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【特集】プロパスト Research Memo(6):期初計画を大きく上回る、大幅な増収増益決算、財務体質も改善傾向

プロパスト <日足> 「株探」多機能チャートより

■プロパスト<3236>の業績動向

1. 2020年5月期の業績
2020年5月期におけるわが国経済は、2020年2月以降には新型コロナウイルスの影響により、急速な悪化が続いたため、極めて厳しい状況にあった。個人消費は、緊急事態宣言の発令を受けた外出自粛や休業の影響により急速に減少している。また、新型コロナウイルスの影響で雇用環境が急速に悪化していることも、消費マインドの悪化につながっている。設備投資についても、弱含みとなっている。日銀短観(2020年6月調査)によると、全産業の2020年度設備投資計画は、前年度比0.8%減少となっている。また、法人企業景気予測調査(4月-6月期調査)においても、2020年の設備投資計画は前年比4.4%の減少が見込まれている。同社が属する不動産業界においては、新型コロナウイルスの影響による外出自粛や住宅展示場やモデルルームの閉鎖等に加えて、雇用所得環境の悪化を背景に住宅市場を取り巻く環境が悪化している。先行指標となる新設住宅着工戸数は、2020年4月が前年同月比で12.9%減となり10ヶ月連続の減少となるなど、弱含みでの推移している。

このような状況下、同社は新規物件の取得や保有物件の売却を進めてきた結果、売上高は23,674百万円(前期比31.5%増)、営業利益1,535百万円(同11.4%増)、経常利益1,095百万円(同27.0%増)、当期純利益890百万円(同21.9%増)と、大幅な増収増益決算となった。後述するように、賃貸開発事業とバリューアップ事業において売却が想定以上に進捗したことから、期初予想に比べ、売上高は24.9%、営業利益は34.8%、経常利益は56.4%、当期純利益は78.0%上回る、好決算であった。このように、同社の収益力は年々、着実に回復していると言えるだろう。

セグメント別には、分譲開発事業では、自社販売物件としてザ・クランプルーヴ上馬(東京都世田谷区)、ドゥアージュ コラッド松濤(東京都渋谷区)、アスデュール日本橋人形町(東京都中央区)及びプルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市)の4物件の販売を実施した結果、売上高は5,702百万円(前期比766.0%増)、営業利益(全社費用控除前)190百万円(前期は222百万円の損失)となった。前期は端境期に当たったことや、保有プロジェクトの評価見直しの実施による損失が発生し、売上高・営業利益が大きく落ち込んだが、回復基調にあると言えるだろう。

また、賃貸開発事業では、首都圏を中心に用地取得から小規模賃貸マンション建築・販売まで行っており、新川4プロジェクト、八丁堀7プロジェクト及び西蒲田プロジェクトなど、17プロジェクトを売却した。前倒しで売却が進捗したことで、期初計画の10プロジェクト売却を大きく上回った。一方で、保有プロジェクトにおける評価の見直しを実施した。この結果、売上高は11,988百万円(前期比21.6%増)と期初計画を上回ったものの、営業利益は1,785百万円(同13.3%減)に終わった。

さらに、バリューアップ事業では、中古の収益ビルをバリューアップした上で個人投資家等に売却しており、南馬込2プロジェクト、西久保プロジェクト、鎌田プロジェクト等、13プロジェクトの収益ビルを売却した。期初は9プロジェクトの売却を想定していたが、既存の保有プロジェクトでの売却進捗に加えて、新規で取得した物件の売却も進んだ。この結果、売上高は5,983百万円(前期比20.1%減)、営業利益は649百万円(同6.0%減)の減収減益ながら、期初計画を大きく上回った。

このように、売上高では分譲開発事業と賃貸開発事業が大幅な増収となり、バリューアップ事業の減収をカバーした。また、営業利益段階では、分譲開発事業が増益となり、賃貸開発事業とバリューアップ事業の減益をカバーした。同社では、3事業部門が補完し合うことで、会社全体として増収増益基調を維持していると言えるだろう。

2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2020年5月期末の資産は、前期末比714百万円減少の21,733百万円となった。これは主に、保有物件の売却を積極的に推進するとともに仕入れを厳選したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて891百万円減少したことによる。また、物件売却により、前払費用が484百万円減少したことも寄与している。一方、物件売却を推進したことから、現金及び預金は549百万円増加した。負債については、前期末比1,534百万円減少の17,318百万円となった。これは主に、保有物件の売却を推進したことに伴って借入金の返済が進んだことから、有利子負債が1,338百万円減少したことによる。純資産については、前期末比820百万円増加の4,414百万円となった。これは、主にその他利益剰余金が828百万円増加したことによる。

利益の積み上げの結果、自己資本比率は19.8%と、2013年5月期末の9.5%から大幅に上昇している。同社では自己資本比率20%超を目指して財務体質の強化を図ってきたが、同社の安全性は着実に改善していると言える。

現金及び現金同等物の2020年5月期末残高は前期末より610百万円増加し、2,549百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により獲得した資金は2,007百万円となった。これは、税引前当期純利益を1,107百万円獲得したこと、たな卸資産が892百万円減少したことなどによる。また、投資活動により獲得した資金は29百万円となった。これは、主に有形固定資産の取得により、16百万円の支出が発生したものの、定期預金の払戻により82百万円の収入が発生したことによる。さらに、財務活動により支出した資金は1,422百万円となった。これは、主に新規物件の取得等に伴う16,112百万円の借入を実行したものの、保有物件の売却等により借入金を17,449百万円返済したことなどによるものである。

以上の結果、同社が自由に使うことができるフリー・キャッシュ・フローは増加し、いざというときに使える手元資金は厚くなっており、安定度が高まっていると言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《EY》

 提供:フィスコ

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