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【市況】米大統領選への回復ペース【フィスコ・コラム】

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

コロナ禍の金融市場への影響は峠を越えたとみられ、市場の関心は主要国の今後の回復ペースに向かい始めました。特に、世界経済への影響力が絶大なアメリカは半年あまり後に大統領選を控えており、どのように持ち直すのか注目されます。


5月8日に発表されたアメリカの4月雇用統計は、非農業部門雇用者数が1930年代の大恐慌以降の最低水準、失業率は戦後最高をそれぞれ記録。同日のNY株式市場でダウなど主要3指数は強含み、その後は一進一退の値動きが続いています。足元はロックダウン(都市封鎖)解除への期待感と、新型コロナウイルス第2波や発生源をめぐる米中対立の先鋭化への警戒が交錯し、株価の上昇は抑えられています。


ただ、NYダウは3月23日に付けた18591ドル(終値)を大底に24000ドル前後の水準に持ち直しており、株式相場は落ち着きを取り戻したと言えそうです。また、投資家の不安心理を表すVIX指数(恐怖指数)は3月半ばにリーマンショック時の過去最高値に迫りましたが、その後は緩やかに低下し、直近は30前後の水準です。史上初めてマイナスに落ち込んだ原油先物価格が持ち直したことも、株価を支えています。


アメリカでの新型コロナ感染による死亡者は8万人超と世界最多に揺るぎなく、なお増加中です。半面、ジョージア州を皮切りに多くの州がロックダウン措置を解除し始め、全米で徐々に経済活動は正常化に向かいつつあります。NY州など一部の州は措置を延長するため、まだ予断を許す状況にはないかもしれませんが、一時期の混乱は弱まってきているように思えます。そういうタイミングで雇用統計が発表されました。


次の焦点は5月28日の1-3月期国内総生産(GDP)改定値と6月5日の5月雇用統計です。4月29日のGDP速報値は前期比年率-4.0%の予想に対し-4.8%となりましたが、改定値ではサービス消費の内容がより詳細に反映されれば大幅な下方修正もありえます。また、失業率は4月が大底とみられるものの、セントルイス連銀は悲観的なシナリオを想定しており、さらに悪化しないか警戒されています。


連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は5月13日のセミナーで、新型コロナの影響によりアメリカは前例のない下振れリスクに直面していると指摘し、急回復の楽観論を一蹴しています。実際、非正規を含む広義の求職者を示すU6失業率は3月の8.7%から4月は22.8%に跳ね上がり、リーマンショック時の17%台を上回りました。個人消費の回復には相当な時間を要すると考えられます。


いずれにしても、ロックダウン解除が順調に進んでも、4-6月期GDPは一段の悪化が予想されます。そして、大統領選前に発表される7-9月期GDPも、やはりマイナスは避けられないでしょう。11月の大統領選が有権者の生命と生活に直接かかわるとの見方が広がれば、投票率は上昇するとみるのが自然です。世論として盛り上がる郵便選挙の導入にトランプ大統領が否定的なのは、回復への自信のなさを表しているのかもしれません。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)
《YN》

 提供:フィスコ

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