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【市況】ハッシュタグ政局【フィスコ・コラム】


検察官の定年引き上げをめぐる問題は、安倍晋三政権の存続期間を縮めたようです。来年9月の自民党総裁としての任期が意識され始め、水面下での権力闘争が繰り広げられようとしています。ただ、現時点で確たる後継者は見当たらず、紆余曲折が予想されます。


政府は今年1月、63歳で定年を迎えるはずだった東京高検の黒川弘務検事長(当時)の任期の半年間延長を閣議決定し、野党から「不当な介入」と批判されていました。内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能にする検察庁法改正案への抗議は、ハッシュタグ入りのツイッターにより著名人を媒介し驚異的な勢いでネット上に拡散。外野の声を軽視してきた安倍首相も採決を見送らざるを得ず、求心力低下を露呈しました。


政府のコロナ禍への対応などを尋ねた5月初旬の世論調査で、安倍政権の不支持が支持を上回りますが、その時点ではまだ安倍首相の続投、つまり4選はメーンシナリオだったといいます。それが不可能でも、総裁選実施なら石破茂元幹事長の当選が見込まれるため、岸田文雄政調会長に禅譲して影響力を残す可能性もありました。しかし、黒川氏の「賭けマージャン」報道は状況を一変させました。


元自民党議員などによると、それにより4選の可能性はほぼ消え、今後はバトンタッチのタイミングを模索する展開となりそうです。新型コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にあり、緊急事態宣言は首都圏でも近日中に解除される方向。一区切りという意味では通常国会閉幕の時期が最適ですが、経済再生への対応を途中で放り出すのでは通算在職日数が憲政史上最長を誇る政権の評価を下げることになります。


そのため、後継選びが本格化するのは夏以降とみられますが、安倍首相が自民党内に後継者を育成していないことが改めて浮き彫りになりそうです。そこで注目されるのが、11月にも行われる大阪都構想の是非を問う住民投票です。「賛成」多数で悲願が叶った場合、立役者の吉村洋文府知事は大きく脚光を浴び、同知事が副代表を務める日本維新の会の発言力が増してくるでしょう。


また、自民党は国民民主党にも関心を寄せており、同党の顧問を務める小池百合子東京都知事(7月の選挙での再選が前提)との交流も活発化します。維新と国民民主を自民党が後押しする政権の発足も考えられます。そうなると、これまで自民党をバックアップしてきた公明党の立ち位置が難しくなります。しかし、アメリカ大統領選の結果によっては、公明党が台風の目になる可能性もあります。


つまり、民主党のバイデン元副大統領が現職のトランプ大統領を破った場合、安倍政権のレームダック化は避けられないでしょう。その際、親中路線の米民主党と歩調を合わせるため、ウルトラCで公明党を中核とする政権構想が飛び出すかもしれません。かつて社会党委員長が首相になった経緯を考えれば、可能性はゼロではないはずです。いずれにしても、今後は自民党周辺を巻き込んだ政局になると言えそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

 提供:フィスコ

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