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【市況】S&P500 月例レポート ― 協調できないが、離れても生きられない (1) ―

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2019年5月
●5月として2010年以来の下落率

 この1ヵ月で状況は様変わりしました。S&P 500指数は終値ベースの最高値を更新して4月を終えましたが、5月は調整局面入りへの道のりを3分の2ほど進んだところで終わり(月間で6.58%下落)、週間ベースでは4週連続で下落し(4週間で6.57%下落)、2014年10月以来の出来事となりました。ちなみに当時は4週間で6.15%下落し、また5週連続下落は2011年6月の6.80%下落が最後です。

 5月の話題の中心は何といっても貿易問題で、トランプ大統領が総額2,000億ドルの中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げ、さらに3,250億ドル相当の中国製品への追加関税を発動する手続きを開始したことを受け、市場参加者の多くは様子見姿勢を維持しましたが、株価の下落を止めることはできませんでした。この結果、5月は6.58%下落し、月間ベースでは2018年12月の9.18%下落以来、5月としては2010年5月の8.20%下落以来の下落率となりました。貿易と関税は、今や頭痛の種以外の何物でもありません。

 その後、大統領の姿勢はやや変わりましたが(市場の方向は変わっていません)、グロリア・エステファンの歌にある「It Cuts Both Ways(諸刃の剣)」であり、「Can’t be together, cannot be apart(協調できないが、離れることもできない)」という歌詞は、まさに米中の相互依存関係を表しています。「5月に売り抜けろ」と物知り顔で言う者もいますが(実際にこれを実行した人がどのくらいいるかは分かりません)、6月に大阪で開かれるG20サミットでトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が行われ、双方のニーズが一致するのを期待する向きが大勢のようです(意見の一致よりも着実で長続きする可能性があります)。

 いずれにしても、企業経営陣は起こり得る貿易戦争に備えた計画策定に着手していますが(小売り企業や半導体企業は真っ先に公表しました)、もし各社が供給元や生産拠点の移転といった計画を実行に移せば、企業の利益率や結果的に消費者に負担が強いられます。負担がかかれば株価が反応し、それは良い反応ではありません。事態に追い打ちをかけたのは、月末の2件の発表でした。トランプ大統領は、メキシコから米国への不法移民の流入が止まらなければ、全てのメキシコ製品に対して6月10日から5%の関税をかけ、その上、状況が改善しなければ税率を段階的に引き上げると発言しました(交渉の猶予は10日間)。中国側は、中国企業に損害をもたらす「信頼できない」海外企業リストの作成を表明しました。

 結局、S&P 500指数は過去最高値を更新して終わった4月に対し、5月は調整局面入りへの道のりを3分の2ほど進んだところで月末を迎えました。

 新規株式公開(IPO)も活発でしたが、あまり注目は集まらず、株価が下落した企業もありました。配車サービス大手のUber(UBER)は株価45ドルで株式を公開しましたが、公開価格を上回ることは一度もなく、一時は36.08ドルまで下落し、最終的に月末の終値は40.41ドルでした。4月に上場した同業のLyft(LYFT)もIPO価格の72ドルに対して、57.62ドルで5月を終えました。一方で、植物性由来の代替肉の製造を手掛けるBeyond Meat(BYND)は、IPO価格25ドルから104.12ドルで月末を迎えました。

 世界各国の金利の低下も大きく報じられました。ドイツ10年物国債利回りは過去最低のマイナス0.21%となり、米国10年物国債利回りも一時2.12%まで低下した後、2017年9月以来の低水準となる2.13%で5月の取引を終えました。4月末は2.51%、2018年10月末は3.16%でした。原油価格は4月末の1バレル=63.38ドルから下落して53.36ドルで月を終えました(2018年末は45.81ドル)。

 過去の実績を見ると、5月は58.2%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.15%、下落した月の平均下落率は4.63%、全体の平均騰落率は0.10%の下落となっています。来る6月は、54.9%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.86%、下落した月の平均下落率は4.37%、全体の平均騰落率は0.69%の上昇となっています。

