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【特集】ピアラ Research Memo(3):H&B、食品業界に特化したマーケティング支援で、KPI保証サービスが特徴(2)

ピアラ <日足> 「株探」多機能チャートより

■ピアラ<7044>の会社概要

(2) 事業内容
同社グループは「全てがWINの世界を創る」という経営理念の下、「Smart Marketing for Your Life(あなたの生活をマーケティングでより素敵に便利に)」をビジョンとし、すべての顧客と関連する企業に「ECトランスフォーメーション」※を推進している。顧客がより良い商品に出会い、購買自体を楽しんでもらうことに価値を見出し、顧客満足を最大化することをミッションとしている。市場領域はH&B及び食品市場にフォーカスし、EC及びD2C事業者への新規顧客獲得や顧客育成等のマーケティング支援を軸に事業開発や商品開発、インフラ整備等を行っている。さらに、他業種やグローバルにも展開することで、事業領域の拡大にも取り組んでいる。

※ 「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である「デジタルトランスフォーメーション」を同社グループの事業基盤に当てはめて再定義した造語。ここ数年で、ECを取り巻く環境は劇的に進化しており、スマートフォンの普及による購買行動やコミュニケーションの変化、SNSの活用、アドテクノロジーの進化、大手ショッピングモールのIDが自社ECでも利用可能になるなど、ECを取り巻く環境変化に対応するにはそれ相応のコストと知見が必要になる。


マーケティング支援の対象領域をH&Bや食品業界にフォーカスしているのは、国内の総人口が減少傾向にある一方で、シニア層は今後もしばらく増加傾向が続くことから、アンチエイジングや予防医薬などのH&B商品や機能性表示食品の市場は安定成長が見込まれるためだ。また、これらの市場はデジタルマーケティングとの親和性が高いことも要因となっている。具体的には、同社がこれまで蓄積してきた消費者の「悩みや購買状況」などのビッグデータ(悩み特化型DMP※)をAI技術も活用しながら分析することで、ヒット商品を生み出すための再現性の高いマーケティング施策をプランニングし、運用支援を行っている。このノウハウが競合他社との最大の差別化要因となっており、同社が成長を続けている要因ともなっている。また、更なる成長の可能性を広げるため、デジタルマーケティング支援事業で培ってきたノウハウを生かして、エンタメ領域でも新たなDX事業の取り組みを2020年12月期後半から開始している。

※ DMP(Data Management Platform):オンライン上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム。DMPを活用することで各種情報をセグメント化でき、個々のユーザーに合わせたOne to Oneのマーケティング施策が可能となる。


a) KPI保証サービスについて
主力サービスとなるKPI保証サービスの概略は以下のとおりとなる。H&B及び食品領域の通販企業800社以上のマーケティング支援におけるノウハウや独自のデータ蓄積をもとに、「悩み特化型のDMP」とAI機能を搭載したマーケティングオートメーションツール「RESULT MASTER」をクライアントまたは同社、もしくは両社で利用しながらマーケティング施策を行っている。

ユーザーの悩み別にデータを蓄積している強みは、ソーシャルメディアから収集するデータの中からヒットした商品の条件をリアルタイムに取り込みデータ管理するだけでなく、たとえば“しみ”や“しわ”などユーザーの悩み別にタグ付けすることで、AIによりクライアントの商品1つ1つに最適化したマーケティング施策を導き出すことができる点にある。H&B領域におけるユーザーの「悩み」は、流行に左右されることがないことに加え「悩み」自体は変わらないので、その商品特性と価格帯をベースに過去データを使うことが可能となる。また、どの媒体にどのようなキーワードを使って広告の設定をしていたか、どのようなクリエイティブを使用していたか、送料無料やクーポン等のオファーは付いていたかなどもタグ付けし、AIエンジンによって学習させている。このため、同社が蓄積している過去データから、商品特性や価格を軸に類似する商品をピックアップし、過去の成功パターンを当てはめていくことで、効果の高いマーケティング施策を実現できる仕組みとなっている。たとえば、どの媒体にいつ広告を出すのが最適なのかを、AIと人的作業で設定・見直し作業を行っている。なお広告手法については、8割を既存データから導き出された施策を利用し、2割は新しい手法(V Tuber、TikTok等)を活用している。これは、新たな媒体や手法を用いたほうが効果的な場合もあるためで、効果が確認できれば、似た案件に横展開することでマーケティング効率を向上させている。

KPI保証サービスの成果報酬の考え方については、まず新規顧客(商品購入者)に対して、広告を通じて購入を促し、初回購入につなげることで事前に定めた成果報酬を獲得している。また、リピート通販においては、クライアント(広告主)は初期投資として新規顧客獲得費用がかかるため、初回購入段階ではまだ赤字であり、リピート購入を継続していくことで収益化するビジネスモデルが主流となっている。リピート通販の場合の成果報酬には、新規顧客獲得のほか、商品を追加購入した場合や、1年以上購入がなかった顧客が再度購入した場合、単品で商品を購入していた顧客が定期コースを申し込んだ場合等、様々なパターンがあり、LTV(1年間に購入する金額)を向上させることで、その分に対する成果報酬を獲得している。なお、料金プランは1案件当たり最低50万円からとしている。

クライアント側から見れば、新規顧客1人を獲得する、または顧客のLTVを向上させるための費用が固定化されるため、費用対効果が事前に確定していることになる。マーケティング支援サービスでは、最初にプロモーションの予算が決められ、その枠内で各種広告運用を行うことが一般的であるが、マーケティング施策の効果が出なかった場合は費用負担だけがかかることになる。KPI保証サービスでは、結果(新規顧客獲得数またはLTVの向上)に応じて対価が発生するため、そうしたリスクはなく、クライアントが利用しやすいサービスとなっている。

なお、同社における費用の大半は各種媒体への広告掲載料で占められ、売上原価の外注費として計上される。主要な媒体はGoogle、Yahoo!、LINE、Facebook等が挙げられる。また、売上高が成果報酬型であるのに対して費用は媒体コスト等によって変動するため、プロモーション案件ごとに利益率も変動する(売上総利益率で3~30%レンジ)。同社は事業リスクの軽減を図るため、KPI保証で顧客獲得件数の保証はしていない。また、当初見込んでいたマーケティングの成果が出なかった場合のロスカットルール(一定期間トレーディングの実績がない場合、累積損失額が一定水準を超えた場合等)を社内で設けており、その基準を超えた場合は自動的に運用をストップするようにしている。仮にロスカットルールに抵触した場合でも、当該クライアントとの信頼関係は変わらず、ほかの商品に切り替えて再度プロモーションに取り組むケースが多い。

b) 広告マーケティング
広告マーケティングは、「RESULTシリーズ」を利用しないマーケティング支援サービスとなる。通販企業の会報誌や商品などにチラシやパンフレットを同梱し、特定ユーザーに発送する同封コンシェルジュサービスや、DM広告サービスなどが大半を占める。そのほか、テレマーケティングやリアルイベントによるプロモーション、インフルエンサーを活用したバズマーケティングなどのサービスを提供している。

マーケティング支援サービスの成果に関係なく、一定額の報酬(手数料)を得るビジネスモデルが大半だが、直近ではクライアントの課題や予算をもとに設定したKPIの成果に応じた報酬を請求するKPI保証型サービスへのシフトを進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YM》

 提供:フィスコ

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