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【特集】1億円近い賠償責任も、ウィズコロナで増える自転車の安全対策は万全?

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第10回
清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「ふるさと納税は「人生100年マネー」づくりにおトク?」を読む
多くの大学がそうであるように、2年生の長男が通う大学も、今年度は全期間にわたりリモート授業になりました。往復2時間の電車通学は不要になりましたが、今度はずっと通っていた学校近隣のスポーツクラブまで、自転車で通うのだとか。その距離、往復80㎞ですから驚きです。
まあ、これは極端な話ですが、新型コロナ対策として電車などの公共交通機関を避け、自転車を利用するようになっているのは世界的な傾向で、自転車の売り上げも伸びています。
新型コロナ対策のみならず温暖化対策にもつながるとして、近くフランスや英国では修理費の補助が、イタリアでは購入費の補助が受けられるようになるのだとか。
日本でも、コロナ禍を機に通勤ラッシュを避けるために自転車通勤をする人が増えていますが、以下のようなトラブルが起きた時のことも考えておきたいものです。

他人を怪我させてしまえば、損害賠償責任を負うことも
まず自転車運転中にケガを負うかもしれません。その状況が通勤災害に認められれば、治療費や休業補償などの対象になりますが、状況によっては認められない可能性があります
もうひとつ、自分ではなく他人にケガを負わせ、法律上の損害賠償責任を負うかもしれません。突然の事故で負担する第三者への賠償金の額は予測不可能です。被害者はいうまでもなく、加害者の家計にも将来にわたり深刻な影響が及ぶ、人生において最大級のリスクです。
ウィズコロナ時代の"ニューノーマル"が模索されるなか、安全な移動手段の"新常識"として定着しつつある自転車ですが、必要な手立てを講じずに、人生100年マネーの形成を損なうことのないよう、万が一の備えもしておきましょう。
自転車事故で9500万円の賠償命令も
2019年秋、東京都は「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を改正、自転車事故を起こしたとき、被害者への損害賠償金をカバーできる保険の加入を都民に義務化しました。
条例による保険の加入義務化は、2015年10月に兵庫県で初めて導入され、その後多くの地方が条例を制定、その数は15都府県・8政令指定都市にも上っています(2020年4月1日現在)。
■地方公共団体の条例の制定状況
条例の種類 都道府県 政令市
義務化 山形、埼玉、東京、神奈川、
長野、山梨、静岡、滋賀、
京都、大阪、奈良、兵庫、
愛媛、福岡、鹿児島(15)
仙台、さいたま、相模原、
静岡、名古屋、京都、堺、
福岡(8)
努力義務 北海道、茨城」、群馬、
千葉、富山、和歌山、
鳥取、徳島、高知、香川、
熊本(11)
千葉、北九州(2)
出所:国土交通省(2020年4月1日現在)
兵庫県がいち早く条例を制定した背景にあったのは、2008年に神戸市で起きた自転車事故でした。
11歳の小学生が運転する自転車が62歳の被害女性と正面衝突、被害女性が重い後遺障害を負い要介護状態となったのです。子に対する監督義務を怠ったと母親が訴えられ、地裁は約9500万円の賠償命令を下しました。
加害者が小学生であるにもかかわらず母親が訴えられたのは、自分の行為が違法かを認識できる「責任能力」がこの小学生にはないとされたため。この場合、加害者は賠償責任を負いませんが、親などが監督義務者として責任を負うことになります。
子どもが起こした事故で、1億円近い賠償命令とは!? 当時、小学生を持つ親には衝撃が走りました。自転車事故で高額の賠償命令が出された事例は、他にもあります。
■自転車事故による高額賠償事例
賠償額 事例
9521万円 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない
道路において歩行中の女性(62才)と正面衝突。
女性は頭がい骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった
(神戸地裁 2013年7月4日判決)
9266万円 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、
対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。
男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った
(東京地裁 2008年6月5日判決)
6779万円 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、
横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。
女性は脳挫傷等で3日後に死亡した
(東京地裁 2003年9月30日判決)
5438万円 男性が昼間の時間帯、信号無視をして速いスピードで交差点に進入し、
青信号で横断歩道を横断中だった55歳の女性と衝突。
女性は頭蓋内損傷などで22日後に死亡した
(東京地裁 2007年4月11日判決)
4746万円 男性が昼間の時間帯、信号無視をして赤信号で交差点を直進し、
赤信号で横断歩道を歩行中だった75歳の女性に衝突。
女性は脳挫傷などで5日後に死亡した
(東京地裁2014年1月28日判決)
出所:一般社団法人日本損害保険協会
気軽に乗れる自転車ですが、道交法上は軽車両と位置付けられ、その運転に際しては様々な責任が生じます。
他人に損害を与えれば、刑事上の責任として懲役や禁固・罰金を科せられたり、併せて民事上の責任として被害者への損害賠償責任を負ったりすることになります。
また行政上の責任として、一定の違反には講習が義務付けられたり、運転免許証を保有している人の悪質な自転車運転には、免許停止や取り消しなどの処分が行われたりすることもあります。
つまり、責任の重さは自動車の運転とまったく変わらないのです。ですが自転車には、クルマに義務付けられている自賠責保険がありません。
加害者は任意に保険に加入して備えるか、もしくは自腹で賠償しなくてはなりません。しかし、加害者に賠償能力がなければ、被害者は泣き寝入りを強いられるという最悪の状況に陥ってしまいます。


 

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