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【特集】早稲アカ Research Memo(6):足元の塾生獲得状況は好調で、2022年3月期業績も会社計画から上振れ余地あり

早稲アカ <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

1. 2022年3月期の業績見通し
早稲田アカデミー<4718>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比8.6%増の27,633百万円、営業利益で同14.4%増の1,217百万円、経常利益で同13.1%増の1,219百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同27.2%増の672百万円と増収増益となる見通しだ。

(1) 生徒数の見通しと校舎展開
売上高の前提となる期中平均塾生数は、全体で前期比10.6%増を見込んでいる。このうち、主力の小学部は12.2%増と好調を継続する見通しだ。デュアル形式の指導サービスが好評なほか、2021年春の高い合格実績を受けて、HPからの問い合わせが増加しており、ここ数年ではもっとも好調な滑り出しとなっているようだ。小学3~4年の低学年の塾生数の伸び率が最も高いが、ボリュームゾーンである5~6年生も高い伸びが続く見通しである。また、2期連続で減少していた中学部についても同9.3%増と増加に転じる。春の募集活動シーズンにおいて、1年生の獲得がしっかりできたようだ。1年生が増加すると、次年度以降の売上にもつながってくるため、先行指標と見ることもでき、明るい見通しとなっている。また、高校部も同5.0%増と4期ぶりに増加に転じる見通しとなっている。前述したように校舎の整理が一段落し、既存校での増加を見込んでいる。中学部と同様に、1年生の塾生数が順調に伸びているようで、先行きは明るい。

売上高については、小学部が前期比10.4%増、中学部が同6.6%増、高校部が同5.9%増を見込む。小学部と中学部については、生徒当たり売上単価が低下する前提となっている。これは前期に売上単価が上昇した反動減によるもので、2年前の水準と比較すると高い水準にある。前期はコロナ禍の影響で学校が4?5月まで休校となり、学習の遅れを取り戻すための特別講習会を土日に実施したが、今年は例年どおりのスケジュールに戻すことにしている。一方、高校部については前期に売上単価が低下したが、今期は上昇する見込みとなっている。なお、夏期講習会の申し込みについては順調で、会社計画どおりに推移しているようだ。

新規校舎の展開については4校を予定している。このうち3校(早稲田アカデミー2校、早稲田アカデミー個別進学館1校)は既に決まっていて、学生数の人口が増えている湾岸エリア(品川、豊洲)に7月にオープンする予定となっている。湾岸エリアは難関私立を志望する生徒が多く、同社でも10年来、出校のための物件を探索してきたが、ようやく条件に適う物件が見つかり、出校することとなった。オープン告知後の反響は通常の校舎の4~5倍と好調で、各校とも入塾説明会の回数を増やして対応するほどの盛況ぶりとなっており、初年度から会社計画を上回る生徒数の獲得が見込める状況となっている。また、残り1校については個別進学館を2022年1月以降に開校すべく、物件を探索している段階にある。そのほか、7月に多読英語教室の早稲田アカデミー English ENGINEを1校(新百合ヶ丘校)オープンする予定で、こちらも開校説明会を追加で実施するなど、順調な滑り出しが予想される。

(2) 早稲田アカデミーオンライン校を開校
同社は双方向Web授業で蓄積したノウハウを生かすべく、2021年4月にオンライン校を開校した。当初は難関校の志望校別コースとなり、小学校6年生、中学校3年生からスタートしている。土日開講で近隣に早稲田アカデミーが無く、通塾を希望しても従来はできなかった生徒や、海外からの生徒をターゲットにしている。直近120名程度の塾生となっており、今後、状況によってコースや対象学年を増やしていくことも検討している。同社にとっては顧客層の拡大につながり、中長期的に生徒数の増加につながる取り組みとして注目される。

(3) 営業利益率の変動要因
営業利益率は前期の4.2%から4.4%と0.2ポイントの上昇を見込んでいる。売上原価率は同0.2ポイント上昇するが、販管費率が同0.4ポイント低下する。売上原価ではオンライン英語関連費用や塾生数の増加に伴って原材料費率が同0.2ポイント上昇するほか、新規出校・校舎移転及び増床に伴い地代家賃率が同0.1ポイント上昇する一方、労務費率については既存校舎の生徒数増加によって同0.4ポイント低下する見込みとなっている。

販管費については、広告宣伝費率が湾岸エリアへの新規出校に伴う大型交通広告やWeb広告等のプロモーション強化もあって、同0.2ポイント上昇するものの、増収効果により労務費率が同0.3ポイント低下するほか、その他販管費率も同0.3ポイント低下する見込みとなっている。

(4) 子会社の業績動向
子会社の業績動向について見ると、野田学園については、現役高校生は堅調なものの、コロナ禍で地方から首都圏の医学部を志望する生徒が減少傾向にあることから、既卒生の獲得状況に苦戦しているため、今後、現役高校生の集客に軸足をシフトしていく方針となっている。一方で、集学舎と水戸アカデミーは好調に推移する見通し。集学舎については、2021年春の合格実績が高かったこともあり、生徒募集活動が好調に推移し、直近の塾生数が前年同期比で増加に転じている。また、水戸アカデミーについても今春に県内に県立の中高一貫校が開校となったこともあり、入塾生が増加中で校舎の増床も検討している状況にある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《AS》

 提供:フィスコ

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