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【特集】スカラ Research Memo(7):主力のSaaS/ASP事業は中期経営計画実現に向けた取り組みを推進(2)

スカラ <日足> 「株探」多機能チャートより

■スカラ<4845>の業績動向

(4) カスタマーサポート事業
レオコネクトによるカスタマーサポート事業の売上収益は前期比17.6%減の2,261百万円、営業利益は同27.2%増の86百万円となった。光通信グループ各社インバウンドコンタクトセンター業務を始めとするノウハウを生かして、電力小売事業者向けのコンタクトセンター運営、人材採用、コスト削減などの総合コンサルティング業務を新たに受注したほか、スカラコミュニケーションズのサービス利用顧客のカスタマーサポート業務の受注を獲得するなど顧客数が順調に増加した。売上収益が減少したのは収益性向上を図るため、低採算案件から高採算案件への切り替えを進めたことによる。同社では「i-ask」やIVR等のサービスを導入することによって入電件数の削減と生産性向上を実現しており、その結果、営業利益率は前期の2.1%から2.7%に上昇している。

今後は新たに開発した基幹システム「C7」をレオコネクトの顧客であるコールセンター事業者に順次導入していくことで、更なる業務効率の向上並びに生産性向上を目指していく。コールセンター事業者は、「C7」を導入することで業務処理能力が拡大し、新規案件の受注が可能となる。同社はこうした事業者に対して、光通信グループ以外の新規顧客を紹介していく格好となる。なお、「i-ask」やIVR、「C7」などの利用料については、SaaS/ASP事業とカスタマーサポート事業で案分して売上収益に計上している。

(5) その他
その他の売上収益は前期比19.1%増の1,890百万円、営業損失は59百万円(前期は138百万円の利益)となった。事業別の内訳を見ると、スカラプレイスによるEC事業の売上収益は巣ごもり需要も追い風となって、対戦型ゲームのトレーディングカードの売買が活況に推移したことにより、前期比14.9%増の986百万円となり、営業利益も開発費増を増収効果で吸収して同13.9%増の131百万円と好調に推移した。今後はECサイト「カードショップ-遊々亭-」のスマートフォンアプリ版のリリースと、AIによる自動買付価格設定機能を2020年内に実装する予定にしている。ネイティブアプリの導入によって、スマートフォンでの売買がより簡単にできるようになること、AI機能の実装で今まで人が判断していた買付価格の設定を自動化できることなどから、流通額の一段の拡大と生産性向上が期待される。

ソフトブレーングループによるシステム開発事業の売上収益は、既存顧客からのプロジェクトが堅調だったことから前期比7.2%増の459百万円となった一方、出版事業については緊急事態宣言の影響により顧客が活動を自粛したことなどにより、同36.3%減の191百万円となった。利益面ではいずれも減益になったものと見られる。

また、2020年4月より新たに加わったグリットグループホールディングスの営業収益は216百万円、営業損失は127百万円となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で顧客企業の人材採用活動が停滞し、業績は当初の想定を下回る厳しい結果となったが、7月以降は採用活動も急速に回復してきているようだ。そのほか、CSVイノベーション(経営・事業コンサルティング)やCSVインキュベーション、CSVインベストメント事業などを展開するスカラパートナーズは、売上収益で1百万円、営業損失で44百万円となった。CSVインベストメント事業の実績として、2019年11月にVALT JAPAN(株)、2020年2月にxIDに出資を行っている。VALT JAPANは2014年設立のスタートアップ企業で、障がい者に特化した各種の就職支援事業を行っている。また、就労困難者の「仕事と体調管理」の両立支援システム「NEXT HERO」の実証実験を鎌倉市と連携して進めており、同社グループでは今後、「NEXT HERO」のシステム開発支援を行っていく。また、xIDは2012年設立のベンチャー企業でブロックチェーン技術を用いたデジタル身分証アプリ「xID」を開発、普及拡大の取り組みを推進している。2020年8月には石川県加賀市で全国に先駆け、電子申請サービスと「xID」との連携を実現した。今後、同社グループが抱える顧客企業や自治体など幅広いネットワークで導入を目指していく考えで、既に金融機関からは口座開設時などの身分証明用として「xID」の引き合いが出始めている。

そのほか、2020年3月には投資ファンドとしてSCSV1号投資事業有限責任組合を組成した(運用額700百万円)。同ファンドの「価値共創エンゲージメントファンド」では、今後、投資先企業に対して価値創造経営支援サービスやDX支援、経営資源獲得という3つの支援を行うことで、企業価値の向上につなげていく戦略となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YM》

 提供:フィスコ

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