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【特集】三栄コポ Research Memo(1):家具・家庭用品のOEM事業が企画開発力活かし業績回復予想

三栄コ <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

三栄コーポレーション<8119>は、70年以上の歴史を持ち高付加価値品を主に取り扱う多機能な商社である。生活関連用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売りまでのサプライチェーンを幅広く手掛け、海外には19ヶ所の拠点、国内直営小売店84店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM調達など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。家具・家庭用品事業(売上高の46.6%)、服飾雑貨事業(売上高の34.8%)、家電事業(売上高の13.7%)の3事業が柱である。

1. 事業内容
同社最大の事業セグメントが、家具・家庭用品事業である。この事業は、OEMの比率が高く(売上高の約93%)、良品計画に代表される大手顧客の事業の伸びとともに成長してきた。2013年3月期に17,007百万円だった売上高は2017年3月期に27,431百万円まで成長、直近は欧州顧客の大口のスポット受注のはく落や米国量販店向けの縮小などが影響して減収傾向だが、今後も大黒柱であることは間違いない。成長著しいブランドとして、自社のeコマースブランド「MINT」がある。2019年3月には、マレーシアで家具・インテリアの自社工場(約4,000平方メートル)が本格稼働を開始した。自社ブランド商品の製造はもちろん、ODM提案が図れる開発拠点としても活用していく方針である。

服飾雑貨事業ではブランド事業の存在感が高く(売上高の約56%)、従来収益性の高いセグメントである。同社最大のブランドであるビルケンシュトックはドイツで240年以上の伝統がある機能美に優れたコンフォートサンダル・シューズブランドであり、1万円前後の価格帯にもかかわらず根強いファン層に支持されている。直営の63店舗とeコマースで販売され、長く使う顧客が多い商品だけに自社運営のアフターサービスも充実している。キプリングは1987年にベルギーで誕生したナイロンバッグのブランドであり、キプリングモンキー(猿のマスコット)とともに遊び心のあるカジュアルブランドとして世界的に有名である。ブランドコンセプトを近年一新し、ターゲットをミレニアル世代にして、ブランドの若返りを図っている。直営10店舗(銀座など、アウトレット含む)、全国有名百貨店(約60店舗)、空港免税店、ECモールなどでの取り扱いを行い、販路拡大に成功している。

2. 業績動向
2019年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比4.9%減の42,513百万円、営業利益が同55.3%減の752百万円、経常利益が同54.9%減の827百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同76.5%減の195百万円となり、減収減益となった。売上高に関しては、欧米向けのOEM事業(家具・家庭用品)の販売が大幅に減少したことが減収の大きな要因となった。また欧州向け取引は、既存取引先の株主変更に伴う買付方針の変更や大型入札案件を失注したことによるものである。服飾雑貨事業及び家電事業の売上高は堅調に推移した。利益面おいて大幅な減益となった理由は海外OEM事業減益、ブランド事業減益、管理基盤強化、の3点に分類できる。ブランド事業に関しては、1)(株)ベネクシー(主にビルケンシュトック小売)減収と経費増による赤字決算、2)家具eコマース事業における物流費等コスト増、3)新規ブランドを中心に赤字幅拡大、などが減益要因となった。全社管理に関しては、新基幹システム導入による経費の増加があった。

2020年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比1.1%増の43,000百万円、営業利益が同33.0%増の1,000百万円、経常利益が同20.9%増の1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同155.4%増の500百万円と増収増益を予想する。売上高に関しては、増収をけん引するのは家具・家庭用品事業となる見込みだ。同セグメントの大半を占めるOEM事業において、自社開発力を応用したODM提案を行い、新規顧客を開拓する。家電事業も引き続き増収を見込む。家電-ブランド事業においても理美容家電が好調な他、海外販路開拓も積極化する。営業利益に関しても、増益をけん引するのは家具・家庭用品事業となる見込みだ。北米の不採算事業一時撤退の効果があり、利益率が改善する見込である。服飾雑貨事業において減益となるのは、OEM事業における新規事業の開拓のための先行投資が必要なことおよびビルケンシュトックの収益回復に時間を要すること等が要因だ。総じていえば、OEM事業では付加価値の向上(ODMによる企画提案等)が求められ、ブランド事業では立て直しが求められている。より強靭な事業基盤の確立に向けて、変革を推進する年になる。

3. 成長戦略・トピック
同社では、「中長期で傾注していく取り組み」として4点挙げている。OEM事業においては、強みである調達力をさらに磨き上げ、価格競争力を強化する(取組1)。同社は海外19拠点を持ち、特に60年以上東南アジア、東アジアで調達活動を行ってきたネットワークは強みとなっている。協力工場に常駐する等、生産管理や検品を支援するのが同社の特長である。今後はさらに価格競争力を強化する。また、開発力を強化し、国内外問わずODM提案・販路開拓を行う(取組2)。開発力強化の戦略拠点と位置付けるのが、中国にある自社家電工場や2019年3月に本格稼働したマレーシアの家具インテリア製造工場である。ブランド事業においては、自社ブランドの商品開発力やeコマース販売力の強化、海外を含めた卸売り販路の拡充(取組3)を行う。eコマースブランド「MINT」、調理家電の「VitantonioR」、高機能オーラルケアの「ION-Sei」などが対象となる。また、ブランド小売事業においては育成途上およびブーム減速などの影響で損失計上に陥るものもあり、小売事業における適正なオペレーションコストの追求とサービス事業の強化(取組4)を行う。

4. 株主還元策
同社では、安定的かつ継続的な配当実施と企業体質強化のための内部留保を踏まえつつ、配当性向30%程度を目途に配当する方針である。過去3年間(2016年3月期~2018年3月期)は配当金年160円を継続してきた。2019年3月期も配当金年160円(中間60円、期末100円)を維持した。親会社株主に帰属する当期純利益が前期比76.5%減となったため、配当性向は192.8%と高くなった。なお、同社は過去22年間連続して、増配または配当維持をしている。商社という業種の特性上、業績の変動は大きいが、業績が悪い時でも安定した株主還元を行う企業姿勢は高く評価できる。

■Key Points
・“世界から世界に良いものを”がコンセプトの多機能商社。OEM事業とブランド事業が両輪
・2019年3月期は減収減益。欧米向け家庭用品のOEM事業の売上減少及び子会社ベネクシー(主ブランドはビルケンシュトック)の減速等が影響
・2020年3月期業績予想は売上高430億円、経常利益10億円。家具・家庭用品事業が企画開発力活かし業績回復予想。ブランド事業は抜本的な立て直しを実施予定
・OEM事業では開発力を活かしたODM提案で国内外販路開拓。ブランド事業では効率的な小売オペレーションを追求

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《MH》

 提供:フィスコ

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