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【特集】学研HD Research Memo(1):新型コロナウイルスの影響あるも、教育分野と医療福祉分野で成長を目指す

学研HD <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

学研ホールディングス<9470>は教育分野と医療福祉分野を事業領域とする総合サービス企業である。教育分野では学習塾の運営や児童書、学習参考書、小学校・中学校向け教科書などの出版、医療福祉分野では高齢者・介護支援住宅の運営や保育園の運営など子育て支援事業などを展開している。2018年9月にグループホームトップのメディカル・ケア・サービス(株)(以下、MCS)を子会社化するなど、ここ数年は積極的なM&Aにより業容を拡大している。

1. 2020年9月期第2四半期業績は教育分野、医療福祉分野ともに増収増益に
2020年9月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比4.1%増の75,838百万円、営業利益で同23.0%増の4,293百万円と増収増益となった。売上高は医療福祉分野がけん引して9期連続増収となり、営業利益は2009年の持株会社体制移行後で最高水準となった。教育分野の営業利益は、家庭学習の需要増から学習参考書の販売が好調だったほか、不採算だった定期誌の縮小、看護師向けeラーニング事業の拡大、小学校における教科書の新規発行(保健・道徳)などにより前年同期比26.0%増の2,991百万円となり、医療福祉分野は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を直近1年間で13事業所を開設(累計143事業所)したほか介護保険サービスの増加や、MCSにおけるグループホームの入居率向上、料金改定などにより、同16.6%増の1,180百万円といずれも2ケタ増益となった。

2. 2020年9月期業績見通しは、一旦未定に
2020年9月期の連結業績については、新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与える影響が見通し難いことから、期初計画(売上高で前期比1.7%増の143,000百万円、営業利益で同12.8%増の5,100百万円)を一旦、未定とし、合理的に見通せるようになった段階で速やかに公表する予定としている。最も影響を受けているのが教育サービス事業で、学研教室の休室や進学塾の休校を一時的に強いられ、春の生徒募集活動についても十分に行えず生徒数が減少している。政府の緊急事態宣言解除後は、各塾とも感染対策を行いながら通常授業の体制に戻っており、夏休みの生徒募集シーズンに向けて挽回していく方針だが、学校の夏休み期間短縮によって夏期講習による収入が例年よりも減少する可能性がある。教育コンテンツ事業においては、体験型英語学習施設「東京都英語村」が一時休業(6月以降順次再開)した影響が出ている。教育ソリューション事業では、幼児教室の休室や幼稚園向け物販の減少などの影響が出ている。一方、医療福祉分野では、高齢者の外出自粛に伴うデイサービスの顧客数減少や、サ高住などの新規施設の開業遅延による売上伸長の鈍化が予想される。

3.教育分野と医療福祉分野を二本柱に事業拡大を目指す
2019年9月期からスタートした2年間の中期経営計画「Gakken 2020」での基本的な戦略は変わらず、継続していく方針となっている。教育分野においては、英語事業やSTEAM※事業など成長が見込める事業を強化していくと同時に、グループ内のシナジーを生かして収益力を強化していく方針となっている。一方、医療福祉分野については高齢者人口の増加が続くなかでサ高住、グループホームなどの拠点数を拡大し、グループ連携を図ることで安定成長を目指していく。教育分野においてもグループ会社で豊富なコンテンツと顧客基盤を有しており、これらシナジーを高めていくことで収益拡大を図っていくことは可能と見ており、今後の動向が注目される。

※STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語で、これら5つの領域を重視した教育により、現実の問題を解決に導く力や今までにないものを創造する力を育んでいく。文部科学省でも学校におけるSTEAM教育の導入方針を示している。


■Key Points
・2020年9月期第2四半期累計の業績は4%増収、営業利益で23%増益に
・小学校向け教科書販売や医学看護向けeラーニングサービスの好調と出版事業等の収益改善施策が奏功
・教育分野と医療福祉分野を成長エンジンに、持続的成長による企業価値向上を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

 提供:フィスコ

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