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【市況】S&P500 月例レポート ― 協調できないが、離れても生きられない (3) ―


●世界の株式市場

 ○世界の株式市場は4月の3.11%の大幅上昇(3月は0.78%上昇)から5月は揃って下落に転じ、6.20%の大幅下落となりました。米国市場も下落に転じ、5月はグローバル市場をアンダーパフォームしました。米国市場の6.66%下落を除外すると、グローバル市場は5.66%の下落でした。過去3ヵ月間では、グローバル市場は2.53%の下落となり、米国の1.80%下落を除くと、3.35%の下落でした。年初来では、グローバル市場は7.96%上昇しましたが、米国の10.02%の上昇を除外すると、5.68%の上昇でした。

 過去1年間では、グローバル市場は4.35%の下落となり、米国の0.52%の上昇を除くと、9.48%の下落でした。より長期的な指標は米国がアウトパフォームしていることを引き続き示しており、過去2年間のグローバル市場は米国(13.54%上昇)を含めれば5.63%の上昇、米国を除くと2.35%の下落、過去3年間では23.33%の上昇、米国(33.65%)を除くと12.97%の上昇でした。

 ○5月にS&Pグローバル総合指数の時価総額は3兆4,000億ドル減少しました(4月は1兆6,370億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は5月に1兆4,470億ドル減少し(同5,310億ドル増)、米国市場は1兆9,530億ドル減少しました(同1兆1,060億ドル増)。

 ○5月のまとめ

  ・世界の株式市場は5月に6.20%下落しました。米国市場は6.66%下落し、米国を除く世界市場は5.66%下落しました。過去3ヵ月間では、世界市場は2.53%下落、米国の1.80%の下落を除くと、3.35%の下落でした。年初来では、世界市場は7.96%上昇し、米国の10.02%の上昇を除けば、5.68%の上昇となります。過去1年間でみると、世界市場は4.35%下落し、米国の0.52%上昇を除くと、9.47%の下落となりました。

  ・新興国市場は5月に6.26%下落し、過去3ヵ月間では2.92%下落、年初来では5.21%上昇、過去1年間では8.77%の下落となりました。

  ・先進国市場は5月に6.19%下落(米国を除くと5.48%下落)、過去3ヵ月間では2.48%の下落(同3.46%下落)、年初来では8.29%の上昇(同5.82%上昇)、過去1年間では3.84%の下落(同9.69%下落)となっています。

 ○11セクターのうち上昇したセクターがない中、セクター間のリターンのばらつきは縮小しました(4月は11セクター中8セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(不動産、1.03%下落)と最低のセクター(情報技術、8.59%下落)の騰落率の差は7.57%で(過去1年間の平均は7.34%)、4月の8.45%から縮小しました。年初来の騰落率の差は12.51%(4月は20.13%)となりました。

 ○新興国市場は4月に1.98%上昇した後で6.26%の下落となりました。過去3ヵ月間のパフォーマンスは2.92%の下落、年初来では5.21%上昇、過去1年間では8.77%の下落となっています。過去2年間の騰落率は2.01%の上昇、過去3年間では21.72%の上昇となりました。

  ・5月は23市場のうち5市場が上昇しました。4月は15市場でした。上昇率が最も高かったのはギリシャで5月に4.90%上昇、年初来では27.80%上昇しました。2番目はロシアで、5月は3.13%上昇、年初来は20.79%上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのは中国で、5月は12.85%下落、年初来では4.07%の上昇となっています。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはコロンビアで、5月は9.23%下落、年初来では9.34%の上昇となっています。


 ○先進国市場は5月に全体で6.19%下落し、米国を除く先進国市場のパフォーマンスは5.48%の下落でした。過去3ヵ月間のパフォーマンスは2.48%下落(米国を除くと3.46%下落)、年初来では8.29%上昇(同5.82%上昇)、過去1年間では3.84%の下落(同9.69%下落)となりました。過去2年間の騰落率は6.06%の上昇でしたが(同3.47%下落)、過去3年間では23.54%の上昇(同10.84%上昇)でした。

  ・5月は25市場のいずれも上昇しませんでした。それに対して4月は24市場が上昇しました。下落率が最も低かったのはオーストラリアで5月は0.24%下落、年初来では11.80%の上昇となっています。2番目はスイスで、5月の下落率は0.91%、年初来では11.82%の上昇となりました。パフォーマンスが最も悪かったのはルクセンブルグで、5月は18.40%下落、年初来では17.64%下落しています。次いで振るわなかったのがオーストリアで、5月は10.70%下落、年初来では5.32%上昇となりました。

