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【特集】飯野海運 Research Memo(1):2030年に向けて「IINO MODEL」「IINO QUALITY」を追求

飯野海 <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

1. 歴史ある海運業と不動産業が両輪
飯野海運<9119>は、1899年の創業(飯野商会、京都府舞鶴市)以来120年以上の歴史を誇る海運会社である。現在は資源・エネルギー輸送を主力とする海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と、本社の飯野ビルディングを主力とするオフィスビル賃貸の不動産業を両輪として事業展開している。海運業では業界最大級の船隊規模を誇るケミカルタンカーや、安定収益源として中長期契約を積み上げるガスキャリアなどを特徴・強みとしている。不動産業では本社ビルである飯野ビルディング(イイノホール&カンファレンスセンター含む)など、東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。

2. 2020年3月期は増収減益、2021年3月期は経常・最終増益予想
2020年3月期の連結業績は、売上高が前期比5.1%増の89,179百万円、営業利益が同16.8%減の3,976百万円、経常利益が同26.5%減の3,455百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同19.1%減の3,788百万円だった。海運業における大型ガスキャリアとケミカルタンカーの市況上昇が増益要因だったが、海運業における入渠費用の増加、不動産業における設備更新費用の増加などで、全体として減益だった。

2021年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比1.3%減の88,000百万円、営業利益が同4.4%減の3,800百万円、経常利益が同4.2%増の3,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.8%増の4,500百万円としている。新型コロナウイルス感染症による影響(2020年4月-9月の間継続することを前提)として、営業利益段階で約20億円(海運業で約16億円、不動産業で約4億円)のマイナス要因を見込み営業減益予想だが、営業外損益の改善や特別利益(海外子会社の清算結了による為替換算調整勘定実現)の計上で経常・最終増益予想としている。

3. ESG・SDGsを強く打ち出した意欲的な新・中期経営計画を策定
新・中期経営計画「Be Unique and Innovative.:The Next Stage -2030年に向けて-」(2020年4月-2023年3月)を策定した。2030年の目標「IINO VISION for 2030」に向けて、独自のビジネスモデル「IINO MODEL」の形成、高品質なサービス「IINO QUALITY」の提供を追求し、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティ(持続可能性)への積極的な取り組みによって、環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値をも創造し、共通価値の創造(CSV=Creating Shared Value)を目指すとしている。

海運業と不動産業を両輪として成長を目指す基本シナリオに変化はないが、経営目標数値(2023年3月期経常利益70~80億円、EBITDA195~205億円、ROE8~9%)だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)・SDGs(持続可能な開発目標)対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を強く打ち出した意欲的な計画との印象が強い。この点を高く評価し、中期的な収益拡大と企業価値向上を期待したい。

4. 安定配当と連結配当性向30%を基準とした業績連動方式の組み合わせにより、利益成長に応じた株主還元の強化を図る
利益配分に関しては、海運業の業績が市況に大きく左右されるため、従来は財務体質の強化と必要な内部留保の充実、及び今後の経営環境の見通しに十分配慮して、年間8円~12円の安定配当を目指すことを基本方針としていたが、新・中期経営計画の策定に合わせて2021年3月期から、従来の安定配当方針に加えて、連結配当性向30%を基準とした業績連動方式との組み合わせとする。配当額と利益成長の連動性を明確化し、業績の向上並びに配当の増額を目指すとしている。

■Key Points
・歴史ある海運業と不動産業が両輪
・2021年3月期連結業績は経常・最終増益予想
・2030年に向けて「IINO MODEL」と「IINO QUALITY」を追求
・サステナビリティ(持続可能性)への積極的な取り組み

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《ST》

 提供:フィスコ

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