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【市況】ESG最前線レポート ─「ESG投資が与えるインパクト」


第2回 「ESG投資が与えるインパクト」
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム 倉橋 麻生

●COP26開催――気候変動と脱石炭

 10月31日より、イギリスで国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されました。

 温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」では、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑えるよう定めています。この達成に向け、各国が温室効果ガスの削減目標を打ち出していますが、現状のままでは今世紀末までに2.7度上昇してしまうと国連は試算しています。

 今回のCOP26では、新たに23カ国が「脱石炭」を宣言し、46カ国・地域で石炭火力発電の廃止を目指す中、日本は中国、インド、オーストラリアとともに加わらず、国際的な環境NGOからは前回に引き続き、地球温暖化対策に消極的な国に贈られる不名誉な「化石賞」に選ばれました。

 また、今回採択された文書では、当初盛り込まれることが予定されていた「石炭の段階的な廃止」は、中国やインドなどの反発を受け、「石炭火力発電の段階的な削減」という表現に改められ内容が後退しました。

 近年では、金融機関や商社が「化石燃料産業から投資撤退する」というダイベストメントの動きが日本でも活発化していますが、今後のエネルギー方針と企業の対応が注目されます。

●ESG投資の歴史的背景

 企業の倫理や環境対策などの責任に注目するESG投資の先駆けは、1920年代の米国に見られます。酒、タバコ、ギャンブルに関連した産業に、教会の基金を投資するのを避けたそうです。

 1960年代には、ベトナム戦争に反対して軍需産業への投資をボイコットする運動がありました。1970年代になると、環境汚染に対する消費者運動と連携した「グリーンインベスター(緑の投資家)」が現れました。

 社会的責任を問われる側の企業の姿勢も変化してきました。1980年代半ばには、アパルトヘイト(人種隔離)政策をとる南アフリカ共和国に投資している企業の株式を売却する大きなキャンペーンが展開され、米国のIBM<IBM>、ゼネラル・モーターズ<GM>などが南アでのビジネスを大幅に縮小あるいは停止しました。これが南アのアパルトヘイトを終わらせる一つの要因になったと言われています。

 そして1990年代には、環境問題の解決につながる技術やサービスに集中投資する「グリーンファンド」が欧米で生まれました。

 ESG投資とは、社会がもともと抱えている様々な問題を改善するための手法として生まれたのです。

●ESG投資の現在

 日本では2015年9月、約140兆円の運用資産を持つ世界最大の公的年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、資金運用において、現在のSRI(社会的責任投資)市場におけるメインテーマであるESGの視点を反映させる責任投資原則(PRI)に署名したことを皮切りに、公的年金のESG投資(SRI)への関心が高まってきました。さらに、GPIFは2017年10月には投資原則を改定し、「すべての資産クラスにおいてESGを考慮することで、加入者のために中長期的な投資収益の拡大を図る」と表明しました。

 近年、社会的に大きな注目が集まっているのが、「SDGs(持続可能な開発目標)」です。SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成するための国際目標です。貧困や環境問題の解決など持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲット、232の指標から構成されています。

 日本政府も全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置し、今後の日本の取り組みの指針となる「SDGs実施指針」を決定するなど、基盤整備を図っています。

 ESG投資は、いわばSDGsの金融版ともいえ、今後もさらなる市場の拡大が見込まれます。日本企業の優れたESGへの取り組みを世界に発信することが、海外から日本企業へのESG投資を促すことにもつながります。

 そして、これらのESG投資を促進することも、私たち投資家が地球温暖化の抑止やSDGsに参加することになると言えます。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2021年11月25日 記/次回は2022年1月2日配信予定)



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