   ・注意すべき点として、カナダは4.05%下落(年初来では12.92%上昇)、ドイツは8.01%下落(同4.60%上昇)、日本は4.15%下落(同2.51%上昇)、英国は6.74%下落(同5.95%上昇)となりました。

●The S&P 500

 この1ヵ月で状況は様変わりしました。S&P 500指数は終値ベースの最高値を更新して4月を終えましたが、5月は調整局面入りへの道のりを3分の2ほど進んだところで終わり(月間で6.58%下落)、週間ベースでは4週連続で下落し(4週間で6.57%下落)、2014年10月以来の出来事となりました。ちなみに当時は4週間で6.15%下落し、また5週連続下落は2011年6月の6.80%下落が最後です。

 5月の話題の中心は何といっても貿易問題で、トランプ大統領が総額2,000億ドルの中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げ、さらに3,250億ドル相当の中国製品への追加関税を発動する手続きを開始したことを受け、市場参加者の多くは様子見姿勢を維持しましたが、株価の下落を止めることはできませんでした。この結果、5月は6.58%下落し、月間ベースでは2018年12月の9.18%下落以来、5月としては2010年5月の8.20%下落以来の下落率となりました。貿易と関税は、今や頭痛の種以外の何物でもありません。

 その後、大統領の姿勢はやや変わりましたが(市場の方向は変わっていません)、グロリア・エステファンの歌にある「It Cuts Both Ways(諸刃の剣)」であり、「Can't be together, cannot be apart(協調できないが、離れることもできない)」という歌詞は、まさに米中の相互依存関係を表しています。「5月に売り抜けろ」と物知り顔で言う者もいますが(実際にこれを実行した人がどのくらいいるかは分かりません)、6月に大阪で開かれるG20サミットでトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が行われ、双方のニーズが一致するのを期待する向きが大勢のようです(意見の一致よりも着実で長続きする可能性があります)。いずれにしても、企業経営陣は起こり得る貿易戦争に備えた計画策定に着手していますが(小売り企業や半導体企業は真っ先に公表しました)、もし各社が供給元や生産拠点の移転といった計画を実行に移せば、企業の利益率や結果的に消費者に負担が強いられます。負担がかかれば株価が反応し、それは良い反応ではありません。事態に追い打ちをかけたのは、月末の2件の発表でした。トランプ大統領は、メキシコから米国への不法移民の流入が止まらなければ、全てのメキシコ製品に対して6月10日から5%の関税をかけ、その上、状況が改善しなければ税率を段階的に引き上げると発言しました(交渉の猶予は10日間)。中国側は、中国企業に損害をもたらす「信頼できない」海外企業リストの作成を表明しました。結局、S&P 500指数は過去最高値を更新して終わった4月に対し、5月は調整局面入りへの道のりを3分の2ほど進んだところで月末を迎えました。

 新規株式公開(IPO)も活発でしたが、あまり注目は集まらず、株価が下落した企業もありました。配車サービス大手のUber(UBER)は株価45ドルで株式を公開しましたが、公開価格を上回ることは一度もなく、一時は36.08ドルまで下落し、最終的に月末の終値は40.41ドルでした。4月に上場した同業のLyft(LYFT)もIPO価格の72ドルに対して、57.62ドルで5月を終えました。一方で、植物性由来の代替肉の製造を手掛けるBeyond Meat(BYND)は、IPO価格25ドルから104.12ドルで月末を迎えました。世界各国の金利の低下も大きく報じられました。ドイツ10年物国債利回りは過去最低のマイナス0.21%となり、米国10年物国債利回りも一時2.12%まで低下した後、2017年9月以来の低水準となる2.13%で5月の取引を終えました。4月末は2.51%、2018年10月末は3.16%でした。原油価格は4月末の1バレル=63.38ドルから下落して53.36ドルで月を終えました(2018年末は45.81ドル)。

 6月を展望すると、政治日程が支配的となる模様であり、現時点では「Negotiations-R-Us(交渉と言えば私たち)」と月の名前を変えた方が良いかもしれません。英国では政府首脳の交代が予定されており、メイ首相が6月7日に保守党党首を辞任し、後任の党首が選出されます。これに関連して、欧州連合は「合意はあくまで合意であり」、再交渉は行わない意向であると述べており(合意を受け入れるか、さもなければEUを去るか)、これを受けて、英国政界では「合意なき離脱」との声が浮上しています。

 その後、6月10日には米国によるメキシコからの輸入品に対する5%の追加関税が発動されます。6月28-29日に日本の大阪で開催されるG20サミットで、トランプ米大統領と習近平中国国家主席の会談が予定されており、公けの場での交渉が前向きな個人間の交渉に変わることが期待されます。

