【特集】秋のIPO最前線を探る、10月も需給良好で株高人気継続へ <株探トップ特集>
急騰銘柄が相次ぐIPOは、いまや個人投資家にとって最もホットな市場だ。10月はキオクシアの上場延期で目玉案件が不在だが、好需給のなか物色人気は続くとみる声が多い。
―キオクシアの上場延期は目先的な追い風、出口案件に警戒も―
東京市場では、 IPO銘柄への人気が続いている。9月IPOは、この日まで8銘柄が登場したが、東証1部へ上場し投資ファンドの出口案件として警戒された雪国まいたけ <1375> を除き、気配値を含めれば全ての銘柄の初値は公開価格を上回った。なかには4倍高となった銘柄もある。上場後のセカンダリー市場での値動きも堅調で、いまやIPOは個人投資家にとって最もホットな市場だ。半導体大手、キオクシアホールディングスの上場延期は、目先の需給面からはIPO市場にむしろプラスとの見方もあり、10月IPOへの期待が膨らんでいる。
●ヘッドウォータースは買い人気化、今週末から10月IPOスタート
この日、東証マザーズに新規上場したヘッドウォータース <4011> [東証M]は買い殺到で寄り付かず。同社は、人工知能(AI)ソリューション事業を手掛けており、資金吸収額も2億円強と小さい。需給面も良好なことから、24日に同時上場し初値が公開価格に対し4倍高に急騰したトヨクモ <4058> [東証M]やまぐまぐ <4059> [JQ]と同様に人気化への期待が強い。あすは金融機関向けなどのシステム開発を手掛けるアクシス <4012> [東証M]がマザーズへ上場する予定。続いて、今週末10月2日には富裕層向け投資用不動産を手掛けるタスキ <2987> [東証M]がマザーズに上場し、10月IPOが始まる。10月IPOは29日時点で8社が予定されている。
●キオクシアにはIPO再挑戦の観測がくすぶる
そんななか、来月6日に東証に上場を予定していたキオクシアが28日に上場延期を発表したことは、驚きをもって受け止められた。上場時の時価総額が1兆7000億円近辺ともみられていた超大型IPOの上場延期は近年、あまり例がないが、米商務省による中国ファーウェイへの半導体輸出規制の影響が大きかったようだ。
あるファンドマネジャーは「ファーウェイ向けの減収による業績の影響が読めない状況下では、上場延期の決定は仕方がなかったのではないか」とみている。ただ、同時に「ファーウェイ問題の見通しがつく状況になれば、キオクシアは再びIPOを実施するのではないか。年内は難しいだろうが、早ければ来年春にも再び株式上場を試みるような展開はあり得ると思う」と予想している。
キオクシアのIPOが見送られたことで10月IPOの目玉は、不在となった格好だ。ただ、キオクシア上場に向けた資金捻出のための株式売却の懸念がなくなったことは「当面のIPO市場にはプラス要因に働く」(アナリスト)との見方が浮上している。28日にはまぐまぐやSTIフードホールディングス <2932> [東証2]がストップ高となり、I-ne <4933> [東証M]も値を上げたが、とりわけ直近IPO銘柄には需給面の追い風が見込める。
●やや地味な銘柄も目立つ、子育て支援関連銘柄などに期待も
そんななか、10月のIPOが始まる。10月は人気のIT系は多くなく業態的にはやや地味な銘柄も目立つ。投資ファンドなどの売り出しが大きいことが警戒されている銘柄もある。とはいえ、全体的には「これまでの流れを引き継ぎ堅調な値動きが続きそうだ」(アナリスト)とみられている。
2日にマザーズへ新規上場を予定するタスキは、IoTレジデンスなど投資用不動産を手掛ける。資金吸収額は2億円強、時価総額も30億円台と小型だ。5日に東証1部へ直接上場を予定するダイレクトマーケティングミックス <7354> はダイレクトマーケティングを通じた営業ソリューションサービスを提供する。投資組合などによる売り出しが中心で、資金吸収額は200億円強の規模となっている。
13日にマザーズに新規上場する日通システム <4013> [東証M]は、システム開発会社で統合基幹業務システム(ERP)などを展開している。27日にマザーズに上場するカラダノート <4014> [東証M]は妊娠育児ママ層向けのアプリ提供などを行っている。翌28日にマザーズに上場するさくらさくプラス <7097> [東証M]は認可保育所を中心とする保育所などの運営を行っている。両銘柄は、ともに少子化対策の子育て支援関連銘柄として評価されそうだ。
●グルメサイト「Retty」には強弱感も
16日にジャスダックに上場するアースインフィニティ <7692> [JQ]は小売り電気事業や電子機器の製造販売などを手掛ける。28日にマザーズに上場するプレミアアンチエイジング <4934> [東証M]は基礎化粧品の製造・販売を行っている。
市場の評価が分かれそうなのが、30日にマザーズに上場するRetty <7356> [東証M]だ。有力グルメサイトで今後の成長が期待されるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で20年9月期は赤字予想。ベンチャーキャピタルなどの売り出しも目立つ。今後、発行価格がいくらで決まるかなどが注目されている。
■9~10月のIPO予定銘柄■
上場日 コード・市場 銘柄 主幹事
9月30日 4012・東マ アクシス SMBC日興
10月2日 2987・東マ タスキ SBI
5日 7354・東1 ダイレクトマーケティングミックス みずほ
13日 4013・東マ 日通システム 野村
16日 7692・JQ アースインフィニティ みずほ
27日 4014・東マ カラダノート みずほ
28日 7097・東マ さくらさくプラス SMBC日興
28日 4934・東マ プレミアアンチエイジング 野村
30日 7356・東マ Retty 大和
(注)9月29日発表分まで。
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