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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「眠れぬ暑い夜と株式市場」

株式評論家 富田隆弥

◆梅雨寒(つゆざむ)から一転、酷暑で眠れぬ日が続く。甲子園(高校野球)が始まった6日に日経平均株価は2万110円まで下げ、3日間で1430円幅(-6.6%)という急落だ。NYダウ平均も5日まで5日続落(-6.2%)と荒れ、為替(ドル円)は1日の109.31円から7日に105.53円まで円高に振れた。さらに大きく動いたのは日経平均のオプション(8月限)で、1日に1円だった「195プット」は6日に高値110円をつけた。わずか2~3日で110倍の大化けだ。SQ(9日)が迫り行使価格の遠いプットは紙切れ寸前となっていたが、日経平均の急落で大きく息を吹き返す局面がみられた。

◆荒れた原因はむろん甲子園ではなく、例によってトランプ米大統領のツイート(対中制裁関税第4弾の発動の表明)だが、夏休み(バカンス)を前にして利益確定売りが出たことも否めない。ただ、理由はともかく株式先物や為替(FX)、オプションなどデリバティブ取引をされている投資家は眠れぬ日々が続いたことだろう。

◆デリバティブ取引には「損失回避のロスカット」が付きもので、相場が動くと損失回避の注文により相場をさらに加速させる習性がある。お正月休みの最中に為替が104円台に急騰したのはその一例だが、いまはカネ余りでデリバティブ市場に相当のマネーが流れているので、どのマーケットも上げるにしろ下げるにしろ大きく振れやすいことは覚悟しておきたい。

◆日経平均は2万110円まで下げ、チャートは7月18日安値の2万993円や6月4日安値の2万289円を割り込み「陰転」を暗示。先行き2万円割れから昨年12月の安値1万8948円を模索する可能性がある。ただ、6日までの急落でテクニカルに底値信号が多く出ており、目先はリバウンド(アヤ戻り)も想定される。主な底値信号は、

(1)人気偏る月曜日の急落
(2)三空窓開けの突っ込み(7月31日、8月2日、8月5日)
(3)短期(6日線)騰落レシオ40%に低下
(4)短期(9日)RCIが-93%に低下
(5)6日安値の2万110円は変化日安値(7月25日高値→日足9本目、7月12日高値→17本目)
(6)5日の空売り比率が51.5%と最高示現など。

 また、(7)NYダウは7日に2万5440ドル安値をつけるが、そこで200日移動平均線、52週移動平均線、年初からの下値抵抗線、日足雲下限などのある厚い下値の節に差し掛かっている。

◆こうした底値信号もあり目先リバウンドが想定され、日経平均ならネックライン(7月18日安値の2万993円)の「2万1000円前後」を、NYダウ(8日終値2万6378ドル)なら半値戻し「2万6400ドル」を試してもおかしくない。

◆とはいえ、日足チャートに一旦は亀裂を入れた相場だ。戻りは“アヤ戻り”であり上値に多くの節が控えているだけに、好転の兆しをみせるには少なくとも25日移動平均線の突破が必要だ。日経平均なら2万1300円台、NYダウなら2万6800ドル台がポイントになる。

◆カネ余りの需給相場が続いているので、これまでのように25日移動平均線を突破して再び上値挑戦に向かう可能性もある。だが、25日移動平均線を抜けずに再び軟化するなら「二段下げ」リスクが台頭する。NYダウは長らくマネーバブル相場を演じてきただけに、下値の厚い節を割り込むなら、一層の警戒を要することを頭に入れておきたい。

◆需給相場で乱高下するマーケットだが、だからこそ「流れに従う」ことが大事だろう。日足チャートにトレンド(抵抗線)を引きながら対応していきたい。

(8月8日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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