表のミライアル<4238>は急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、金属製品、繊維製品、機械などが下落率上位。一方、空運業、ゴム製品、情報・通信業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の64%、対して値上がり銘柄は30%となっている。

 新型コロナ「オミクロン型」に対するワクチンの有効性への期待からNYダウが小幅ながら上昇する一方、本日の日経平均は前場中ごろから小安い水準で推移している。中国・上海株や香港株がまずまず堅調なところを見ると、一層伸び悩んでいる印象が強い。売買代金上位もソフトバンクGやレーザーテック、空運株を除くと全般小安い。業種別騰落率では景気敏感系セクターがやや軟調だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円弱。ここ2日ほど1日を通じて3兆円台に乗せていたが、本日は後場売買が膨らまなければかなり低調となる可能性がある。

 新興市場ではマザーズ指数が+0.01%と小幅に3日続伸。こちらも前日終値を挟み一進一退の展開となっている。上値追いが続く11月24日上場のサイエンスアーツ<4412>や、業績上方修正のセルソース<4880>が賑わっているが、時価総額トップのメルカリ<4385>は伸び悩んでいる印象。明日あたりからブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、これに参加するための換金売りが出てくることも想定しておきたい。

 さて、米国ではアップルが連日で過去最高値を更新するなど投資意欲の根強さも感じられるが、NYダウなどはさすがにここまで急ピッチのリバウンドだったことから上値が重くなってきた。日本でも株価指数先物の取引状況を見ると、明日10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)に向けたロールオーバー(限月乗り換え)がかなり進み、買い戻しの動きは一服しつつあるとみられている。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は3日申し込み時点で3兆6488億円と高水準にあり、日経平均が節目の29000円近辺まで値を戻す場面では目先の利益を確定する売りが出やすいだろう。本日の売買代金の低調ぶりを見ると、短期的なリバウンドに乗ろうとする動きも減ってきた印象を受ける。

 また、米国では来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に気になる動きもある。このところ新型コロナ「オミクロン型」への懸念が和らぐとともに低下に歯止めがかかっていた10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI、期待インフレ率の指標)だが、前日は2.52%(+0.05pt)と上昇した。これに伴い金利も長期の年限を中心に上昇。8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が1103.3万件(前月比43.1万件増)と過去2番目の高水準になり、雇用の伸び鈍化は労働力不足によるものとの見方からインフレ圧力の高まりが意識されたようだ。

 度々当欄で述べているとおり、バイデン政権にとって来年の中間選挙を前に「インフレへの不満」が最大のリスクと捉えられている可能性が高い。連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長再任決定と前後し、パウエル氏らがインフレ対応姿勢を強めていることもこれと無縁でないだろう。FOMCを前にインフレ圧力につながる「雇用ひっ迫」が改めて確認され、金融引き締めへの警戒感が再燃することも想定しておく必要がありそうだ。(小林大純)
《AK》

 提供:フィスコ

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