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【市況】S&P500 月例レポート ― 今年15回目となる最高値更新を記録 (2) ―


●トランプ大統領と政府高官

 ○米議会下院は、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の電話での会話を巡り、トランプ大統領に対する弾劾手続きを進めるか否かを判断するための弾劾調査(事実調査)を開始しました(手続きを進める場合、下院本会議で採決を行い、弾劾への賛成票が過半数に達すれば、上院本会議で採決を行いますが、トランプ大統領の罷免には3分の2の賛成票が必要です)。トランプ大統領はこれに対し、中国とウクライナはバイデン氏(オバマ政権の副大統領で、2020年大統領選でトランプ大統領に対抗する民主党最有力候補)の調査をするべきだと主張し、弾劾手続きについて「ばかげている」と反発しました。

  →下院は弾劾調査の一環として証人を呼びましたが、その一部に対してホワイトハウスから妨害があり、下院は召喚状を送付しました(最終的に裁判所で判断される見込みです)。

  →10月最終日に、下院は弾劾調査を正式に進めて公開すること(これまでは非公開)を決定しました。証人は議員(両党)から質問を受け、タイムリミットはありません。

 ○世界貿易機関(WTO)は、欧州諸国がAirbus(EADSY)に不当な政府補助金を提供していたことへの対抗措置として、米国が欧州の輸出品75億ドル相当(年間)に報復関税を課すことを認めました。トランプ政権はこれを受けて新たに10%~25%の追加関税を発動しました(シングルモルト・スコッチも含まれています ―― 「マッカラン」に手を出さないでほしいです)。

 ○米中は貿易協議が「第1段階」の合意に達したとして、正式な合意文書の作成を進め(一部で協議が続いていた模様です)、米国は予定していた対中関税を延期しました。

  →2019年11月16~17日にチリのサンティアゴで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(トランプ大統領と習近平国家主席がともに出席予定)で第1段階の合意に正式署名することを目指し、水面下で協議が続きました。しかし、チリは格差問題を巡る国内の混乱を理由に予定されていた首脳会議を中止しました。

 ○トランプ大統領がシリア北部から米軍を撤退させると、トルコは同地域に侵攻し、敵対するクルド人武装勢力を攻撃しました。これを受けてトランプ大統領はトルコの対米鉄鋼輸出に関税を課して停戦を求め、トルコは停戦を受け入れました。

●中央銀行関連の動き

 ○2019年9月17日-18日のFOMC議事録では、緩和の必要はないと考えるタカ派的発言も多かったものの依然としてハト派が優勢だった模様で、市場は引き続き、10月29日-30日の会合での追加利下げを予想していました(12月10日-11日が年内最後の会合です)。議事録は、貿易政策に伴うリスクに対する懸念が持続していることも示していました。

 ○パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、最近の流動性の逼迫が再燃することを回避するために、FRBは短期国債の買い入れを進める意向であるが、これは量的緩和(QE)の再開ではないとの見方を示しました。

 ○FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)は、経済は「わずかなペースから緩やかなペース」で拡大するとの見通しを示し、景気の減速を示唆しました。

 ○欧州中央銀行(ECB)ではドラギ総裁による最後の政策理事会が開かれ、政策金利は据え置かれました。ECB総裁は再任なしの8年任期で、後任には前国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏が就任します。

 ○スウェーデン中銀のリクスバンクは政策金利を-0.25%に据え置きましたが、2019年12月の金融政策決定会合で5年間続いたマイナス金利から脱却するとの見通しを示しました。ウクライナ中央銀行は今年4回目となる利下げを行い、政策金利を16.5%から15.5%に引き下げました。トルコ中央銀行はインフレ率の低下を受けて、政策金利を2.5%引き下げて14.0%としました。ノルウェー中央銀行は政策金利を据え置きました。

 ○FOMCは事前予想通り、今年に入ってから3度目となる0.25%の利下げを(8対2で)決定しました(2011年~2018年まで10回利上げを実施し、2007年~2008年にかけては12回利下げを実施)。今回の声明文では景気拡大を維持するために「適切に行動する」という文言が削除され、追加利下げに対するハードルを引き上げたことが示されました。株式市場の反応はすぐには見られず、国債利回りはわずかに低下しましたが、最終的に株価は上昇し、S&P 500指数は30日に終値での最高値を更新して引けました。米国の利下げを受け、米ドルとのペッグ制を採用している香港が追随し、香港金融管理局(HKMA)は政策金利を0.25%引き下げました。

 ○日銀の金融政策決定会合では金利は据え置かれましたが、将来の利下げの可能性が示唆されました。

●企業業績

 ○2019年第3四半期の利益予想は、第1四半期や第2四半期と同様に下方修正されており、決算発表の序盤も前2四半期と同様に下方修正後の予想は上回っているものの、修正前の予想には届いていません。具体的には、第3四半期の利益予想は2018年末から9.6%、2019年6月末(第3四半期の初め)から5.7%、それぞれ引き下げられています。現時点での第3四半期決算の状況は以下の通りです。

  →これまでに、S&P 500指数構成銘柄の67.1%、時価総額ベースで73.5%に相当する339銘柄が決算発表を終えています。

  →→339銘柄のうち、255銘柄(75.2%、過去平均は66.6%)で利益が予想を上回りました。

  →→売上高に関しては334銘柄中202銘柄(60.5%)が予想を上回りました。

 ○現時点において、第3四半期の全体の利益は前期比で0.3%の若干の減益、過去最高だった前年同期比で3.3%の減益が見込まれています。

  →2019年第4四半期の利益は第3四半期を上回る見通しですが、過去最高には届かず、前期比で2.5%の増益、落ち込んだ2018年第4四半期と比べると17.2%の増益となる見通しです。

  →2019年は前年比で5.0%の増益、2020年は同11.5%の増益が見込まれています。

  →株式数による影響も続いており、決算発表を終えている企業のうち、株式数の減少によってEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄(つまり、利益の総額は横ばいながら、1株当たりでは4%以上上昇)の割合は24.7%となりました。この割合は、2019第2四半期は24.2%、2018年第3四半期は17.7%で、最近で最も高かったのは2016年第1四半期の28.2%でした。

※「今年15回目となる最高値更新を記録 (3)」へ続く

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