【特集】新成長ステージへGO! 10年超ぶり最高益に増額「大復活6銘柄」 <株探トップ特集>
米中摩擦の逆風環境下、今3月期通期業績見通しを上方修正した企業もある。その中で10年以上の時を経て、過去最高利益を更新が見込まれる銘柄にスポットライトを当てた。
―下方修正相次ぐ中で輝き放つ、10年以上の雌伏期間を経て今飛び立つ銘柄はこれだ―
下方修正の嵐が吹き荒れた3月期決算企業の上期(4~9月)決算発表シーズンが終わった。10月1日から11月15日に20年3月期の業績見通しを修正した企業を調べたところ、経常利益予想を引き下げた企業は481社に上った。5社に1社が下方修正した計算だ。米中貿易摩擦を発端とした世界経済の減速という逆風にさらされ、主力製造業を中心に通期計画を見直す企業が続出した。一方、こうした逆風下で上方修正に踏み切った企業は昨年より2割少ない264社だった。今回は希少ともいえる上方修正銘柄のうち、10年以上ぶりに過去最高益を塗り替える見通しとなった“大復活”企業に注目。長い雌伏期間を経て、新たな成長ステージを走り出す企業群にスポットライトを当てた。
●製造業に強烈な向かい風、内需は増益基調キープ
「株探」集計では、15日までに発表した3月期決算企業2302社の20年3月期上期(4~9月)業績は経常利益ベースで前年同期比10.1%の減益となり、4%台だった第1四半期から減益幅が広がった。米中対立の長期化による中国をはじめとする設備投資需要の失速が輸出関連企業を直撃した形となった。業種別では、電気機器や機械、輸送用機器といった製造業のほか、原油価格の下落が響いた石油元売りのマイナスが大きく、足もとの業績低迷や先行きに対する警戒感から通期計画を下方修正する企業が相次いだ。
一方、旺盛なシステム関連投資ニーズを取り込んだIT関連企業、消費税増税前の駆け込み需要が追い風となった小売業、燃料費の低下で採算が改善した電力・ガス、受注環境が良好な建設業など、内需系では増益を達成する企業が多くみられ、上方修正に踏み切った企業も目立つ。
今回紹介する最高益更新の間隔期数が大きい企業は、利益成長が長期停滞を脱した企業といえ、成長路線への復帰が期待される。買い一巡後に利益確定売りに押されている銘柄もあるが、押し目買い候補としてマークしておきたいところだ。以下では、10月1日から11月15日の期間に20年3月期の経常利益予想を上方修正した264社の中から、上方修正によって10年以上ぶりに最高益を更新する見通しとなった6社をリストアップし、最高益更新の間隔期数が多い順に紹介していく。
●ヨコオは19年ぶりの最高益を奪還へ
最高益の間隔期数が最も大きいのはヨコオ <6800> 。世界トップクラスの技術を持つ車載アンテナを主力とし、回路検査用コネクターや医療用微細精密加工部品などをグローバル展開している。12日に発表した上期(4~9月)決算は非メモリー分野向けの半導体回路検査用コネクターを中心に好採算製品の受注が好調で、経常利益が前年同期比26.9%増の22億1100万円に伸びて着地。業績好調を踏まえ、20年3月期の経常利益予想を従来の37億円から39億円に上方修正し、01年3月期に記録した過去最高益を19年ぶりに塗り替える見通しとなった。同社は前期にADAS(先進運転支援システム)・自動運転・5Gなど先端技術に対応するアンテナの開発に向けた電波測定施設を設置したほか、5Gデバイス検査用プローブカードを開発するなど、成長分野への投資に余念がない。また、生産合理化に向けた設備投資にも積極的であり、中期的な成長期待は大きい。
●松屋フーズは新メニュー投入や販促が奏功
松屋フーズホールディングス <9887> は10月31日、20年3月期の経常利益が16年ぶりの最高益となる58億円(従来予想は43億5000万円)に拡大する見通しとなったと発表。足もとの売上高が好調に推移するなか、新規出店の減少で出店費用や初期教育費用が想定を下回ることが利益を押し上げる。上期は「創業ビーフカレー」「うな丼」など相次ぎ投入した新メニューの販売が好調だったほか、「ビビン丼対決」「お肉どっさりグルメセット」といった販売促進策も奏功し、既存店売上高は前年同期比で5.6%も伸びた。消費税増税後の10月も既存店売上高は前年比3.6%増と好調を維持し、15カ月連続のプラス成長を達成した。株価は10月28日に約1年10カ月ぶりの高値を形成後、利益確定売りをこなしながら頑強な動きを続けている。
