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【特集】デリカフHD Research Memo(4):2020年3月期は新型コロナウイルスの影響で期末に失速、業績は増収減益

デリカフHD <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2020年3月期の業績概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2020年3月期の連結業績は売上高で前期比2.4%増の40,413百万円、営業利益で同16.6%減の571百万円、経常利益で同15.7%減の641百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同21.5%減の360百万円と増収減益決算となった。大型台風の影響や消費税増税の影響があるなかで第3四半期までは順調に推移していたものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2月中旬から3月にかけて外食・中食企業の休業や時間短縮営業が本格化し、売上高及び利益の下振れ要因となった。同社は新型コロナウイルスの影響として、売上高で-7億円以上、経常利益で-2億円以上の影響があったと算定している。

前期比での売上高の増収要因は、外食・中食業界における人手不足を背景に、簡便に調理できるカット野菜や加熱野菜の需要が引き続き増加したことによる。業態別では、居酒屋業態やファストフード業態等で新規顧客開拓が進み増収要因となった。減益要因は売上原価率が前期の76.6%から77.1%に上昇したことが大きい。働き方改革への取り組み(有給休暇取得率の向上、残業時間の削減等)を進めるなかで従業員数を増員し人件費が増加したこと、並びに愛知事業所のカット野菜工場改修に伴う立上げ費用の発生や減価償却費の増加(前期比147百万円増)、野菜調達価格の高騰などが原価率の上昇要因となった。プラス要因として、相対的に収益性の高いカット野菜の販売構成比が上昇するなど販売ミックスの改善や、JA茨城等からの産地引取便の拡大による仕入率の低減効果などがあったものの、人件費増等のマイナス要因をカバーできなかった。

なお、ここ数年続いている天候不順や自然災害に起因する野菜の価格高騰などに対処するため、同社は2018年に埼玉及び中京FSセンターに大型の低温貯蔵施設を設けたが、2019年秋の大型台風上陸の際には、その機能が存分に発揮された。低温貯蔵施設では日持ちのする葉物野菜を冷蔵保存により2週間程度貯蔵でき、台風等の上陸により収穫に影響が出そうな場合、事前に大量仕入れを行い同施設に保管しておくことで、最大2週間は野菜の安定した供給が確保できることになる。また、海外からの調達パイプ活用も安定供給体制に貢献しているもようだ。今回も安定供給を可能としたことで顧客からの評価は一段と高まったようだ。また、仕入先の農家にとっても従来は、収穫前に台風が上陸した場合、廃棄ロスが発生していたが、事前に収獲して出荷することでこうしたリスクを軽減できており、低温貯蔵施設の設置は同社の強みとなっている。

そのほか、2019年11月にはデリカフーズが、北海道の委託販売先であった大藤大久保商店(現、デリカフーズ北海道)の全株式を取得し子会社化している。今後、北海道エリアで営業強化と契約農家の開拓に注力し、事業規模を拡大していく方針となっている。従来、デリカフーズ北海道の年間売上規模としては6億円強程度であったが、このうち半分は同社の委託販売分であったため、実際の売上インパクトは約3億円程度となっている。今後は営業体制を強化していくことで、現状の約3倍となる20億円規模まで売上を伸ばすことが可能と同社では見ている。

(1) 部門別売上高
部門別売上高を見ると、ホール野菜は前期比2.0%減の18,022百万円となった。減収に転じたのはリーマン・ショックで景気が悪化した2010年3月期以来、10期ぶりのこととなる。第3四半期までは増収を維持していたが、新型コロナウイルスの影響で第4四半期に前年同期比12.6%減と大きく落ち込んだことが影響した。一方、カット野菜(真空加熱野菜含む)は同6.9%増の17,392百万円と増収基調が続いた。人手不足を背景に、手間のかからないカット野菜を利用する外食企業が増えていることが背景にある。第4四半期も新型コロナウイルスの影響があったものの、同7.7%増と増収基調が続いた。なお、真空加熱野菜の売上は4億円弱(前期は3億円強)と順調に増加している。顧客数、取り扱いアイテム数ともに増加しているものと見られる。その他については前期比4.7%増の4,997百万円と堅調な推移となった。

(2) 業態別売上高
業態別の売上増減率を見ると、外食業界向けは前期比3.9%増となり外食チェーン全体の売上成長率を上回る伸びが続いた。カット野菜の伸長に加えて、健康を意識した野菜を使ったメニューの増加、新規顧客の開拓や既存顧客での取引シェア拡大の効果によるものと見られる。業態別で見るとファストフードの伸びが2.4%増と唯一、外食チェーンの増収率を下回ったが、ファミリーレストランは外食チェーンの1.6%減に対して3.1%増、居酒屋・パブは同様に5.5%減に対して9.3%増とそれぞれ上回った。ファストフード向けに関しては、主要顧客の売上が低調だったことが大きい。一方、居酒屋・パブについては新規顧客の開拓や既存顧客での取引シェア拡大などの効果が大きい。一方、中食業界向けについては前期比4.5%減と低調に推移した。弁当・総菜事業者向けは1.0%減だったものの、食品メーカー・問屋向けが7.8%減と落ち込んだ影響が大きい。中食業界向けも第3四半期までは堅調に推移しており、新型コロナウイルスの影響で問屋向けが落ち込んだ可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

 提供:フィスコ

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