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【特集】きちりHD Research Memo(2):ダイニング業態の「KICHIRI」等を中心とした飲食事業とPFS事業を展開


■事業概要

1. 事業内容
きちりホールディングス<3082>は自社開発した業態による飲食事業を主に直営で展開しているほか、自社店舗の運営で培ったノウハウを生かした飲食事業のコンサルティングやITサービスを提供するPFS事業を行っている(売上構成比では飲食事業が9割弱)。また、2019年1月に機動的な事業運営を行う体制を構築するために、持株会社体制に移行しており、2019年6月期より連結業績での開示を開始した。2020年6月末時点の連結対象子会社は、既存事業を承継した(株)KICHIRIのほか、Web面接プラットフォーム「Apply Now」の開発・提供を行うオープンクラウド、インドネシアで同社ブランドである「いしがまやハンバーグ」や「CHAVATY」のFC展開を行うPT Kichiri Rizki Abadi(出資比率51%)の3社となっている。

(1) 飲食事業
飲食事業の主な業態は、首都圏や関西圏で展開するダイニング業態の「KICHIRI」と、ショッピングモール・駅ビル内で展開するハンバーグ専門店「いしがまやハンバーグ」などがある。PFS事業で提携した顧客企業のブランドを活用した店舗(8店舗)も含めて、2020年6月末時点の店舗数は102店舗となっている。特に、ここ数年は首都圏での新規出店を積極化している。

主力業態である「KICHIRI」は女性客を主なターゲットに、高品質な料理とおしゃれ感を演出した店舗づくり、「おもてなし」の接客を重視した店舗運営が特徴で、2002年に第1号店を神戸に出店し、関西圏で高い支持を獲得したあと、2006年から首都圏に進出を果たしている。出店エリアの条件としては、電車の乗降客数で1日2万人を超える主要駅で建物の空中階としている。平均客単価で3,000円台と比較的低価格帯で若者客をターゲットとした「Casual Dining KICHIRI」と、平均客単価5,000円前後で企業の接待ニーズにも対応可能な「新日本様式KICHIRI」のほか、バル形式の「smile KICHIRI」など複数業態で展開しており、2020年6月末時点の店舗数は合計で40店舗(うち、関西エリア23店舗、関東エリア17店舗)となっている。

また、2010年に首都圏で初出店した「いしがまやハンバーグ」は、オーストラリア産の黒毛和牛の血統を引き継いだ黒牛100%使用した人気のハンバーグ専門店で、収益性についても「KICHIRI」と同水準以上の高収益業態となっている。平均客単価は1,600円とやや高めではあるものの集客力が高いことから「ららぽーと」等の大型ショッピングモールを中心に出店の引き合いが強く、2018年5月には西日本で大型複合商業施設「ゆめタウン」等を展開する小売流通業界大手イズミ<8273>のフード事業を担うイズミ・フード・サービス(株)とFC契約を締結した。店舗数は2020年6月末時点で直営21店舗、FC3店舗となっている(そのほか、インドネシアにFC1店舗)。

2018年4月には海外で普及が進んでいるグロッサリー業態のイタリアンフードマーケット「Merca(メルカ)」を大阪の商業施設「LUCUA osaka」内に出店したほか、同年7月には東京・表参道にミルクティー専門店「CHAVATY(チャバティ)」を出店するなど、新たな業態開発にも積極的に取り組んでいるのが特徴だ。「Merca」は、1フロア内にイタリアの各種食材の販売店と複数業態の飲食店が混在し、子どもから大人まで幅広い年齢層の顧客がオールタイムで楽しめるフードテーマパークのようになっており、オープン開始以降、人気を博している。食材の販売店舗に関しては協業先である(株)阪急オアシスが運営している。

(2) PFS事業
PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型とクラウドサービス展開型の2つの事業モデルで展開している。

a) ブランド・コンテンツ活用型
ブランド・コンテンツ活用型とは、健康分野やエンターテイメント、第1次産業分野などで強いブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、外食ビジネスを展開することによって、当該ブランド価値を高めていく新たな販促手法の提案サービスとなる。提携先企業にとっては店舗運営を同社に任せることで、店舗運営リスクを抱えることなく、ブランド力の向上が期待できることになる。店舗運営に関しては、既存のKICHIRIプラットフォームを活用できるため、業務管理コストや食材の仕入コストなどを独力で店舗運営するよりも低く抑えられるほか、ブランド価値訴求型の店舗であるため価格も維持しやすく、一定の収益が見込みやすいビジネスモデルであることも特徴の1つとなっている。

契約内容は一律ではないが、1店舗目については店舗運営コストなどの費用を提携先が負担するケースが多い(同社の売上高としてはプラットフォームの使用料を計上)。2店舗目以降は、同社が直営店舗として展開していくことも可能となる。提携先企業にとっては店舗を増やして収益を拡大することが目的ではなく、あくまでもブランド価値の向上が目的となっているためだ。なお、売上高に関しては、同社が直営で運営する場合は飲食事業に含まれる。

ブランド・コンテンツ活用型の例としては、福岡県の農事組合法人である福栄組合が生産する「はかた地どり」のブランド価値向上を狙った地どり専門店「福栄組合」(4店舗)や、イタリアの有名ファッションブランドのオロビアンコと共同プロデュースしたイタリアンレストラン「Orobianco」(2店舗)などがある。また、2015年1月には長野県と「食を通じた健康長寿の推進」に関する戦略的連携協定を締結し、JR長野駅ビル内に「長野県長寿食堂」を出店するなど、地方自治体との提携案件も手掛けている。

b) クラウドサービス展開型
クラウドサービス展開型とは、同社が既に自社で構築しているバックオフィス機能(会計処理、給与管理等)やバックヤード機能(調達・加工・物流システム)、バックアップ企業(銀行や取引企業等)などのプラットフォームを、安価な料金で同業他社に提供するサービスで、利用料金は店舗数や利用サービスによって異なる。顧客対象は、食材などで比較的共通部分が多い付加価値提案型の外食企業となり、規模的には売上高で10億円以上、店舗数15店舗以上であれば同サービスの導入メリットが得られやすい。顧客企業は同サービスを利用することによって、食材の共同調達による仕入コスト低減や店舗の維持運営にかかる業務システムなどのコストが、自前で構築するよりも低コストで実現できることになる。同事業に関しては自社で利用するプラットフォームを活用するため追加コストがほとんど掛からず、収益性及び安定性の高いストック型のビジネスモデルとなる。2020年6月末時点の契約店舗数は約600店舗となっている。

また、オープンクラウドで展開している「Apply Now」はスマートフォンやPCなどの動画録画機能を使うことによって、採用時における面接にかかる工程(面接に自治の設定や面接時間等)の省略を実現したサービスで、同サービスを利用することで、採用にかかる業務効率が大幅に向上することになる。このため、飲食業界だけでなく継続的に採用募集を行っている人材サービス会社などで導入が進んでいるほか、コロナ禍において非接触での採用活動を余儀なくされている企業や地方自治体などでの導入も広がり、契約件数は2020年6月末時点で約2千件に拡大している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《KS》

 提供:フィスコ

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