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【特集】EG Research Memo(1):2021年9月期第2四半期は期初計画を上回る大幅な増収増益

イーガーディ <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

イー・ガーディアン<6050>は、eコマース(EC)やSNS、ソーシャルゲームの運営者向けに監視や顧客サポートなどを中心に、サイバーセキュリティからデバッグ、運用までをワンストップで提供する総合ネットセキュリティ企業である。1998年にコンテンツプロバイダとして誕生し、インターネット業界の創成期に様々な新事業を手掛けるなかで2005年に掲示板投稿監視事業に一本化し、イー・ガーディアン株式会社に商号変更した。2010年に東証マザーズに上場してからは、人材派遣業、デバッグ事業、ネットセキュリティコンサルティング事業、クラウド型サイバーセキュリティ事業等をM&Aで獲得し、“総合ネットセキュリティ企業”としての基盤を確立した。海外展開においては、E-Guardian Philippines Inc.(2017年設立)が拡大中。最近ではクラウド型セキュリティサービスの(株)グレスアベイルを子会社化(2019年)、(株)サイバー・コミュニケーションズとネット広告関連業務BPOを行う合弁会社設立(2020年)、ソフトウェア型WAF※のNo.1企業である(株)ジェイピー・セキュアを子会社化(2020年)など、新分野を強化している。現在はグループ会社6社1,934名の従業員(うち臨時従業員数1,560名)を抱える企業グループとなっている。2016年9月に東証1部に昇格した。

※WAF:Web Application Firewall


1. 事業概要
売上高の主力はソーシャルサポート業務とゲームサポート業務であり、2業務で全社売上高の7割以上(74.5%)を構成する。同社の強みは、「人」が運用ノウハウやデータを蓄積し、それを活用して独自開発した「AI・システム」により運用を効率化することで、低コストで高品質なサービスを提供するところにある。結果として高い収益性(2021年9月期第2四半期の売上高営業利益率は18.2%)が実現している。

2. 業績動向
2021年9月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比27.3%増の4,760百万円、営業利益が同37.5%増の868百万円、経常利益が同40.3%増の907百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同31.9%増の569百万円と計画を上回り大幅な増収増益となった。増収のドライバーとなったのは動画関連領域の成長である。ソーシャルサポート業務では、前期に引き続いて動画関連の監視業務が拡大し、前年同期比で64.5%増となった。アド・プロセス業務も、動画広告市場が拡大した影響で広告審査及び運用代行の業務受託が増加し、同20.1%増となった。サイバーセキュリティ業務においては、2020年10月に、ソフトウェア型WAFにおいて100万サイト以上の導入実績を持つジェイピー・セキュアを完全子会社化したことなどにより、同50.4%増となった。一方、ゲームサポート業務は同11.3%減となった。ゲーム市場において、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響でリリースが減少したことやヒットタイトルが少なかったことが主な要因である。

2021年9月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比22.6%増の9,621百万円、営業利益が同29.7%増の1,737百万円、経常利益が同30.1%増の1,795百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同11.9%増の1,096百万円と、売上高・各利益ともに期初予想から大幅に上方修正された。期初予想と比較すると、売上高で759百万円増の修正、営業利益で211百万円増の修正となった。同社の事業を取り巻く市場環境は全体として良好だ。ソーシャルサポート業務及びアド・プロセス業務においては動画市場の拡大が引き続き追い風となる。動画広告の市場規模予測では2021年に約31%の市場成長が予測されている。ゲーム業界は底打ち感があり、足元回復傾向にある。また海外のゲーム市場(特にアジア)及び海外ゲーム会社はポテンシャルが大きく、フィリピンの拠点を含め受注を拡大できる余地がある。サイバーセキュリティ分野では、ソフトウェア型WAFのNo.1企業であるジェイピー・セキュアが通年で業績貢献する。全体として、インターネットを不安やストレスなく使いたいというエンドニーズ、顧客企業の働き方改革によるBPOニーズは高まっており、総合ネットセキュリティ企業である同社の活躍の場が着実に増えていると推察される。通期の売上高計画に対する第2四半期進捗率は49.5%、営業利益で50.0%といずれも例年を上回る。同社はこれまで拠点新設後に収益性を上げる傾向にあり、今期は稼働率が上昇し利益が出やすいと考えられる。また、“業務が積み上がる事業特性”を反映して、例年、下期業績が上期を上回る傾向にある。また、テレワークの普及に伴う通勤費・出張費の低下など新しい働き方による販管費の効率化も期待できる。以上のことから、弊社では、大きな波乱がなければ、売上高・各利益ともに上振れる可能性が高いと考えている。

3. 成長戦略
近年、多くの個人情報漏洩や仮想通貨の流出、キャッシュレス決済の不正利用などのネットセキュリティ問題が発生し、サイバー攻撃や不正アクセスへの対応が企業活動における大きなリスクとして注目されている。2020年には、コロナ禍による混乱に乗じたサイバー攻撃も多発し、セキュリティが強固なイメージがある金融機関でもインシデントが発生した。一般社団法人 JPCERT コーディネーションセンター「インシデント報告対応レポート」によると、WEBサイト改ざんの報告件数は、2020年に1,261件、過去3年間で毎年1,000件以上報告されており、継続的にサイバー攻撃・不正アクセスが発生していることが分かる。同社としてはサイバーセキュリティ領域を次代を担う成長分野と捉えており、脆弱性診断などネットセキュリティ(人的サービス)とクラウド型セキュリティ(自動・機械的サービス)の両輪で市場を開拓している。2021年4月には、子会社グレスアベイルの主力製品である次世代クラウド型WAF「GUARDIAX SaaS版」が、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行う「セキュリティ製品の有効性検証の試行」において対象製品として選定され、「製品機能・性能」「運用性」「導入容易性」の3つの観点で検証された結果、「GUARDIAX SaaS版」が持つ強固な防御ルールや直感的なUI/UXなどの有効性が検証・確認された。第三者機関により有効性が検証されたことで信頼度が一層高まることが期待される。

4. 株主還元策
同社は当面、成長への投資を優先するために利益の内部留保を基本とし、想定以上の利益を得た場合に配当を行う方針である。実績としては、好調な業績を背景に2013年9月期から連続で増配を行っている。2020年9月期は配当金が年10円(1円増配)、配当性向は10.3%となった。2021年9月期の配当予想は公表していないが、利益予想が実現されれば増配は確実と考えられる。

■Key Points
・2021年9月期第2四半期は期初計画を上回る大幅な増収増益。動画領域が拡大しソーシャルサポート、アド・プロセスが好調に推移。ジェイピー・セキュアを完全子会社化したサイバーセキュリティ分野も拡大
・2021年9月期通期は売上高20%超、経常利益30%成長予想に上方修正
・毎年1,000件以上のWEBサイト改ざんインシデントが発生。第三者機関(IPA)が子会社グレスアベイルの次世代クラウド型WAFの有効性を検証
・安心・安全なネット世界の実現を通してESGに貢献
・2020年9月期まで8期連続増配中。2021年9月期は配当未定だが、利益予想が実現されれば増配は確実

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《AS》

 提供:フィスコ

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