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【特集】ギフト Research Memo(4):直営店とプロデュース店の2つのチャネル形態で飲食事業を展開(2)

ギフト <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

2. 強み
ギフト<9279>は、チェーンストアシステム※をバックボーンに、出店や人材育成、オペレーション、PB商品など、繁盛店を多店舗展開する仕組みを構築してきた。チェーンストアシステムは同社の強みの源泉になっているが、日々進化していくものである。このため、同社も日々仕組みをブラッシュアップしている。

※チェーンストアシステム(チェーンシステム):小売や外食、サービス業など、同一または類似の商品を扱う企業が規模を拡大し多店舗展開する際、本社がセントラルコントロールする経営方式。個店主義を名乗る企業を含め、大半の上場小売・外食企業が採用している。


(1) 出店戦略
同社は、出店から製造、教育までの重要な機能を内製化しており、これが同社のビジネスモデルの特徴の1つとなっている。店舗開発は社長と経験豊かな開発要員が担っている。出店する際は、競合店状況や駅乗降客数、商圏人口、通行量・交通量など候補地の立地特性とブランドの相性、投資額などを独自基準と照合し総合的に判断しており、ヒット率が高い。なお、人口集中エリアとラーメン高消費エリアの直営店、地方エリアのプロデュース店と、全国の出店エリアを分ける一方、プロデュース店を含めて同社で一元的な意思決定を行っている。商品力が強いため1等地でなくても十分に収益を稼ぎ出すことができるが、コロナ禍では超繁華街の好立地物件を安価に確保できるチャンスとなっている。また、首都圏にドミナント※出店してきたため依然ドミナントを広げる余地が大きく、西日本や地方での出店を強化しているが、一方でラーメン天華のM&Aを機に北関東・東北への出店も開始した。

※ドミナント出店:出店エリアでの優越性を確保することを目的に、エリアに集中出店することで認知度を上げたり配送を効率化したりする出店方式。エリア全体での収益力を重視している。


(2) 人材育成
店舗オペレーションに関しては、立地や時間帯によって異なるが、平均4人程度(キッチン2人、フロア2人)で作業している。同社は従業員教育を内製化しており、社内研修体系を確立している。店内の元気ある雰囲気やスムーズなオペレーションを各店で同水準に維持するため、こうした従業員教育は徹底的になされている。また、全社員が月に1回集まって店舗単位で課題解消などについてプレゼンし、成功事例の横展開を図っている。さらに、職人気質で個人主義的なラーメン業界では珍しく、評価制度や表彰制度、インセンティブ制度、キャリアアップなどモチベーション向上のための制度がある。このため人材育成は順調なようだ。また、出店ペースが速くても人材育成に見合った出店となっているため、運営悪化につながるような事態に陥ることはないと考えられる。

(3) PB商品
ラーメン店は通常、麺を製麺メーカーから仕入れるか店内で打ち、生ガラからタレやスープを店内で焚き出す。このため、2店舗目以降は味や品質が安定せず、店が増えてもスケールメリットが得られない。同社がこのような課題を乗り越え、多店舗展開できた1つの理由がPB商品にあると考えられる。ラーメン店にとって最も重要な商品構成要素である麺については、グループ内製造拠点として神奈川県平塚市、神奈川県横浜市、兵庫県丹波篠山市に製麺工場を有し、「四之宮商店」ブランドの麺を製造している。一方、タレやスープについては、品質管理が行き届き供給力のあるメーカーに製造委託している。店内で生ガラから焚き出さないため、1)廃棄ロスが少ない、2)職人の養成を必要としない、3)水道光熱費が安い、4)出店立地の制約がない、5)仕込みの人件費を抑えられる、といったメリットが得られるのである。

さらに、PB商品によって安定供給体制を確保できるうえ、全店舗一括仕入によって低コストも実現し、駅近エリアの地域密着型店舗展開及びロードサイドエリアの一定品質チェーン型展開も支えることができる。このため、直営店もプロデュース店も、どの店舗も値頃で安定した味と品質の商品を、安定して提供し続けることが可能となる。このように職人を必要としない「横浜家系ラーメン」の仕組みを確立したことが、同社の成長を促進させたといえる。このようなPB商品に加え、収益力が強く創業来実質退店ゼロという直営店の運営ノウハウによって、同社を特徴付けるプロデュース店事業のスキームも構築することができたのである。プロデュース店の存在自体も同社の強みとなっており、プロデュース店へのPB商品販売によって、直営店の出店や運営で無理をせずとも一定の成長やスケールメリットが担保されていることになる。このようなラーメン店チェーンには珍しい独特の経営手法は、好きで始めた「生業」に対して、社長自ら科学的なアプローチを続けてきたことが背景にあると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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