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【特集】北の達人 Research Memo(4):積極的かつ適切な広告投資で、定期購買会員数の拡大を図りつつ高成長を実現

北の達人 <日足> 「株探」多機能チャートより

■決算概要

1. 過去の業績推移
北の達人コーポレーション<2930>の過去の業績を振り返ると、定期購買会員数の拡大に伴って業績が伸びているが、とりわけ2013年2月期からの業績の伸びが大きい。これは、それまで「カイテキオリゴ」への業績依存度が高かったところから、「みんなの肌潤糖」シリーズや「二十年ほいっぷ」の定着、さらには「アイキララ」などの新商品群による業績貢献に起因する。また、足元では「刺す化粧品」シリーズが大きく伸びている。したがって、「カイテキオリゴ」への依存度を引き下げながら、新たな収益柱の伸長によりバランスよく成長してきたと言える。

また、利益面も、広告宣伝費の効果的な投入により、売上高の拡大に伴って営業利益率は25%を超える高い水準に上昇してきた。2019年2月期は22.4%といったん低下しているが、機会ロスの回避や新規会員獲得の増加を図るため、計画を上回る広告投資を戦略的に実施したことが理由である。逆に、2020年2月期は、広告投資を意図的に抑えたことから28.9%に大きく上昇したが、こちらも一過性要因によるところが大きいと考えるのが妥当であろう(詳細は後述)。

一方、財務基盤の安定性を示す自己資本比率も、公募増資や内部留保の積み上げによって2016年2月期には86.5%の高い水準に到達。2017年2月期は長期借入金による手元流動性の確保を行ったことから67.4%にいったん低下したものの、その後は再び上昇傾向にある。また、資本効率を示すROE(自己資本当期純利益率)についても、高い収益力に支えられて50%水準となっており、同社の財務内容は極めて優れていると評価できる。

キャッシュ・フローの状況も、大きな設備投資を必要としない事業特性から、投資キャッシュ・フローは潤沢な営業キャッシュ・フローの範囲内に収まり、現金及び現金同等物の期末残高は大きく積み上がってきた。2016年2月期は広告宣伝費の投入や将来を見据えた先行投資に加えて、売上高の拡大に伴う在庫投資により一時的に営業キャッシュ・フローが落ち込んだが、2017年2月期以降は再び大幅なプラスで推移している。したがって、強固な財務基盤や潤沢な営業キャッシュ・フローを、これからの成長に向けていかに生かしていくのかも課題となってくるだろう。

2. 2020年2月期決算の概要
2020年2月期の業績は、売上高が前期比21.4%増の10,093百万円、営業利益が同56.6%増の2,915百万円、経常利益が同57.1%増の2,923百万円、当期純利益が同52.7%増の1,974百万円と増収増益により過去最高業績を更新し、売上高は100億円を突破した。一方、期初予想に対しては、売上高が下回ったものの、利益面では上回る着地となっている。

「刺す化粧品」シリーズの大ヒットが増収に大きく寄与した。特に、「ヒアロディープパッチ」が想定を上回るペースで伸びており、商品別構成においても存在感を増している。新たにリリースした「ミケンディープパッチ」(第2弾/2019年7月リリース)や「オデコディープパッチ」(第3弾/2019年9月リリース)も順調に立ち上がってきた。ただ、売上高が計画を下回ったのは、1)爆発的なヒットを記録した「ヒアロディープパッチ」の生産キャパシティ不足により発送遅延が発生したこと(ただし、2019年12月には完全に解消)や、2)年度後半において新規獲得件数に伸び悩み(詳細は後述)が生じたことなどが理由である。

一方、利益面については、商品ミックスの変化※1により原価率が若干悪化するとともに、販売費及び一般管理費についても体制強化(人員増強や本社移転など)に伴って増加したものの、増収効果により大幅な営業増益を実現。営業利益率も28.9%(前期は22.4%)に大きく上昇した。もっとも、営業利益が計画を上回ったのは、前述のとおり、「ヒアロディープパッチ」の発送遅延等※2に伴って広告宣伝費を抑制したことが理由であり、その点は一過性のものと捉えるのが妥当である。

※1 「刺す化粧品」シリーズは相対的に原価率が高い。
※2 その他、営業利益の上振れ要因としては、年度後半において、1)集客部門のリソースを将来に向けた体制整備に振り向けたことや、2)広告投資効率を示す指標が改善されたこともあり、結果的に新規獲得のための広告投資を抑制したことがあげられる。ただ、2)については、数値化の遅れにより、広告投資を拡大すべきタイミングを逸したとの見方もでき、新規獲得の機会損失を招いた点においては反省材料にもなっている。


財政状態については、売上高の拡大に伴って「現金及び預金」が大きく増加したことや本社移転に伴って固定資産が増えたことにより、総資産は前期末比39.2%増の5,902百万円に拡大した。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同47.8%増の4,347百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は73.7%(前期末は69.4%)に上昇した。資本効率を示すROEも54.2%(前期は48.9%)と極めて高い水準を維持しており、同社の財務基盤は優れた状態が続いている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《ST》

 提供:フィスコ

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