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【市況】S&P500 月例レポート ― 今年15回目となる最高値更新を記録 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年10月

●市場の関心は企業決算に集中

 1970年代中期に活躍したKC & ザ・サンシャイン・バンドのかつての大ヒット曲「That's The Way(I Like It)」では、“that's the way, uh-huh I like it, uh-huh, uh-huh (そうそうこの調子で行こう…すごくいいね…)”と歌われていました。この曲は全く私の趣味ではありませんが、10月の市場関係者の耳にはひどく心地よく響いたことでしょう。

 S&P 500指数は今年に入ってから14回目と15回目となる終値での最高値更新を記録し、2016年11月の大統領選挙以降での最高値更新は105回を数えました。10月は世界的に政治関係の話題が大きく取り上げられましたが、米国では決算発表に市場の関心が集中し、正式署名の時期と場所はさておき、対中貿易協議で「第1段階」の合意に達したことや米連邦公開市場委員会(FOMC)による今年3回目となる利下げ決定、英国の3度目となるEU離脱期限の延期、そして景気後退を示唆する指標が見当たらないことなどは、ほとんど材料視されませんでした。

 市場は活発な取引という投票行動を通じて、S&P 500指数と投資家に勝利をもたらしました。結論として、10月時点での株式市場の年初来の上昇率は21.17%(配当込みのトータルリターンは23.16%)となりました。一部では11月のポジションを手仕舞う声も聞かれました(強欲な投資家でさえ休暇を取るか、万が一に備えて短期の金融商品に幾らか残しておくことを検討しているようです)。今のところ全員が楽観主義者となっているか、少なくともそのようだと言われており、通常より低調な売買が続き(驚くほどです)、ボラティリティも低くなっており、下半期の値幅(高値と安値の差)は8.1%(今年上半期は21.3%、2018年は25.3%)に縮小しています。しかし、ここにきて再び過去最高を更新(あるいはその近辺で推移)しています。

 過去の実績を見ると、10月は57.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.17%、下落した月の平均下落率は4.72%、全体の平均騰落率は0.41%の上昇となっています。11月は60.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.87%、下落した月の平均下落率は4.25%、全体の平均騰落率は0.72%の上昇となっています。

 今後のFOMCのスケジュールは、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日、3月17日-18日、4月28日-29日、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、そして2021年が1月26日-27日となっています。

●主なポイント

 ○今年の10月はいわゆる「大虐殺」と呼ばれるような暴落は起きませんでした。S&P 500指数は今年に入ってから14回目と15回目となる終値での最高値更新を達成しました(2016年の大統領選挙以降では105回を記録)。10月の株式市場は2.04%上昇しました(9月は1.72%上昇、8月は1.81%下落)。政治面では再び弾劾調査が浮上してきましたが、すでに下方修正されていた事前予想を上回る決算発表が相次ぎ、貿易問題もどうやら良い「段階」へと進んでいるように思われる中、市場では神経質な動きや警戒ムードが一部で見られたとはいえ、楽観的な見方が支配的でした。結論として、株式市場の年初来の上昇率は21.17%となりました。一部では11月のポジションを手仕舞う声も聞かれました(強欲な投資家でさえ休暇を取るか、万が一に備えて短期の金融商品で幾らか残しておくことを検討しているようです)。

 ○10月のS&P 500指数は2.04%上昇しました(配当込みのトータルリターンは2.17%)。過去3カ月のリターンは1.92%(同2.43%)、年初来のリターンは21.17%(同23.16%)と、年初から10カ月では2013年の23.16%上昇以来の最高の上昇率を記録しました(2013年の年間騰落率は29.60%の上昇)。

 ○2009年3月9日に始まった強気相場の上昇率は349%(年率換算で15.15%)、配当込みのトータルリターンはプラス461%(同プラス17.58%)となりました。

 ○FOMCは事前予想通り、今年に入ってから3度目となる0.25%の利下げを(8対2で)決定しました(2011年~2018年まで10回利上げを実施し、2007年~2008年にかけては12回利下げを実施)。今回の声明文では景気拡大を維持するために「適切に行動する」という文言が削除されており、追加利下げに対するハードルを引き上げたことが示されました。これに対し株式市場の反応は薄く、債券市場では利回りがわずかに低下しました。

 ○月中に1ポンド=1.30ドルを突破する場面もあった英ポンドは、9月末の1ポンド=1.2291ドルから1.2928ドルに上昇し(2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル、2016年末は1.2345ドル)、ユーロは9月末の1ユーロ=1.0900ドルから1.1154ドルに上昇しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は9月末の1ドル=108.05円から108.02円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は9月末の1ドル=7.1485元から7.0387元に上昇しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は9月末の1バレル=54.31ドルから54.14ドルに下落して月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、9月末の1ガロン=2.737ドルから2.692ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は9月末の1トロイオンス=1,480.50ドルから1,515.40ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は9月末の16.24から13.22に下落して月を終えました。月中の最高は21.46、最低は12.27でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ○第3四半期の利益は、予想が年初から9.6%下方修正されていましたが、新たに引き下げられていた事前予想を上回りました(2019年第2四半期の7.1%下方修正されたEPS予想と同様)。利益が予想を上回った銘柄の割合は全体の75.2%(過去平均は67%)、売上高が予想を上回った銘柄の割合は60.5%でした。

  →第3四半期の利益予想は、期初来で1.9%、2018年末からは9.6%引き下げられました。現在は前期比で0.3%の減益、過去最高となった2018年第3四半期からは3.3%の減益が予想されています。

  →第4四半期に関しては楽観ムードが続いています。同四半期の利益予想は2019年9月からは2.8%、2018年末からは9.4%引き下げられています。好調な年末商戦を背景に前期比では2.5%の増益が見込まれており、第4四半期としては過去最高を記録する見通しです(ただ、それでも過去最高を記録した2018年第3四半期には届きません)。

  →2019年は前年比で5.0%の増益が見込まれ、大統領選挙がある2020年に関しては11.5%の増益を市場は夢見ています。

 ○第3四半期の自社株買いのうち59.3%が発表され、合計額は同銘柄ベースで前期比3.5%増、前年同期比で4.3%減となっており、第3四半期の自社株買い額は1,710億ドルあたりに落ち着くとみられます。

  →1,700億ドルあたりであれば、株式(買い)を支えるには十分で、株式数の減少によりEPSの押し上げにつながると「期待」しています。本稿執筆時点で、株式数の減少によりEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄の割合は24.7%で、2019年第2四半期は24.2%、2018年第3四半期は17.7%でした。

 ○第3四半期の設備投資のうち59.4%が発表され、合計額は同銘柄ベースで前期比2.0%増、前年同期比で2.6%増となっています。

 ○第3四半期の現金配当は過去最高を付け(1株当たり14.80ドル、合計1,232億ドル)、支払済みおよび宣言済みの配当率に基づくと、第4四半期および通年で再び過去最高を記録しそうです。

 ○ビットコインは9月末の8,265ドル(8月末は8,534ドル)から上昇して9,229ドルで月を終えました。月中の最高は10,022ドル、最低は7,447ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ○1年後の目標値はS&P 500指数が3,316(現在値から9.2%上昇、9月末時点の目標値は3,305)、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は29,380ドルとなっています(同8.6%上昇、同29,715ドル)。

※「今年15回目となる最高値更新を記録 (2)」へ続く

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