●ミツウロコGは電力販売の好調と燃料価格の下落が追い風
ミツウロコグループホールディングス <8131> が6日に発表した上期業績は売上高が前年同期比12.3%増の1147億8400万円、経常利益は同4.2倍の29億7200万円といずれも上期における過去最高を記録した。電力事業で営業基盤の拡大や他社との提携強化を背景に、電力販売量を伸ばしたうえ、燃料価格の下落でエネルギー事業の採算が改善したことも利益を大きく押し上げた。上期業績が想定以上に好調だったことを踏まえ、20年3月期の経常利益を16年ぶりの最高益見通しに上方修正した。これがポジティブサプライズとなり、株価は8日に1990年以来、約29年ぶりの高値となる1534円まで上昇している。
●PCAは大幅増額修正で指標面に割安感
会計パッケージソフトのピー・シー・エー <9629> は10月28日、20年3月期の経常利益予想を従来の14億9900万円から24億3500万円へ大幅上方修正すると発表。14年ぶりに最高益を更新する見通しになった。上期は「Windows7」のサポート終了や増税前の駆け込み需要といった特需を追い風に、ソフトウェア製品のバージョンアップ収入が大きく伸びた。また、働き方改革に対応した就業管理ソフトが好調だった。今後は急拡大しているクラウドサービスを牽引役として成長を継続する構えにある。株価は8月28日に約19年半ぶりの高値をつけた後、利益確定売りに押される形で調整局面が続くが、足もとでは指標面に割安感が出てきており、見直し機運が高まっている。
●オルガノは半導体投資回復で来期業績にも期待
オルガノ <6368> は電力・半導体関連向けに強みを持つ水処理装置メーカー。上期は前期までに受注した半導体製造装置関連の大型工事が順調に進んだうえ、メンテナンスなど利益率の高いソリューションサービスも伸び、売上高が前年同期比20.4%増の466億7500万円、経常利益は同3.4倍の53億1700万円と業績高変化をみせた。業績好調に伴い、20年3月期の経常利益予想を13年ぶりの最高益に上方修正している。なお、来期以降の収益の源泉となる受注残高は上期に減速がみられたものの、下期は電子産業の投資回復を背景に復調する計画だ。今期末の受注残高は前期実績を上回る見通しであり、成長持続に期待が膨らむ。
●シスロケは高収益基盤に13年ぶり最高益へ
システム・ロケーション <2480> [JQ]は、ビッグデータを活用して開発した車種データベースや中古車価値算出システムなどを自動車リース会社を中心に提供している。システム利用料を主な収益源とし、売上高営業利益率は前期実績で30%を超える高収益企業だ。10月16日、20年3月期の経常利益予想を13年ぶりに最高益を更新する見通しに引き上げた。注力領域の自動車販売会社向け支援システムの需要が伸びるうえ、自動車ファイナンス会社向けシステムも従量課金の増加を見込む。同社はソフトバンク <9434> とトヨタ自動車 <7203> の合弁会社モネ・テクノロジーズが設立した、次世代モビリティサービスを推進する「MONETコンソーシアム」の参加企業に名を連ねており、MaaS関連としてもマークしておきたい。
◇“10年超ぶり”大復活に上方修正した6銘柄
最高益 ┌─ 今期経常利益 ──┐
コード 銘柄 間隔期数 上方修正率 修正後 修正前
<6800> ヨコオ 19 5.4 3900 3700
<9887> 松屋フーズ 16 33.3 5800 4350
<8131> ミツウロコG 16 23.4 5800 4700
<9629> PCA 14 62.4 2435 1499
<6368> オルガノ 13 28.5 8350 6500
<2480> シスロケ 13 15.8 440 380
※単位:経常利益は百万円、上方修正率は%
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