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【特集】ティア Research Memo(3):将来の見込み顧客となる個人会員、提携団体数が年間3万件を超えるペースで拡大

ティア <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

3. 顧客内訳と会員数の推移
ティア<2485>の顧客は主に個人で、直営の葬儀会館のほか自宅、寺院、公民館などを会場とした葬儀の施行全般を請け負っている。また、葬儀終了後のアフターフォローとして、忌明け法要や年忌法要の請負なども行っている。2019年9月期における葬儀売上高の顧客別構成比を見ると、「ティアの会」に加入する個人会員が69.2%、提携団体が25.7%、フリー客が3.3%、その他が1.8%となっており、「ティアの会」会員及び提携団体で90%以上を占めている。

「ティアの会」は、入会金を支払うことにより、会員特別価格で葬儀や葬儀後の法要、香典返しなどを利用できるほか、全国2万ヶ所以上の施設(ホテル、飲食店、レジャー施設等)において利用可能な「会員優待サービス」や「生き方応援ポイント」「保険サービス」「ラストメッセンジャーサービス」といった各種特典や割引サービスを受けられる同社独自の会員システムとなる。会員数は2019年3月末で延べ380,807人と前期末比で33,770人増となり、年々純増数も拡大している。会員は将来の見込み顧客となるため、今後の収益動向を示す重要な先行指標となる。また、提携団体とは、「ティアの会」と同等のサービスが受けられる法人・施設との団体契約を指す。提携団体数についても2019年9月末で931団体と、増加傾向が続いている。


適正な料金プランと高品質なサービス、ドミナント出店により成長を継続、「THRC」の新設により人財教育の更なる強化に取り組む
4. 同社の特徴と強み
(1) 同社の特徴
同社の最大の特徴は、「葬儀価格の完全開示化」と「適正な葬儀費用の提示」を行い、旧来の葬儀社の慣習を打ち破ったことにある。このため、葬儀単価についても全国平均が130~140万円であるのに対して、同社は約100万円と業界平均を下回る価格でサービス提供を行っている。ここ数年の傾向としては、核家族化の進行や高齢者の独居率上昇など生活スタイルの変化を背景に、「一般葬儀」から「家族葬」へシフト、または葬儀そのものを行わない「直葬」を行うケースが増えており、葬儀単価については緩やかながら低下傾向が続いている。

出店戦略ではドミナント出店により会館の相互補完性を高め、効率的に認知度向上を図りながら営業エリアを広げていく戦略を推進している。1会館の商圏は直径3km、稼働率は約80%を目安としている。会館の基本フォーマットは、建坪150~200坪(平屋1階建て~2階建て)で収容人員100~150名の式場1室(最近は規模に応じて間仕切りできるよう店舗の改修を進めている)に会食ルーム、親族控室がついたタイプで、設備投資額は150~200百万円、投資回収期間は9~10年が目安となっている。

また、2018年9月期より新たな店舗形態として出店を開始した家族葬ホールは、基本フォーマットで建坪60坪(平屋1階建て)、収容人員30人規模の式場1室と会食ルーム、親族控室がついたタイプとなる。設備投資額は70百万円、投資回収期間は9年を目安としている。家族葬専用ホールは既存ホールの商圏の隙間を埋めていく格好で出店を進めている。そのほか、2016年9月期より東京都内に葬儀相談サロン形式で出店を開始している。東京都内は土地や家賃が高い一方で、葬儀単価が全国平均を下回る水準であること、火葬場と併設する貸式場が多いことなどから、式場を自社で保有・運営するよりも貸式場を活用した方が効率的に事業を拡大できると考えたためだ。現在、東京都では荒川区、葛飾区など23区内の中でも北東部エリアからドミナント出店を進めている。現在、8店舗を正社員2名と非常勤社員で運営している。イベント・セミナー等の開催により認知度の向上に取り組んでおり、まだ先行投資段階ではあるものの、葬儀件数も順調に増加し始めている。

なお、店舗形態別の平均葬儀単価としては、葬儀会館で100万円強、家族葬ホールで70万円台、葬儀相談サロンで50万円台として収益モデルを立てている。

(2) 同社の強み
同社の強みは、他社に真似のできない人財教育システムにある。「ティアアカデミー」と呼ばれる人財教育システムでは、新卒入社の新人社員に対して入社後6ヶ月間、社会人としての基礎研修だけでなく、セレモニーディレクターとしての教育※、徳育的観点からの「命」や「心」に関しての教育などを実施している。現場配属後も、OJTだけでなく3ヶ月に1度は社長セミナーを受講させており、葬儀業である前に「究極のサービス業」であることを認識し、「遺族に対して最高のおもてなし」により「感動」を与えられる社員になれるよう心の教育を行っている。また、客観的な判断基準として、社内検定試験を等級別に7段階に分けて実施しており、個々の社員の能力を把握できるようにしている。こうした人財教育システムが同社の質の高いサービスを作り上げており、競争力を支える源泉となっている。

※葬儀の依頼を受ける際の「打ち合わせ」、通夜・葬儀の際の会場設営、ロールプレイング、OJTによる施行立会い。


なお、同社は人財教育の充実を図るべく教育専用施設「THRC」を本社隣接地に2019年4月に開設した(設備投資額は約3億円)。同施設は5階建てで1階は業務車両の駐車場スペース、2階はコンタクトセンター及び夜勤専門職等事務所、3~4階が研修施設となっている(5階の用途は未定)。3階にはモデル葬儀式場を整備し、研修で模擬体験を繰り返し行うことが可能となったことで、葬儀施行技術の習得期間が短縮できるほか、サービス品質の向上が期待できることになる。従来は主に各店舗でのOJTで技術習得を行っていたため、一度に育成できる人数が限られるほか時間もかかっていた。「THRC」の開設によって多数の人材育成が短期間で可能となり(=新規出店余力の増大)、葬儀業の理解度をより深めることで退職率を低下させる効果も期待されている。4階は大研修室(最大100名収容)と小研修室(最大40名収容)が整備されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

 提供:フィスコ

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