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【特集】下振れリスク高まる石油市場、未曾有の景気縮小局面で混迷に拍車かける米大統領選 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 6月以降、ニューヨーク原油やブレント原油の上値は重い。4~5月の反発基調が息切れしている。米エネルギー情報局(EIA)の週報で石油製品需要は一段と回復したが、米新規失業保険申請件数が2週連続で増加するなど、世界最大の石油消費国である米国の景気回復見通しが曇っている。石油の需要回復期待は日々変動しつつも、どちらかといえば需要下振れリスクが高まっている印象だ。

●米国は未曾有の景気縮小局面

 米新規失業保険申請件数は雇用市場の先行指標である。130万件程度まで減少した後、改善が止まったことは警戒しなければならない。先週発表分の143.4万件は過去の推移を振り返ってみても未だに不快なほど高水準であり、100万件を超えるレベルで本件数が上昇する事態には素直に恐怖すべきである。3月に記録した過去最悪の686万7000件と比較して現状が改善していることには喜べない。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の景気見通しはかなり慎重だったが、同議長が用心深すぎるというわけではなさそうだ。4-6月期の米国内総生産(GDP)の縮小が示すように、米国は誰も経験したことのない景気悪化局面にある。

 世界最大の石油消費国がこの惨状でも、石油輸出国機構(OPEC)加盟国を中心とした産油国は今月から過去最大規模の減産目標を縮小し、日量200万バレル近く増産する予定である。EIA週報で米国の石油需要はさらに回復する可能性はあるが、需要回復期待が曇っている相場にとって、OPECプラスの増産は圧迫要因でしかない。

●劣勢のトランプ大統領、政権交代は景気の重荷に

 11月の米大統領選も景気見通しを悪化させている。前回の米大統領選で世論調査が当てにならないことが示されているが、現職のトランプ米大統領は明らかに劣勢だ。大統領の交代によって経済的な舵取りが根本から変わる恐れがある。新型コロナウイルスの流行にあえぐ米経済にとって政権交代は余計な重荷でしかない。米大統領選までにCOVID-19のワクチンが供給され、風向きが変わっているとは思えない。

 リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の調査によると、米大統領選に向けてバイデン候補の支持率は49.9%と、トランプ米大統領の41.6%を引き続き上回っている。7月後半はトランプ米大統領がやや盛り返しているものの、未知の疫病が逆風となっているなかで逆転勝利を目指すのは難しいのではないか。大統領選が行われる11月にかけて流行の第3波、第4波が来ていないとも限らず、トランプ米大統領はすでに敗色濃厚である。

 ただ、繰り返し指摘するが、バイデン新大統領の誕生は景気見通しをさらにややこしくする。石油の需給見通しも変化する可能性が高く、3ヵ月後の米大統領選に向けて神経質にならざるを得ない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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