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【特集】石油市場を待つのは試練か? 米大統領選の混戦は金融市場を不安定化へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米大統領選まで約1ヵ月である。4年に一度のビッグイベントであり、新型コロナウイルスが依然として流行していることもあって、経験したことのない混乱が伴う可能性が高い。

 “最もリスクが低い”かは判断できないが、トランプ米大統領の続投が経済にとって“最も無難な”シナリオであるように見える。米国と中国の対立がさらに強まっていくのは確実であり、「Black Lives Matter」運動に代表されるような人種的な分断、移民問題など社会的な摩擦が広がっているにしても、4年間の経済政策を支持する声は多い。

●バイデン氏勝利なら石油産業は方向転換を迫られる

 コロナショック後の景気回復を優先するなら、トランプ米大統領が続投することが経済にとっては親和的といえる。クリーン・エネルギー政策を標榜しているバイデン氏にトランプ米大統領が勝利することは、石油の需要回復見通しを後押しするだろう。ただ、新型コロナウイルスの大流行もあって、現職の大統領の劣勢は明らかである。鵜呑みにはできないが、世論調査は政権交代を示唆している。

 環境政策を重視する民主党にとって、石油に代表される化石燃料は温暖化ガスである二酸化炭素を撒き散らす悪者である。バイデン候補のクリーン・エネルギー政策によって石油が爪弾きにされることは確実であり、世界最大の石油消費国かつ産油国の米国にとって新大統領の誕生は転換点となりうる。シェール革命の延長線上で、エネルギーの自給自足という安全保障上の夢が叶う可能性があるものの、シェールオイル産業にとって必要不可欠なフラッキング(水圧破砕法)が規制されるようなことになれば、米国の石油産業は方向転換を迫られるだろう。

 先週、カリフォルニア州のニューサム知事が、2035年までに州内で販売される自動車と小型トラックについて、排気ガスを出さないゼロ・エミッション車にするよう命じる行政令に署名した。化石燃料の需要見通しを大きく下振れさせる可能性のある画期的な判断である。全米で最大規模のGDPを誇るカリフォルニア州で、ガソリン車の販売が今回の行政令によって先細りとなり、石油市場の変化の先駆けとなる可能性は否定できない。バイデン新大統領の誕生となれば、環境意識の高い州がカリフォルニア州に続くことは十分にあり得る。

●“次の大統領が決まらない”リスクが最大のリスク

 今回の米大統領選では郵便投票によるリスクも取り沙汰されている。トランプ米大統領が指摘するような不正が発生するのか不明だが、米国の郵便公社の脆弱さは明らかである。かつてない規模の郵便投票が発生した場合、短期間の処理はほぼ不可能であると指摘されている。処理能力の不足は投票結果の疑義につながり、僅差の票割れが発生すると米大統領選の結果が判明しないというリスクが発生する。勝者がはっきりとすれば問題はないが、接戦となった場合は混乱の火種となることは間違いない。次の大統領が決まらないリスクが今回の大統領選の最大のリスクである。

 煮ても焼いても食えない選挙となれば、金融市場で不透明感は急激に高まる。他のリスク資産とともに原油価格は奈落の底に叩き落されるのではないか。原油価格のマイナス化は二度とないと思いたいが、コロナショックの再来はあり得る。今年の石油市場は驚きに満ちている。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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