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【特集】コロナワクチンは原油を一段高に導くか?イスラエルの“実験“の成否が焦点に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 2021年の原油市場の流れを何が決めるのか。イラン核合意の行方などを含めてバイデン米政権の動きから目が離せないものの、世界が新型コロナウイルスの流行を克服し、経済活動を正常化できるかどうかに尽きると思われる。米国で新たな景気対策法案が成立しようとも、ワクチンが効果を発揮し、パンデミックが収束しないことには見通しは暗いままである。

 世界中の原油価格の指標であるウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)やブレント原油は1バレル=50ドルを上回る水準で推移している。石油需要の回復を織り込んだ価格であり、ワクチンが期待通りに流行を抑制できなければ現在の価格帯は正当化されないだろう。世界経済の行方や石油需要を見通すにあたって、ワクチンが引き続きカギを握っており、その他の要因にあまり目を向ける必要はなさそうだ。

 今月からサウジアラビアが日量100万バレルの自主減産を開始するものの、需要見通しが悪化すれば元の木阿弥である。今年もトレンドを左右する主役は需要見通しであり、供給側の要因ではないと思われる。

●ワクチン接種の進むイスラエルは沈静化に向かうのか

 ブルームバーグの集計によると、ワクチン接種が最も進んでいるのはイスラエルである。本稿の執筆時点で接種率は55.10%で、1回投与が34.9%、2回投与が20.2%となっている。イスラエルでは米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンの投与を昨年末から行っており、このままの接種ペースならば数ヵ月以内に集団免疫を獲得する見通しである。短期間で開発されたワクチンの副反応が警戒されるなかで、イスラエルは世界中から実験室呼ばわりされているものの、ワクチンのはっきりとした効果が統計に現れるのか非常に注目されている。

 イスラエルの1日あたりの感染者数は、先月に一週間平均で8400人程度まで増加し、過去最多を更新した後にピークアウトする傾向にあるが、感染者数の伸びは依然として数千人規模であり、ワクチンの効果はまだ認識できない。年初で感染拡大がピークアウトする傾向にあるのは米国や英国も同じである。ただ、イスラエルの感染者数の伸びが一段と鈍化していくなら、米ファイザーのワクチンに対する期待感は確実に上向くだろう。イスラエルの実験結果は世界経済の見通しを変える。

●春節の大移動で再流行リスクも

 イスラエル政府による率先した試みの一方、春節入りを控えて中国で新型コロナウイルスの再流行が警戒されている。中国でも日々感染者が見つかっているものの、主要国と比較して流行は軽微な水準にとどまっており、今のところ封じ込めに成功している。ただ、春節の大移動によって中国全土で流行が強まると手がつけられなくなる可能性が高い。中国の石油需要は世界第2位であり、再流行による都市封鎖で需要見通しは確実に悪化する。

 バイデン政権に目立った動きがないとすれば、今月の焦点は2つである。集団免疫の獲得を視野にいれているイスラエルで流行は沈静化に向かうのか、中国の再流行リスクは現実となるのか。市場参加者がどちらのテーマに関心を示すのか見定めていかなければならない。ただ、今週の値動きを見る限り警戒感は限定的で、コロナの克服期待の方が強いようだ。ニューヨーク市場でWTI先物は昨年1月以来の高値を更新している。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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