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【特集】金は1700ドル割れで下げ一服も、債券利回りの動向を見極め <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は3月8日に昨年6月以来の安値1677.00ドルをつけた後、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた買い戻しなどを受けて下げ一服となった。

 債券利回りの上昇を受けて欧州中央銀行(ECB)理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れを次の四半期に拡大することを決定しており、米FOMCでも何らかの対策が採られる可能性が意識されている。ただ、米FOMCでは低金利の継続見通しが示されたことに加え、米連邦準備理事会(FRB)が最新の報告で今年の経済成長率見通しを上方修正するなど楽観的な見方が示されている。米国債の利回り上昇に対する言及はなく、これまで同様利回り上昇が容認される格好となっている。利回り上昇が続けばドル高に振れ、金の圧迫要因になる。

 一方、欧州ではフランスが新型コロナウイルスの感染拡大を受けてパリ近郊で1ヵ月間、ロックダウン(都市封鎖)を導入することを発表した。ドイツもロックダウンを4月18日まで延長することを発表。景気の先行き懸念から株安に振れたことで長期金利の上昇は一服しており、当面は債券利回りの動向を確認したい。

●欧州の新型コロナウイルスのワクチン接種で混乱

 フランスのロックダウンに加え、ワクチン接種の行方も当面の焦点である。接種後に深刻な血栓が生じる事例が複数報告され、欧州連合(EU)主要国が英アストラゼネカ製のワクチン使用を一時中断。ただ、欧州医薬品庁(EMA)が調査した結果、引き続き利点がリスクを上回るという「明確な」結論に至ったとし、ドイツ、フランス、イタリアなどが同ワクチンの接種再開を決定している。

 ECBはこれまで3月末までのロックダウン解除を見込んでいたが、フランスやドイツの解除は先送りされ、不透明感が残っている。景気回復期待や米国債の利回り上昇を受けて金ETF(上場投信)から投資資金が流出したが、逃避買いが入るようなら、金の下支え要因になるとみられる。

 トルコのエルドアン大統領は20日、金融引き締めに積極的だったアーバル中銀総裁を解任した。同氏の利上げによってトルコリラの下落が一服したが、政権寄りのカブジュオール新総裁が就任したことで今後、通貨危機が起こる可能性が高いとみられている。2020年のトルコの金準備は134.5トン増加したが、通貨危機により需要は減少するとみられている。今後の金融政策の行方とトルコリラの動向も金市場の焦点である。

●ブラックロックは金のインフレヘッジの効果が薄れたとの見方

 世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は23日に1045.36トン(2月末1093.54トン)となった。昨年9月の1278.82トンをピークとして投資資金の流出が続いている。世界最大の資産運用会社ブラックロックは、金が株など他の資産の動きやインフレに対するヘッジとして効果が薄れていると指摘した。また、景気回復のペースが加速した場合、逆風に直面するとの見方を示した。同社は昨年第4四半期に金ETFの一部を売却し、銀ETFに乗り換えている。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは3月16日時点で18万0196枚となり、2019年6月以来の低水準となった前週の17万5163枚から買い越しを拡大。新規買い・買い戻しが入った。フランスやドイツのロックダウンで景気の先行き懸念が出ており、買い戻しが続けば下支えになるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)


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