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【特集】フェローテク Research Memo(3):事業内容(製品)は多岐にわたるが、主力は半導体等装置関連事業

フェローテク <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

1. 事業セグメント
前述のようにフェローテックホールディングス<6890>は多くの製品を自社開発・製造すると同時にM&Aによって多くの企業を子会社化してきたことから、事業内容は多岐にわたっている。今期(2020年3月期)から事業セグメントは、半導体等装置関連(2020年3月期第2四半期売上高比率65.0%)、電子デバイス(同16.7%)、その他(同18.3%)の3つに分けられている。前期までの太陽電池関連は、その他に含まれている。

2. 半導体等装置関連
主に、以下のようなサブセグメントがある。

(1) 真空シール(2020年3月期第2四半期対総売上高比率9.6%)
磁性流体を利用して、真空雰囲気内への回転導入機としての役割を担う部品で、半導体・FPD・LED・太陽電池等の製造工程で利用されている。同社の核となる製品で、主に半導体ウエーハのエッチングや成膜工程、FPDのパネル搬送用ロボットの回転機構部などに導入され、密閉空間を外部から隔離しつつ、加工に必要な動力を正確に伝えることを可能にしている。

(2) 石英製品(同19.6%)
石英製品とは熱と化学変化に強い超高純度のシリカガラスで、同社の製品は主に半導体製造工程等で使われる。ウエーハの成膜生成や拡散プロセスなどで使われるほか、搬送や洗浄工程で治具、消耗品として使われており、微細化・高純度化が進む半導体製造プロセスの中で重要な役割を担っている。

(3) セラミックス(同11.0%)
高強度・高純度のセラミックスに同社が持つ素材技術、生産技術、精密加工技術を生かして様々なセラミックス部品を提供している。セラミックス製品は高強度・高純度・高耐熱性などの特性に優れたファインセラミックス製品(FC)と高度な機械加工が可能なマシナブルセラミック(MC)に分けられる。前者は主に半導体製造装置用の部品として使われているが、特にドライエッチング方式(プラズマエッチャー)では不可欠な部品となっている。後者は様々な加工を施すことで各種部品や治具として利用されるが、特に半導体の検査工程での治具(ウエーハプロバー用)として需要が高まっている。また近年では、その精密加工特性を生かして高度な医療用機器での利用も進んでいる。

(4) ウエーハ加工(同10.8%)
同社では半導体向けに6インチ以下の小口径シリコンウエーハを単結晶インゴットからウエーハ加工まで一貫生産している。バイポーラIC用、ディスクリート用、MEMS用の量産品を中心にグローバルな供給体制を築いている。また2017年から8インチウエーハの生産を開始し、後述するように今後は8インチウエーハの量産体制を構築する。

(5) 部品洗浄(同5.7%)
半導体製造装置用部品の洗浄作業を行う事業。2018年3月期までは「その他事業」に含まれていた。今後拡大が見込まれる事業だ。

3. 電子デバイス
(1) サーモモジュール(同15.9%)
サーモモジュールは、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するという効果を利用した板状の半導体冷熱素子(べルチェ素子)。小型・軽量でフロン要らずの特長があり、自動車の温調シートを始め、冷却チラー、光通信、バイオ、エアコン、ドライヤーなど様々な家電民製品にも採用されている。

(2) 磁性流体・その他(同0.8%)
磁性流体とは液体でありながら、外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性素材。1960年代のNASAスペースプログラムで、無重力環境の燃料輸送等の目的で開発された。現在では、スピーカーやアクチュエーター、センサー、分別リサイクル用途のほか、同社の主力製品の1つである真空シールにも利用されている。その他の中には、パワー半導体基板などが含まれている。パワー半導体基板とは、サーモモジュール製造技術を応用して、アルミナ、窒化アルミニウムセラミックスに銅回路板を共晶反応によって接合した放熱用絶縁基板のことである。同製品は、電車や電動車両、エアコン、サーバー等の小型化・省エネ化に寄与しており、今後の需要増が期待される製品である。

4. その他(同18.3%)
前期まで太陽電池関連であった太陽電池用シリコン、シリコン結晶製造装置、セル、各種の受託作業などが含まれる。太陽電池関連事業はOEM以外がすでに撤退する方向が決まっている。

5. 特色、強み
(1) 無機系素材のパイオニア
同社は石英、シリコン、窒化ケイ素、シリコンカーバイド(SiC)など幅広い無機系素材の生成、加工などに長年携わってきた。そのため、同社内にはこれらの素材に関する多くのノウハウ(素材の性質、生成方法、加工方法等)が蓄積されており、これが同社の特色でもあり強みと言えるだろう。

(2) 製造装置も手掛ける
また同社は、単に素材だけでなく各種の製造装置も手掛けており、製造装置に関するノウハウも持っている。そのため顧客に対しては、素材、加工部品、最終製品、製造装置など様々な提案(ソリューションの提供)を行うことができる。

(3) ワンストップソリューションが可能
さらに同社の場合、半導体製造装置内の部品の洗浄(取り外し、洗浄、据付)や製造装置の組立等のサービス事業も展開しており、顧客にとっては素材の供給、部品加工、装置類の組立、部品洗浄などをワンストップで外注化(アウトソーシング)することが可能であり、これも同社の強みだろう。

(4) 大手顧客との信頼関係
前述のように同社の主要製品は、主に半導体製造装置向け及び半導体製造プロセスで使われるため、同社の主要顧客は世界でトップクラスの半導体製造装置メーカーが多い。2018年3月期の売上高上位には、米国系製造装置メーカー2社、及び日本の製造装置メーカーが含まれる。同社はこれらの大手半導体製造装置メーカーに長年にわたり製品や部品を供給しており、これら顧客との深い信頼関係も同社の財産であり強みと言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《ST》

 提供:フィスコ

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