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【特集】米国シェールオイルに底打ちの兆し、イラクに匹敵する生産拠点も減産終盤か? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米エネルギー情報局(EIA)は掘削生産性報告(DPR)で主要7地域のシェールオイル生産量や坑井の推移を月次で公表している。主要7地域とは、アナダルコ、アパラチア、イーグルフォード、バッケン、ヘインズビル、ニオブララ、パーミアンである。米国の原油生産量のうちシェールオイルは約7割を占めることから、世界最大級の産油国である米国の生産量を見通すためには必須の統計である。

 今月のDPRでは8月の米シェールオイル生産量が日量749万バレルまで減少すると見通されている。原油価格は持ち直しているとはいえ、コロナショックによる石油産業への打撃は甚大であり、設備投資の萎縮からこれまでのように減産が続く可能性が高い。米経済は縮小しており、景気回復の兆しはまだわずかである。

●石油企業は増産に消極的も、生産開始待ちの坑井は十分に確保

 DPRにおける掘削済み坑井は6月に326本まで減少し、2014年に統計が始まってからの最低水準を記録した。米ベーカー・ヒューズが週次で発表している石油掘削リグの稼働数からすれば、掘削済み坑井は一段と減少するだろう。掘削済み坑井だけでなく、仕上げ済み坑井も291本まで減少と、こちらも過去最低水準を更新した。シェールオイルを生産する場合、掘削済みの坑井に仕上げ作業を施した後に生産が開始される。DPRでは掘削済み坑井や仕上げ済み坑井のほか、掘削済み・未仕上げ坑井(DUC)の本数も公表されている。

 掘削済み・未仕上げ坑井はいわゆる半製品、仕掛品である。仕上げ作業を施して生産が始まるが、仕上げをせずに生産開始待ちの言わば在庫として確保されているのがDUCである。DUCは限定的な投資で生産開始が可能な坑井といえる。

 上述したように、掘削済み坑井や、仕上げ済み坑井は統計開始以来の最低水準にあり、シェールオイルの生産量はさらに減少する可能性が高い。特に、仕上げ済みの坑井の推移はさらなる減産を示唆している。6月に入ってニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は1バレル=40ドルの大台を回復したが、石油企業は仕上げ作業にさらに慎重になっており、増産には消極的といえる。

 ただ、DUCは今年1月の7694本から6月には7659本まで減少する傾向にあるが、変化は限定的であり、生産開始が可能な坑井は十分に確保されている。新たに掘削しなくとも仕上げ作業を施すだけで増産は可能であり、石油企業は生産量の拡大が妥当となる時期まで今は耐え忍んでいるといえそうだ。

●バッケンで底打ちの兆し、コロナショック後の減産は終盤か

 米国のシェールオイル生産の心臓部はテキサス州やニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地である。来月にかけてパーミアンの生産量はさらに減少すると見通されているものの、それでも日量415万バレル程度の規模があり、石油輸出国機構(OPEC)加盟国で2番目に大きな産油国であるイラクに匹敵する。

 注目したいのはパーミアンに次ぐ規模のバッケンである。シェールオイル生産が始まった当時、バッケンはシェール革命の最前線であり、一部の地域では失業率が1%割れまで低下するなど好景気に沸きに沸いたが、このバッケンで生産量が再び上向く兆候がある。EIAはバッケンの生産量が7月の日量109万5000バレルで底打ちし、8月には同111万3000バレルまで増加すると見通している。

 各地域でシェールオイルの生産コストは多少異なるにしても、バッケンで生産量が底打ちするならば、パーミアンやイーグルフォードでもコロナショック後の減産は終盤に差し掛かっているのではないか。シェールオイルの減産が一巡すると、米国の減産も底打ちすることから、原油市場の上値は重くなりそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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