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【特集】ジェイ・エス・ビー Research Memo(9):強固な経営基盤を構築し、次期ステージの発展につなげる(3)

JSB <日足> 「株探」多機能チャートより

■中長期の成長戦略

(2) 高齢者住宅事業
高齢者住宅事業においては、次の3点の実施により、新成長ドライバーに発展させる。

第1に、新規高齢者住宅の受託を増やす。すなわち、多様なニーズに応える住宅バリエーションの構築、関西地区を中心とした新規受託、受託方法・連携先の拡充を図る。ジェイ・エス・ビー<3480>による進捗評価はBである。2018年8月、9月の事業譲受もあり、2020年10月期第2四半期には、全国で666戸を運営しており、うち京滋北陸に356戸を展開するなど、今後もドミナント戦略により効率運営を追求する方針である。2019年10月には、同社グループでは初進出となる滋賀県大津市で24時間看護師対応型・サービス付き高齢者向け住宅「グランメゾン迎賓館大津大将軍」の運営を開始し、予定を上回る高稼働で推移している。さらに、2021年春には「グランメゾン迎賓館豊中(仮称)」(大阪府豊中市)のオープンを予定するなど、関西地区を中心とした新規受託の拡大を計画する。

第2に、運営力の向上を図る。すなわち、高稼働維持や介護サービスなどの提供力の向上、運営の良質化を行う。おおむね想定どおりに進捗しており、同社の進捗評価はBである。全体の稼働率も回復しており、更なる高稼働率を目指して様々なテクノロジーの活用を推進し、生産性向上につなげる方針だ。

第3に、地域に根差した存在を目指す。すなわち、地域への浸透や地域に交流の場を提供し、人材の確保を図ることで、高齢者住宅を地域の公民館のようにする計画であるが、同社の進捗評価はCにとどまっている。高齢者住宅の入居者の8割は同一あるいは隣接市町村からの入居であることから、地域への浸透を図るために近隣住民を招待した健康運動タイム等を提供している。同社では新たな公民館化の取り組みを検討・実施し、地域の課題を解決する存在を目指している。現在、新型コロナウイルス感染症への対応としては感染防止策の徹底を図っているが、今後もウィズコロナ・アフターコロナの時代を見据え新常態に適合したサービスを提供する計画で、入居者や家族の「安心」をサポートする。

(3) 組織強化
加えて、組織強化の面では、人員数・店舗数を増強しキャパシティを拡大して更なる成長につなげる。具体的には、グループの人員数・店舗数を2017年10月期の772人・70店から、2020年10月期には892人・85店にまで増やす計画である。2020年4月末時点で、人員数は1,022人と計画を大きく上回っている一方、店舗数は78店舗にとどまり弱含みである。同社の進捗評価はBで、おおむね順調との評価である。

3. ESGへの取り組み
同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、低炭素型社会実現へ向けた環境配慮型のまちづくりのために、シェアサイクルにより自転車利用推進、自転車廃棄削減などを通じて、CO2排出量の削減を目指す。また、社会(Social)では、学生マンション事業を通じて学生・親・オーナーに貢献し、マンション内のコミュニティによる定期イベントを通じて、地域住民とのコミュニティの大きな輪に発展している。高齢者住宅事業でも、事業を通じて高齢者・家族・オーナー・地域社会に貢献している。学生・文化支援への取り組みとしては、学生下宿年鑑表紙デザインコンペを開催し、アート系専門学校の学生に、企業が求める付加価値を踏まえたデザイン制作に取り組む機会を提供している。2020年2月には、「KYOTO STEAMスクール~ロボット工作にチャレンジ~Presented by UniLife」を開催し、学生マンション入居者を中心とした大学生が、ロボット工作を通じて、小学生を対象にSTEAM教育(Science(科学)、Techonology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の教育)のサポートを行った。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、経済的に厳しい状況下に置かれた学生に対して、200室を対象に入居時の初期費用や家賃6ヶ月分無料などの「学生支援プラン」を実施している。さらに、ガバナンス(Governance)では、企業価値の最大化に向けて、任意の委員会として報酬委員会を設置するとともに、取締役への業績連動型報酬制度や株式報酬制度を導入している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《EY》

 提供:フィスコ

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