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【特集】悪夢さめやらぬ原油市場にもマネーは向かうか? コロナ禍の陰で膨らむ過剰流動性 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米国で過剰在庫の取り崩しが始まっているが、相場に目立った動きはない。世界的に新型コロナウイルスの流行が続いており、足元の在庫減少が強気な手がかりとして作用せず、相場を押し上げることができない。強気な手がかりがあまり意味を持たないのがコロナ相場の特徴である。都市封鎖により石油需要がまた一瞬にして消え去ったら、過剰在庫の減少傾向は買い材料ではなくなる。石油需要の蒸発や、ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物のマイナス価格はトラウマである。

 ただ、コロナ禍のなかにあるからこそ、流動性相場の雰囲気は鮮明である。米株式市場でナスダック総合指数やS&P500は過去最高値を更新している。コロナショックによる需要蒸発を契機に主要国の中銀は足並みを揃えて前例のない規模の金融緩和を実行しており、余剰な資金の流入が株式市場を押し上げている。新型肺炎の流行が再燃し、消費や設備投資が再び蒸発するリスクはあるものの、株式市場ではあまり意識されていない。

●流動性相場は始まったばかり

 株式も原油もリスク資産である。行き場を求める資金が右往左往する流動性相場のなかで、上昇する株式市場の姿は自然であり、足踏みを続ける原油市場は不自然にみえる。ただ、流動性相場は始まったばかりである。ジャンク債など低格付の債券の値動きもまだおとなしく、資金が積極的に投資先を探しているようには見えない。今のところは株式市場の値動きで満足しているようだ。

 先週、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はインフレ率の上振れを許容する方針を示した。物価よりも崩壊した雇用市場の立て直しが最優先の課題であり、前例のない金融緩和を長期間に渡って継続する構えである。どの程度のインフレ率のオーバーシュートが許容されるのか不明だが、主要国の中銀は少なくとも数年間に渡って金融市場を刺激し続けるだろう。FRBの方針に同調する中銀が出てくる可能性が高いことも流動性相場を強化するのではないか。

●不透明感を物ともしない流れがいずれ形成される

 北半球の冬場にかけて新型コロナウイルスの再流行が警戒されること、香港市民やウイグル人の人権問題を巡って主要国と中国が対立を深める傾向にあること、11月の米大統領選など、金融市場はリスクにまみれている。リスク資産が一方的に押し上げられるとは思えない。ただ、主要国の中銀による協調的な金融緩和は過剰な流動性の泉である。株式市場の値幅だけでは満足できなくなった資金はいずれ他の資産に興味を向けるだろう。

 コロナショック前の石油需要を回復できる見通しは今のところないが、ファンダメンタルズの多少の不透明感を物ともしない流れがいずれ形成されるのではないか。コモディティでも株式でもハイイールド債でも構わない。宛もなく動き回る資金が金融市場を闊歩する局面が近づいていると思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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