 米国では、トランプ大統領とペロシ下院議長の論争が闘争に発展すれば、トランプ大統領が不正疑惑に関する調査協力を拒否していることに対して、議会による措置が協議されることになるでしょう。企業とウォール街の投資家は、貿易・関税面の新たに認識される現実(満ち欠けを繰り返す月のように変化しています)に適応することが必要になり、場合によってはFRBも自身の政策調整に備える必要が出てくるかもしれません。

 S&P 500指数は4月末の2,945.83から6.58%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス6.35%)、2,752.06で月を終えました。4月は3.93%の上昇(同プラス4.05%)でした。同指数は年初来では9.78%(同プラス10.74%)上昇しましたが、過去1年間のリターンは2桁台から1.73%の上昇(同プラス3.78%)まで縮小しています。ダウ平均は4月末の26,592.91から6.69%下落し(同マイナス6.32%)、24,815.04で月を終えました。4月は2.56%の上昇(同プラス2.66%)でした。同指数は年初来では6.38%(同プラス7.54%)、過去1年間では1.65%(同プラス4.05%)上昇しています。

 S&P500指数の日中ボラティリティ(高値と安値の差)は4月の0.56%から1.00%に上昇し、年初来では0.91%となりました(4月は0.86%)。同指標は、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降の最低、平均は1.43%)でした。出来高は4月の前月比11%減の後5%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では1%増でした。年初来では、前年同期比1%減となっています。1%以上変動した日数は、4月の21営業日中1日(上昇)から22日中4日(4日とも下落、1日は2%以上下落)に増加し、年初来では104営業日中16日(上昇が9日、下落が7日)となっています。

 セクター間のリターンのばらつきは拡大し、5月は上昇したセクターは11セクター中1セクターにとどまり、4月の8セクター、3月の9セクターを下回りました。5月のパフォーマンスが最高のセクター(不動産、0.90%上昇)と最低のセクター(エネルギー、11.71%下落)の騰落率の差は12.61%と、4月の11.58%、3月の7.50%から拡大しました。この騰落率の差は年初来では16.43%(4月の23.75%から縮小、2018年通年は25.19%)となっています。

 5月はリスクの広がりと国内主体の事業構成が支援材料となる中、不動産が0.90%と全セクター中で唯一上昇し、パフォーマンスが最高となりました。同セクターは年初来でも17.01%上昇と、パフォーマンスがトップとなっています。公益事業が1.28%の下落でそれに続きました。同セクターも、リスクの拡大と事業が国内にあることが追い風となったほか、多額の借り入れを行っていることから、金利の低下も支援材料となりました。同セクターは年初来では9.43%(S&P 500指数全体と同水準)上昇しています。ヘルスケアセクターも市場をアウトパフォームしましたが、2.55%下落し、年初来では0.58%の上昇と、S&P 500指数のセクターでパフォーマンスが最低となりました。

 原油価格が下落する中(供給過剰が主因)、エネルギーが11.71%の下落で騰落率最下位となり、年初来では1.89%の上昇となりました。情報技術セクターは8.91%下落しましたが、それでも年初来では15.65%、2016年11月の米大統領選以降では57.41%上昇しています。一般消費財は7.73%下落し、年初来では12.42%の上昇、生活必需品は4.00%下落し、年初来では9.21%の上昇となりました。

 5月は値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は逆転しました。5月の値上がり銘柄数は107銘柄(平均上昇率は3.38%)と、4月の359銘柄、3月の305銘柄から減少し、10%以上上昇した銘柄数も4月の67銘柄(3月は20銘柄)から6銘柄(平均上昇率は13.40%)に減少し、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(4月は2銘柄)。

 一方、値下がり銘柄数は396銘柄(平均下落率は9.90%)と、4月の145銘柄、3月の200銘柄から増加し、そのうち10%以上下落した銘柄数も172銘柄(同16.19%)と4月の11銘柄(3月は22銘柄)から増加し、13銘柄(同1銘柄)が25%以上下落しました。

 年初来では、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は縮小したとはいえ、依然として値上がり銘柄数が大幅に上回っています。値上がり銘柄数は383銘柄(平均上昇率は16.45%、4月は458銘柄)で、そのうち261銘柄(4月は371銘柄)が10%以上、80銘柄(同152銘柄)が25%以上上昇した一方、値下がり銘柄数は118銘柄(同44銘柄)で、47銘柄(同18銘柄)が10%以上、13銘柄(同1銘柄)が25%以上下落しました。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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