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【特集】OPECプラスは減産規模の舵取りで難航必至、米大統領選も焦点に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

 来週、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国によるOPECプラスは、共同技術委員会(JTC)を14日に、共同閣僚監視委員会(JMMC)を15日に行う。5月から行われている日量1000万バレル近い過去最大規模の原油減産は今月で終了する予定だが、8月以降は減産規模を本当に縮小するのだろうか。

●過剰在庫の取り崩しには更なる需要回復が必要

 先月、OPECが公表した月報で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫は4月に30億6900万バレルまで急増した。コロナショックによる石油需要の喪失で3月に続き過剰在庫が急拡大している。4月には2015~19年のレンジ上限も上回っており、供給過剰は明らかである。

 5月以降はOPEC加盟国を中心とした大規模減産とコロナショック後の需要回復で需給は改善したが、米エネルギー情報局(EIA)の週報を参考にすると、おそらくまだ世界的な供給過剰は解消していない。米国の石油在庫は世界的な先行指標であり、OECD加盟国の在庫は増加を続けている可能性が高い。先週、石油戦略備蓄(SPR)を除く米国の石油在庫(原油と石油製品の合計)は14億5177万9000バレルまで拡大し、統計開始以来の最高水準を更新した。過剰在庫の増加ペースは鈍化しているが、需給の均衡には到達しておらず、過剰在庫が取り崩されるにはさらなる需要の回復が必要である。

 世界的に新型コロナウイルスの流行は悪化している。中国では収まっているとはいえ、世界最大の石油消費国である米国や、中国に次ぐ消費大国であるインドでは一日あたりの新規感染者数の伸びが加速する傾向にある。今後も順調に石油需要が回復すると想定するのはためらわれる。OPECを軸とした主要産油国は難しい判断を迫られており、少なくとも日量1000万バレル近い減産を8月も継続することを検討する必要がありそうだ。ロシアのノバク・エネルギー相は来月から予定通り減産規模を縮小するとの見通しを示しているが、サウジアラビアと足並みは揃うのだろうか。

●需給の行方を左右する米大統領選

 早急に協議する必要はないものの、産油国は米大統領選の動向にも目を向けなければならない。次期米大統領候補であるバイデン氏はシェールオイルを生産するうえで不可欠なフラッキング(水圧破砕法)を制限することを表明している。フラッキングはシェールオイル革命の基礎となった革新的な技術であり、米国を世界最大の産油国へと成長させた。完全に禁止ということになれば、米国の石油産業は致命傷を負うことになるだろう。新たな米大統領の誕生は、米原油生産量を減少させ、OPECなど主要産油国を支援することになるうえ、原油価格の上昇を引き起こす見通しである。

 ただ、フラッキング規制は米国のエネルギー需給の独立という夢を消し去るうえ、石油産業でかなりの失業者が発生する可能性が高く、産油大国である米国の景気見通しも左右する。規制の実現性は不透明である。

 リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の調査によると、現職のトランプ米大統領は支持率でバイデン候補にかなり劣っている。直近の調査ではトランプ米大統領の支持率は40.9%、バイデン候補は49.6%と、トランプ米大統領の支持率は低迷している。

 現行の合意に基づくと、OPECプラスは来月から日量770万バレルまで減産規模を縮小し、これを年末まで継続する予定だが、バイデン新大統領が誕生すると仮定した場合、妥当な規模なのだろうか。コロナショック前の世界を思い起こしてもあまり意味はないが、日量770万バレルの減産はかなり多い。11月に向けてトランプ米大統領の苦戦が続くようであれば、OPECプラスは減産規模の修正を迫られるのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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