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【特集】ダイナムジャパンHD Research Memo(4):2021年3月期中間期業績は2ケタ減収減益もコスト削減で黒字確保


■2021年3月期中間期の業績状況

1. 2021年3月期中間期の連結業績概要
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の2021年3月期中間期の連結業績は、営業収入で前年同期比37.9%減の45,992百万円、営業利益で同80.2%減の2,781百万円、税引前中間利益で同88.8%減の1,477百万円、親会社の所有者に帰属する中間利益で同92.0%減の698百万円と大幅減収減益となった。

コロナ禍による政府の緊急事態宣言発出に伴い、パチンコ事業において2020年4月から5月にかけて約97%の店舗が休業を余儀なくされた。同年6月以降に営業が再開したものの、コロナ禍への警戒感から客足が戻らず、同事業の収益が大きく落ち込んだ。ただ、機械費の購入抑制や人件費の絞り込み、その他経費の削減など徹底したコスト削減の取り組み、また、営業の自粛要請に対応し一時休業したことに伴い発生した自治体等からの雇用調整助成金等3,225百万円をその他収入として計上したことで、目標としていた営業利益の黒字は確保できた。

(1) パチンコ事業
パチンコ事業における2020年4月以降の動きを見ると、4月16日の政府の緊急事態宣言を受けた各自治体からの営業自粛要請により、グループ店舗448店舗中436店舗で一時休業を余儀なくされた。5月上旬以降、緊急事態宣言が解除された地域から順次、感染対策を実施した上で営業を再開し、6月1日に全店で営業を再開した。4月から5月にかけての営業収入は休業等の影響により前年同月比で3割台の水準まで急減した。6月以降も営業を再開したとはいえ、感染懸念から顧客の戻りは弱く営業収入前年同月比で7~8割の水準で推移している。

こうした厳しい環境のなかで、グロスの売上高に相当する貸玉収入は前年同期比42.1%減の219,663百万円に落ち込んだ。内訳は、低貸玉店舗が同40.1%減の100,405百万円、高貸玉店舗が同43.6%減の119,258百万円となっている。一方、原価に相当する景品出庫額は前年同期比42.9%減の174,408百万円となり、貸玉収入と景品出庫額の差であるパチンコ事業収入は同38.8%減の45,255百万円となった。

貸玉収入に対する営業収入の割合が粗利益率となるが、2021年3月期中間期の粗利益率は前年同期比1.1ポイント上昇の20.6%となった。内訳を見ると、低貸玉店舗は0.9ポイント上昇の23.4%、高貸玉店舗が同1.0ポイント上昇の18.2%とそれぞれ上昇している。粗利益率は顧客への還元率(貸玉収入に対する景品出庫額の割合)の逆数であるため、これが高すぎると客離れを招く一因となる可能性がある。過去の推移を見るとおおむね18%台~19%台で推移していたことから、当中間期は若干還元率が低かったことになる。

また、同社は収益悪化を食い止めるべく、事業費用の徹底的な絞り込みを実施した。具体的には、機械費で前年同期比7,481百万円削減したほか、人件費で同2,898百万円、広告費や光熱費などその他経費で同4,616百万円削減した。減少率で見ると、機械費で同58%減、人件費で同19%減となり、その他経費のうち変動費部分で同34%減、固定費部分で同12%減となっている。パチンコ事業費用合計では同24.1%減の46,396百万円となり営業収入を金額で上回ったものの、雇用調整助成金等の計上により営業利益で黒字を確保した格好となっている。こうした徹底したコスト削減を実施したことで、2020年4月、5月は赤字であったものの、同年6月以降は営業利益で黒字に転じており、業界全体が厳しい経営状況を強いられるなかで、迅速な事業運営により黒字を確保できたことは評価される。

中間期末のグループ店舗数は前期末比3店舗減の445店舗となった。新規出店を1店舗(建替店舗)実施した一方で、4店舗を閉店している。

なお、グループの中核を成す(株)ダイナムの業績について見ると、営業収入は前年同期比38.5%減の42,456百万円、営業利益は2,401百万円の損失計上(前年同期は10,788百万円の利益)となっている。連結ベースではIFRS基準(国際会計基準)で開示しているのに対して、ダイナムの決算は日本の会計基準を適用しており、雇用調整助成金等約27億円を営業外収入として計上しているためだ。このため、経常利益ベースでは同92.5%減の854百万円と黒字となっている。

KPI(重要経営評価指標)の1つとなる稼働率※を見ると、パチンコ機が前年同期比14.9ポイント低下の27.3%、パチスロ機が同11.6ポイント低下の27.6%といずれもコロナ禍の影響によって大きく低下したものの、競合店との比較では若干上回っている。また、パチンコ機ではPB機の設置台数比率が前年同期比2.8ポイント上昇の11.3%と初めて10%を超えた。コスト削減の一環として新機種購入についても低コストであるPB機の比率を高めたことがうかがえる。

※ピーク時(15時前後)における実客数÷設置台数。


(2) 航空機リース事業
2020年3月期より開始した航空機リース事業では、流動性が高く、需要も安定して見込まれるナローボディ機に絞って事業展開している。コロナ禍の影響で世界各国の航空機業界が大打撃を受けるなど逆風が続いていることから、同社は新たな航空機の購入には慎重な姿勢をとっている。現在は2020年3月期に購入した3機のリース管理や航空会社の信用分析、新規案件の情報収集などを行っている。

2021年3月期中間期における事業収入は前年同期から655百万円増加の737百万円となっている。前年同期よりも保有する航空機数が増加したことが増収要因で、当中間期においてはリース料の繰延等は発生せず、コロナ禍の影響は受けなかった。

一方、事業費用は前年同期比358百万円増加の444百万円となった。保有航空機数の増加と組織強化に伴う人件費の増加が要因となっている。航空機購入のための金融費用等を含めた営業利益は前年同期比45百万円増加の120百万円となった。フリートバリューは3機で155.9億円となっており、年換算表面利回りを計算すると8.8%となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

 提供:フィスコ

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