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【特集】OPECプラス増産でも回復する需要を満たせないのか? カギを握る対イラン制裁解除の行方 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 石油輸出国機構(OPEC)プラスが増産を決めた後も原油相場は底堅く推移している。8月から生産量を毎月日量40万バレルずつ増産する予定だが、供給不足は続くと見られている。コロナショック後の景気回復が本格化する年後半の需要回復見通しは根強い。

●供給見通しはほぼ定まり、需給バランスは需要次第に

 OPECプラスの増産でも、需要回復で経済協力開発機構(OECD)の商業在庫が引き締まっていくならば、原油相場はさらなる高みを目指すだろう。市場参加者はこの想定が正しいかどうか米エネルギー情報局(EIA)が発表する週報で確認していく必要がある。世界最大の石油消費国である米国の原油や石油製品の在庫が減少を続けるならば、OECDの商業在庫が過去5年平均を下回る水準からさらに取り崩される可能性が高い。EIA週報は世界的な石油統計の先行指標であり、今後の値動きを見通すためのカギとなる。

 OPECプラスが減産目標をさらに縮小することで合意したことにより、世界的な供給見通しはほぼ定まっている。サウジアラビアやロシアと並ぶ世界最大級の産油国である米国の生産量が概ね変わらないと仮定すれば、需給バランスを決定づけるのは回復する需要次第である。

●米原油生産量とイラン核合意修復に注目

 ただ、コロナショック後の米国の原油生産量が停滞を続けるのか見通せない。EIA週報では米原油生産量がやや上向く兆候がある。世界が脱炭素社会へ向かっているなかで米国の生産量が過去最高水準を塗り替えることはないとしても、原油高が多少なりとも生産量の拡大を促す。米原油生産量が上向いていけば、原油高の原動力である供給ひっ迫懸念は後退する。

 イラン核合意の修復作業の行方も供給見通しを左右する。イラン大統領選の前後で協議が停滞しているが、来週にライシ新大統領が就任することから、修復に向けた対話がまた始まるだろう。イランは米国による原油制裁を解除し、経済を立て直さなければならない。ロウハニ氏からライシ氏に政権が変わるとはいえ、最高指導者であるハメネイ師はイランの原油供給が早急に正常化することを望んでいるはずであり、ライシ新大統領のもとで協議が無駄に長引くことはなさそうだ。

 米国がイラン産原油を輸入する中国に対する取り締まりを検討していると伝わっており、イランとしては早急に修復協議を再開したいのではないか。中国向けの輸出拡大によってイランの生産量はやや上向いていることから、イランとしては減産を避けたいと思われる。

 需給バランスは需要超過で推移する可能性が高いとみられているものの、米国やイランの増産次第ではこの見通しが変化する。言い方を変えると、さらなる原油高を回避するためには米国の増産や、イラン核合意の修復が必要である。原油高は景気回復の足かせである。バイデン米政権とライシ新政権の交渉の行方に注目したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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