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【市況】労働党政権ならブレグジットは?【フィスコ・コラム】


12月12日に行われるイギリスの総選挙は、与党・保守党の勝利がメーンシナリオ。しかし、2年前の前回は選挙戦の終盤に野党・労働党が激しく追い上げています。現時点で政権交代は想定しにくいものの、シミュレーションは必要かもしれません。


イギリスの欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)は、10月末の期限直前に双方の合意に達しました。メイ前政権同様に行き詰るとみられていたので、サプライズとなりました。それを受け、ジョンソン首相は12月12日の総選挙実施に関する法案を議会に提出し、野党・労働党を含む賛成多数で可決。ブレグジットの進展や同首相の個人的な人気を背景に、保守党が単独過半数を獲得できるかが焦点です。


コービン党首率いる労働党の左派寄りの政策が受け入れられるとは想定しにくいため、保守党の勝利が見込まれています。もっとも、2年前の前回選挙では選挙戦序盤の支持率調査で保守党が40%と、20%程度の労働党を大きく上回っていました。しかし、保守党の社会保障政策に関し、特に高齢者介護に関する提案が介護費用の自己負担を増やすとして有権者の強い反発を買った経緯があります。


どの選挙も結果が出るまではわかりません。2年前も、当初は独走態勢とみられた保守党は10議席以上減らし、逆に労働党は30議席増。終わってみれば、得票率は保守党の42%に対し、労働党は40%と僅差でした。各党が過半数を下回るハングパーラメントとなったため、メイ首相は民主統一党(DUP)の協力を得なければならず、政権基盤の弱さがブレグジットを巡る混乱を招きました。


労働党が提案しているEU離脱を問う2度目の国民投票が、支持を広げる可能性もあります。実際、その件に関してイギリスの世論は真っ二つに割れたままで、前回棄権した有権者が投票することも十分考えられます。保守党が過半数を獲得すれば、ブレグジットはこのまま進むでしょう。ただ、前回同様にDUPとの連携が必要になるなら、来年1月のEU離脱に遅れが生じるシナリオもありえます。


そして、仮に労働党が政権を奪還したらどうなるでしょうか。公約どおり2回目の国民投票を行った結果、やはり「離脱」派が勝利しても、ジョンソン首相が提案したEU離脱合意案は再修正を加えられ、「コービン首相」がソフト路線の離脱案でEUと協議を進める可能性があります。逆に、「残留」派が勝利したら、1回目の投票ではなく2回目の投票の結果を優先する意義について説明責任が生じることになるでしょう。


つまり、労働党政権となった場合、ブレグジットは逆戻りが予想されます。保守党と労働党のどちらの勝利がましかといえば、ジョンソン政権の再任の方がより混乱は少ないと言えそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

 提供:フィスコ

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