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【特集】アンジェス Research Memo(6):2020年12月期第1四半期業績はほぼ前年同期並みの営業損失を計上

アンジェス <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2020年12月期第1四半期の業績概要
アンジェス<4563>の2020年12月期第1四半期の売上高は前年同期比92.4%減の5百万円だったが、営業損失は974百万円(前年同期は918百万円の損失)、経常損失は922百万円(同938百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は919百万円(同1,183百万円の損失)とほぼ前年同期並みの損失計上となった。

2019年の第3四半期より販売を開始した「コラテジェン(R)」の売上げを5百万円計上したものの、前年同期に売上計上したムコ多糖症IV型治療薬「ナグラザイム(R)」73百万円、研究開発事業収益2百万円が無くなったことが減収要因となった。なお、「コラテジェン(R)」の四半期売上推移は前第3四半期に1百万円、第4四半期に2百万円となり若干ながらも増加傾向となっている。

事業費用では、売上原価が「ナグラザイム(R)」の販売終了に伴い前年同期比90.4%減となったほか、研究開発費が同9.4%減の628百万円となった。米国におけるHGF遺伝子治療用製品の第2b相臨床試験の開始に伴い、外注費が50百万円増加した一方で、研究用材料費が106百万円減少した。一方、販管費は前年同期比31.8%増の348百万円となった。主に「コラテジェン(R)」の市販後調査費用や投資案件にかかる費用が発生したことに伴い、支払手数料が39百万円増加したほか、広告宣伝費や租税公課が各10百万円増加した。

営業外収支が前年同期比で71百万円改善しているが、これは外貨預金の評価替えに伴い為替差益が71百万円発生したこと(前年同期は為替差損1百万円)が主因となっている。また、前年同期は投資有価証券評価損243百万円を計上したが、当四半期は新株予約権戻入益5百万円を計上しており、四半期純損失の縮小要因となっている。


パイプラインの開発状況など不確定要素が多いため、通期業績予想は非開示

2. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の見通しについては、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況や、HGF遺伝子治療用製品の国内、米国での開発状況、事業提携の可能性や新規シーズの導入の可能性など、現時点で業績に影響を与える未確定な要素が多いことから、合理的な数値の算出が困難であると判断し非開示としている。研究開発費については、HGF遺伝子治療用製品の国内における適応拡大のための臨床試験や米国での臨床試験が始まっていることから、前期比で数億円程度増加することが見込まれる。また、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発費用については、日本医療研究開発機構(AMED)の公募プロジェクトに採用されたことから、直接経費については助成金でほぼ賄われるものと思われるが、会計処理方法についてはまだ確定していない。


新株予約権の行使により2ヶ月間で約114億円の資金調達に成功、財務基盤が大幅に強化
3. 財務状況と新たな資金調達について

2020年12月期第1四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比2,075百万円増加の14,599百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産のうち現金及び預金は、新株予約権の発行及び行使に伴う3,122百万円の入金があった一方で、米国バイオベンチャーのEmendoの株式取得及び当四半期の事業費用への充当などにより、722百万円の減少となった。また、固定資産では主にEmendoの株式取得により投資有価証券が2,730百万円増加した。

負債合計は前期末比139百万円減少の329百万円となった。買掛金が58百万円減少したほか、未払法人税等が44百万円減少した。また、純資産は同2,214百万円増加の14,270百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純損失919百万円の計上があったものの、新株予約権の発行及び行使により、資本金及び資本剰余金が各1,546百万円増加し、新株予約権が48百万円増加したことが主因となっている。

なお、同社が2020年3月4日付で発行した第37回新株予約権(第三者割当て)については、株価がその後大きく上昇したこともあって4月までに行使をすべて完了している。当初の資金調達想定額は約93億円だったが、最終的に約114億円を調達している。4月だけで見ると83億円を調達しており、4月末の時点では現預金は170億円を超える水準になったと見られる。調達資金の使途は、海外市場を含めた更なる開発パイプラインの拡充のための資金(45億円)、HGF遺伝子治療用製品の原薬の製造委託費用(16.5億円)及び運転資金(32億円)となっており、余力を持って開発パイプラインの拡充を進めることが可能になったと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YM》

 提供:フィスコ

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