 今後のFOMCのスケジュールは、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年の1月28日-29日となっています。

●主なポイント

 ○4月に終値ベースの最高値を更新して終わったS&P 500指数ですが、「5月に売り抜けろ」の格言が復活したかのように5月は下落の一途をたどり(6.58%下落)、5月としては2010年(8.20%下落)以来の下落率となりました。貿易・関税問題が再燃し、企業が予想される影響をガイダンスに織り込んだことで、下落は広範囲にわたりました(上昇は107銘柄、下落は397銘柄)。

 ○5月のS&P 500指数は、4月末の2,945.83から6.58%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス6.35%)して2,752.06で取引を終えました。4月は3.93%の上昇でした(同プラス4.05%)。年初来では9.78%上昇(同プラス10.74%)、過去1年間では1.73%上昇(同3.78%)と、4月の2桁台から転落しました。ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は24,815.04ドルで5月の取引を終え、4月末の26,592.91から6.69%下落しました(配当込みのトータルリターンは同マイナス6.32%)。4月は2.56%の上昇(同プラス2.66%)、年初来では6.38%上昇(同プラス7.54%)、過去1年間では1.65%上昇(同プラス4.05%)しました。

  ・足元の強気相場はしばらく前に11年目に入り(筆者のS&P在籍年数は43年目に入りました)、その間の上昇率は307%、配当込みのトータルリターンは404%となりました(年率換算ではそれぞれ14.71%、と17.14%)。

 ○米国10年国債の利回りは4月末の2.50%から低下して2.13%で月を終えました(2018年末は2.69%、2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

 ○英ポンドは4月末の1ポンド=1.3038ドルから1.2633ドルに下落し(同1.2754ドル、同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは4月末の1ユーロ=1.1216から1.1170ユーロに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は4月末の1ドル=111.42円から108.23円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は4月末の1ドル= 6.7348元から6.9065元に下落しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。

 ○原油価格は4月末の1バレル=63.38ドルから下落して53.36ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は4月末の1ガロン=2.972ドルから2.909ドルに下落して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。

 ○金価格は4月末の1トロイオンス= 1,282.70ドルから1,310.20ドルに上昇して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は4月末の13.12から18.71に上昇して月を終えました。月中の最高は23.38、最低は12.74でした(同25.42、同11.05、同14.04)。

 ○S&P 500指数構成企業の97%(時価総額)が2019年第1四半期の決算発表を終えましたが、利益予想は十分に引き下げられていたため(2018年末から7.1%下方修正)、発表を終えた490社の72.9%(過去の実績を見ると67%)に当たる357社で利益が予想を上回り、売上高に関しては487社の57.2%に相当する278社で予想を上回りました。第1四半期の暫定EPSは前期比8.9%増(4月時点では6.1%増)、前年同期比4.4%増(同1.8%増)と推測されます。

 2019年の予想は年初時点から3.8%(4月時点では3.9%)引き下げられています。上半期の引き下げ幅の方が大きく(常に将来の期待は大きくなります)、2020年の予想はわずかに引き下げられています(統計的に無視できる0.6%の下方修正で、4月時点では0.3%の下方修正でした)。2019年は前年比で9.2%増、2020年には前年比で12.0%増となる見通しです(4月時点の見通しはそれぞれ同8.9%増、同12.5%増)。2019年と2020年の2年間では2018年から22.3%増となる見通しで、4月時点の見通しの22.5%増から低下しました。

 ○ビットコインは4月末の5,337ドルから上昇して8,534ドルで月を終えました。月中の最高は9,066ドル、最低は5,348ドルでした(2018年末は3,747ドル、2017年末は13,850ドル、2016年末は968ドル)。

 ○1年後の目標値は、S&P 500指数が3,158(現在値から14.7%上昇、4月末時点の目標値は3,172)、ダウ平均は28,420ドルとなっています(同14.5%上昇、同28,610ドル)。

「協調できないが、離れても生きられない (2)」へ続く

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