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【市況】明日の株式相場戦略=過剰流動性相場とAIアルゴ

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより
 今週はお盆休みモードで薄商いのなか、方向感の定まらない狭いゾーンでのもみ合い、というのが多くの市場関係者の見立てだったように思うが、商い面も株価面も良い意味で大きく裏切られた。きょう(13日)の東京株式市場は、前日の米株高を受けてリスクオンが加速、日経平均は一時470円強の上昇で2万3300円台まで駆け上がった。因縁場の2万3000円ラインをいとも簡単にマドを開けて飛び越え、6月9日につけた戻り高値2万3185円もクリア。新型コロナウイルスがトリガーとなった暴落相場以前の水準、2月21日の2万3386円(終値ベース)が、気がつけば目と鼻の先に迫っている。

 前日の米国株市場では、S&P500指数が取引時間中に過去最高値を上回るなど、ブル相場の色を一段と強めている。「新型コロナのワクチン普及に対する期待を背景に、経済回復が早まるとの見方がハイテク株買いを誘い、全体相場を押し上げた」という解説がなされていたが、出発点はあくまで開発中のワクチンへの思惑だ。ワクチンが開発され普及するまでの過程を飛び越え、更に相応に時間を要するはずの経済回復の道程も飛び越え、ハイテク株をごっそりと買う根拠に結びつけるというのは半ば笑い話にも近いが、それしか理由がつかないくらいに相場は強い。過剰流動性相場恐るべし、というよりない。

 既に企業のEPSなどでは妥当性を主張できなくなっており、おそらくバブル相場の領域に足を踏み込んでいるが、これがすぐ弾けるかと言えばそうはならない。今の世界株高はそうしたコンセンサスが暗黙のうちに生まれているようにも思われる。横溢するマネーが流れ込む入り江は金や銀などのコモディティ、そして理論的に債券が買いにくいとなれば、あとは株式しかない。FRBをはじめとする世界の中央銀行が、捻った蛇口を止めたくても止められない状況にあり、ファンダメンタルズを拠りどころとして今すぐ空売りポジションに回っても実るものはない。株価が崩れれば、そこは売りではなく押し目買いが正しい選択肢。これは、コロナショック後の世界の株式市場が証明している。

 そして、今のカネ余り相場の色彩を更に色濃くしているのがAI・アルゴリズムの存在だ。例えばきょう後場取引前(正午)に発表された光通信<9435>の20年4~6月期決算は営業利益段階で前年同期比8.6%減の224億8100万円と減益だった。ところが、この発表を受けて、同社株は一時2000円を超える大幅高となった。市場関係者によると「同社決算の事前コンセンサスは営業利益で180億円台だったため、それを20%以上上回ったことになる。今は“決算サプライズアルゴ”なるものが存在していて、サプライズ指数を弾いて、決算通過後にそれに見合う形で自動的に買いや売り注文を入れる。同社株のような時価総額は大きくても品薄な株は、株価が跳ね上がることになる」(ネット証券マーケットアナリスト)という。「人間なら躊躇して寝かせがちな待機資金を、計算式に当てはめて問答無用に注ぎ込むアルゴの存在は売り方にとっては脅威」(同)となっている。

 個別株戦略としては、きょうのところは主力大型株に買いが集中したが、こういう時に値動きの鈍い中小型株を仕込んでおくタイミングともなる。DX関連では引き続きキューブシステム<2335>やTDCソフト<4687>のほか、アイティフォー<4743>やサイバネットシステム<4312>などもマークしておきたい。また、バイオ関連では直近取り上げたJCRファーマ<4552>が強い動きで1万円トビ台を上放れてきた。米国では新型コロナワクチンが話題の中心だが、同社は英アストラゼネカとワクチン原液の国内製造に関し協議を進めており、今後の動向が注目される。

 新しいところでは上下水道用機械の大手で官公庁向けに強い前澤工業<6489>。7月7日の高値を抜き、強いチャートで異彩を放っている。水害対応への潜在ニーズのほか、2025年以降に深刻化するといわれる「水ストレス」が市場でもテーマ化する可能性がある。

 日程面では、あすは株価指数オプション8月物のSQ算出日。また、6月の第三次産業活動指数が後場取引時間中に経済産業省から開示される。海外では米国と中国で重要経済指標が相次ぐ。7月の中国小売売上高、7月の中国工業生産高、7月の中国都市部固定資産投資、7月の米鉱工業生産・設備稼働率、7月の米小売売上高、8月の米消費者態度指数(速報値・ミシガン大学調査)など。 
(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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