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【特集】ファンペップ Research Memo(4):皮膚潰瘍向け治療薬は国内で第3相臨床試験を開始


■主要開発パイプラインの動向

ファンペップ<4881>の開発パイプラインとしては、皮膚潰瘍を適応症とする「SR-0379」のほか、抗体誘導ペプチド技術で開発した乾癬及び強直性脊椎炎を適応症とする「FPP003」、花粉症を適応症とする「FPP004」、乾癬を適応症とする「FPP005」の4品目があり、そのほかにも複数の開発候補品を抱えている。

1. SR-0379(皮膚潰瘍)
「SR-0379」は皮膚潰瘍(褥瘡(床ずれ)及び糖尿病性潰瘍)の治療薬として、2021年6月より国内で第3相臨床試験が開始されている。現在の皮膚潰瘍の治療法では、皮膚組織が欠損した場合、感染の疑いがある場合にはまず細菌の付着・増殖を抑えるための治療(消毒剤や抗生物質などを使用)を一定期間施してから、組織再生のための治療(細胞増殖因子の投与)を行う必要があり、治療期間が長くなることが課題となっていた。「SR-0379」は、創傷治癒促進効果に加えて抗菌作用もあることから、従来よりも治療期間を短縮できる効果が期待されている。

2018年から2019年にかけて実施した第2相臨床試験(症例数120例)の結果では、プラセボ群に対して潰瘍面積の縮小率において有意差は得られなかったものの、重症度の評価指標である「DESIGN-RRスコア」で有意に重症度が改善したとの結果が出ている。同社は同結果を受けてPMDAとの協議のうえ、「SR-0379」の第3相臨床試験について、簡便な外科的措置(縫合、植皮、有茎皮弁)が必要な重度な患者(入院患者)を対象に、主要評価項目については、「植皮等の簡便な外科的処置に至るまでの日数」とし、プラセボ対照二重盲検比較試験(1回/日、28日間投与)で実施することとした。目標症例数は120例で、2021年8月に第1例目の被験者投与がスタートしている。症例数が同じだった第2相臨床試験が約1年で終了しており、今回は治験施設数も増やしていることから、コロナ禍であっても2022年中には臨床試験が終了するものと見込まれる。結果が良好であれば2023年に販売承認申請を行い、2024年の上市が見込まれる。第2相臨床試験の結果から、第3相臨床試験の主要評価項目において有意差を得る可能性は高いと弊社では見ている。

皮膚潰瘍は患者や医療現場からも治療期間の短縮に対するニーズは強く、高齢化社会の進展に伴う「寝たきり患者」問題や糖尿病性皮膚潰瘍患者の増加などからも社会ニーズにマッチした製品と言える。「SR-0379」は誰にでも使えるスプレー式で、ベッドサイドに置いておける安定性もあり利便性の面でもメリットがある。このため、開発に成功すれば、既存薬(細胞増殖因子)の市場を代替していくものと予想される。同社では各種統計データから、皮膚潰瘍患者数を、国内で約100万人(褥瘡約20万人、糖尿病性潰瘍約80万人)、米国で約230万人(褥瘡約50万人、糖尿病性潰瘍約180万人)と試算している。今回の第3相臨床試験では重度の皮膚潰瘍患者が対象となっているが、その特性から中度や軽度の患者にも適応拡大される可能性がある。

皮膚潰瘍治療薬としては、軟膏タイプのものから湿布、スプレータイプのものまで様々なものがあるが、スプレータイプの治療薬となる「フィブラストスプレー(科研製薬<4521>)」は薬価が約8千円/瓶となっており、売上規模は約30億円となっている。当面はこの代替を狙っていくことになるが、すべての皮膚潰瘍患者で利用されることになれば、国内だけで潜在市場は約100億円程度が見込まれる。

なお、「SR-0379」については2015年に塩野義製薬と全世界を対象としたライセンス契約を締結しており、契約総額(契約一時金、開発マイルストーン、販売マイルストーンの合計)は100億円となっている。国内で第3相臨床試験が開始されたことにより、マイルストーン収入125百万円を2021年第2四半期の事業収益として計上した。なお、海外市場については第3相臨床試験の結果を見て、塩野義製薬が開発を進めていくか判断していくことになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《AS》

 提供:フィスコ

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