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【特集】原油高は続くのか?過剰在庫の減少見通しも流動性相場の不安定化が撹乱要因に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 先月末にかけてニューヨーク市場でウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は1バレル=60ドル超まで上昇し、昨年1月以来の高値をつけた。水準的にはコロナショックを克服している。

  原油価格が上昇している背景は需給見通しの改善である。昨年4月に原油価格が大暴落した後、石油需要が回復しているうえ、石油輸出国機構(OPEC)プラスは減産で需給を需要超過気味に誘導し、世界的な過剰在庫の取り崩しを図っている。世界の石油在庫の指標である経済協力開発機構(OECD)加盟国の在庫は昨年末にかけて減少しており、この傾向は今年も続いている可能性が高い。在庫減=原油高の図式がほぼ当てはまる。

 OPECプラスは今週の共同閣僚監視委員会(JMMC)で増産を勧告し、需給バランスを調整する見通しである。需要回復に合わせて供給を増やすが、需要超過気味の舵取りに変わりはなさそうだ。OPECプラス全体で増産するのか、日量100万バレルの自主減産を行っているサウジアラビアが生産量を調節するのかわからないが、相場を圧迫しない規模で増産が合意に至るだろう。

●流動性相場の投機資金が原油市場も標的に

 新型コロナウイルスの流行を乗り切るまで各国中銀が金融緩和を継続する見通しであることも原油相場を押し上げてきた。超低金利政策や量的緩和(QE)を背景とした流動性相場のなかで余剰資金が行き場を探しており、コモディティ市場もその標的となっている。原油相場のファンダメンタルズがはっきりと改善していることから、コモディティ市場のなかでも投機的な資金が流入しやすい。

 ただ、米国の利回りが上昇していることが金余り相場の逆風となっており、原油高に歯止めをかけている。インフレ懸念や米景気見通しの改善が利回り上昇の背景であり、米連邦準備制度理事会(FRB)は自然な動きであるとして気にかけていない。むしろ歓迎している。新型コロナウイルスが根強く流行し、外食やエンターテイメント産業などでは厳しい状況が続いているものの、サービスからモノへ需要の中心が移行しているなかで米経済は堅調である。救世主のワクチンが期待通りの効果を発揮するならば、コロナ禍で失われた雇用は年後半の集団免疫獲得後に回復を始める可能性が高い。

●ワクチン過信で慎重さを欠けば混乱の種にも

 米金融当局者の楽観的で強気な景気認識の前提には、ワクチンで新型コロナウイルスの流行が下火になるとの見通しがあるが、米ファイザーや米モデルナなど、米国で投与されているワクチンの長期的な効果は不明である。新型肺炎のワクチンはいずれも短期間で開発されており、効果が持続する期間についてはこれから見定めていかなければならないが、米金融当局者はワクチンの効果を確信しているようにみえる。ワクチンの接種率拡大とともに、コロナ禍が本当に終わるのかどうかはこれから見届けなければならないにも関わらず、慎重さを欠いた発言は不用意に米利回りを押し上げている印象だ。

 ワクチンのおかげでコロナ禍の出口が見え始めていることから、景気回復期待が強まるのは理解できる。ただ、米金融当局者の発言は楽観的すぎるのではないか。巣ごもりクリスマスが繰り返されないとは限らない。ワクチンに対する期待と不確かさは依然として共存しており、過信は原油市場を含めたリスク資産市場に混乱をもたらすだろう。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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