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【特集】プラチナは経済再開でレンジ上放れも、なお残るコロナ禍の重石 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は4月半ば以降、新型コロナウイルスの影響で強弱材料が交錯しレンジ相場が続いていたが、各国のロックダウン(都市封鎖)緩和で経済活動が再開されると、需要回復期待や金堅調を受けてレンジを上放れ、19日に3月12日以来の高値840.69ドルをつけた。

 各国のロックダウンで鉱山会社が操業を停止する一方、自動車販売が急減し需要が減少していたが、5月に入りロックダウンが緩和されると、経済活動が徐々に再開し自動車メーカーの操業も再開された。また、4月に都市封鎖が解除された中国では自動車販売が約2年ぶりに増加しており、需要回復期待が高まった。

 ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は「米経済は回復するが、2021年末まで低迷する可能性がある」と述べている。労働市場やサプライチェーン(供給網)の回復に時間がかかればプラチナの上値は抑えられるとみられる。また、ドイツや韓国、イラン、シンガポール、中国で新型コロナウイルスの感染者が増加し、感染第2波に対する警戒感が出た。中国北東部で再び移動制限が課されており、ワクチンが開発されるまで完全に正常化するのは難しいとみられる。

 自動車メーカーや鉱山会社はソーシャルディスタンスの措置で減産が続くとみられている。各国中銀の量的緩和(QE)や経済対策で大量の資金が投入されたことはプラチナなどコモディティの支援要因だが、経済活動が正常化するまではプラチナETF(上場投信)には投資資金も流入しにくく、上昇はゆっくりとしたものになりそうだ。

●プラチナはロックダウンで需要・供給ともに減少

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は「プラチナ・クォータリー」を発表し、2020年のプラチナは新型コロナウイルスの影響で需要・供給ともに減少するとの見通しを示した。

 2020年のプラチナ供給は前年比13%減の223.9トン、需要は同18%減の216.2トンで7.7トンの供給過剰(前年5.2トン供給不足)と予想。項目別では鉱山生産が13%減の164.4トン、二次供給が12%減の59.4トン、自動車触媒需要が14%減の77.2トン、宝飾需要が15%減の55.5トン、工業用需要が5%減の64.7トン、投資需要が52%減の18.8トン。第1四半期は供給が前年同期比6%減の55.1トン、需要が同35%減の51.3トンで3.9トンの供給過剰(前年同期23.9トン供給不足)と予想された。第1四半期は南アの鉱山会社アングロ・アメリカン・プラチナム(アンプラッツ)の精製工場の閉鎖や外出禁止令による鉱山会社の操業停止が供給に影響し、需要面は各国のロックダウンが影響した。

 中国汽車工業協会(CAAM)によると、4月の自動車販売台数は前年同月比4.4%増の207万台となり、約2年ぶりに増加した。ただ、CAAMは今年の見通しについて、新型コロナウイルスの流行が続けば最大で25%減少する可能性があるとしている。中国北東部の感染者増加で約1憶人に再び移動制限が課されており、今後の行方を確認したい。

 ロイター通信によると、トヨタ自動車 <7203> は4~10月の北米での生産を80万台程度と見込んでいるとのこと。前年同期比29%減であり、正常化には時間がかかる見通しである。一方、米デトロイトの自動車メーカー大手3社と部品業者が18日、一部の組立ラインの稼働を再開したことが伝えられた。

 南アは5月1日からロックダウンを緩和したが、鉱山会社インパラ・プラチナム(インプラッツ)は減産見通しを示した。ロックダウンの影響で今年の生産は81~90トンと、前回見通しの93~106トンから下方修正。5~6月の稼働率は30~40%になるとした。一方、アンプラッツは閉鎖していた精製工場の修理が完了したと発表した。同社の精製工場は2月10日に爆発事故を起こし、他の工場を稼働させたが高温で危険な状況となり、閉鎖していた。

●南アと英国のプラチナETF残高が減少

 経済活動は再開されたが、新型コロナウイルス感染の第2波に対する警戒感が出るなか、南アと英国のプラチナETFからは投資資金が流出した。プラチナETF残高は15日の南アで21.80トン(1ヵ月前25.53トン)に減少、18日の米国で23.67トン(同22.95トン)に増加、14日の英国で15.55トン(同16.26トン)に減少した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月12日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万8155枚となり、1ヵ月前の1万7796枚(4月14日)から小幅に拡大した。買い戻しが手じまい売りを上回った。今後はレンジ上放れで新規買いが入るかどうかを確認したい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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