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【特集】イチネンHD Research Memo(6):2020年3月期も連続増益を見込む

イチネンHD <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

1. 2020年3月期の業績見通し
イチネンホールディングス<9619>の進行中の2020年3月期は売上高94,000百万円(前期比7.1%増)、営業利益6,350百万円(同1.2%増)、経常利益6,440百万円(同1.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,010百万円(同21.8%減)が予想されている。主力の自動車リース関連事業を中心に各事業で増収を計画し、17期連続の増収・増益を達成する見通しだ。各セグメントにおいて増収を見込んでいるが、かなり堅めの予想と思われ、上方修正される可能性はありそうだ。

セグメント別の施策は以下のように計画されている。

(1) 自動車リース関連事業
リースにおいては、契約車両は依然として小型化傾向にあるが、引き続き以前からターゲットとしている地方市場及び中小口規模の顧客へ新規販売を積極的に行い、契約台数及び契約残高の上積みを図る。また購買原価の低減、走行距離に応じた適切な料金設定、メンテナンスコストの抑制、車両処分方法の多様化を図り利益率の改善を図る。目先的には東京電力グループからの解約も底打ち感が出ており、今後大きく足を引っ張る可能性は小さくなってきたようだ。

自動車メンテナンス受託では、同社の強みである全国の自動車整備工場ネットワークを生かしながら契約台数及び残高増を目指す。特に主要取引先から受託しているカーシェアリング及びレンタカー向けは更新の時期を迎えるため台数増が期待できる。車体修理管理業務については、工場ネットワーク及び新規顧客の拡充によって収益性の改善を目指す。

燃料販売では、引き続き低燃費車の普及により需要全体は減少傾向にあるが、付加価値の高いサービスを提供することで顧客満足度を高め新規顧客の開拓、販売数量の増加を図る。また仕入価格に連動した販売価格の改定を機動的に行うことで収益性を高めていく方針だ。足元では原油価格が上昇傾向にあるため、若干だがマージンが低下する可能性はありそうだ。

(2) ケミカル事業
セールスエンジニアの育成に注力し、特定の専門業界向け販売を強化する。さらに商品開発力の強化及び品質改善に取り組み、付加価値の高い商品の販売に努める。また中国やASEAN地域での拡販も目指していく。消費者向けにおいては、大手小売チェーンと粘り強く交渉を重ねて回復を目指すが、全体としては大きく伸びることは期待できない。

(3) パーキング事業
営業力を強化して契約駐車場数の増加を図る。病院や商業施設等に附帯した駐車場にも積極的に取り組み、安定的に連結営業利益の10%以上を稼ぐ事業に育成する方針。足元では、積極的な営業攻勢の効果も出始めており、少なくとも4~5%程度の伸びは期待できる。

(4) 機械工具販売事業
取扱アイテムの拡充及びオリジナル製品の開発を強化して市場シェア拡大を目指す。また海外市場での拡販にも注力する。商品一括仕入機能や物流センターの集約化、機能強化により収益性を改善する。また前述のように2020年3月期から主要子会社を合併しているので、その効果も徐々にだが具現してくると思われる。予算がかなり固めなので、上方修正のドライバーとなる可能性も強い。

(5) 合成樹脂事業
合成樹脂のリサイクル品をベースに販売を強化する一方で、新規事業の開発及び軌道化に注力する。遊技機メーカー向けでは一貫受注体制を構築して新規顧客の拡大を図るとともに品質改善を進める。科学計測器、セラミックヒーターでは販売網の強化及び新製品の開発力を高める。

遊技機メーカー向けでは引き続き6.0号機向けの需要が期待できることに加え、取引先がそれまでの4社から6社に増えたことで売上増が期待される。しかしその一方で、半導体業界全体の雲行きが怪しくなってきていることから、同業界向けを中心としたセラミックヒーターの需要が低迷することはありそうだ。


将来に向けて農業にも展開
2. 最近の新しい展開・施策について
同社は、2018年3月期から現在にかけて、以下のような新しい事業展開、施策を実行している。これらの展開や施策は、即座に同社の収益に貢献するものではないが、将来に対する布石(投資)と言え、楽しみであり今後も注目する必要はありそうだ。

(1) 農業の進展
同社は将来、農業を事業として行うことを視野に、2016年3月に子会社(株)イチネン農園を設立し、2016年11月にミニトマトの初出荷を行った。さらに2017年1月には、同社と高知県、日高村、JA高知県の4機関で、高知県日高村にてミニトマトの栽培施設を建設し事業規模を拡大、円滑に推進するための連携協定を締結したが、まずは0.5haのハウスでミニトマトの出荷を開始し、さらに2018年8月には第2期工事(2.1ha)が完成したことで、出荷量が大幅に増加した。販路については、大部分をJA高知県経由で出荷しており、レストラン・地元直売所へも一部出荷している。より高く販売できるルートを確保すべく直販先の開拓を続けている。

(2) 機械工具販売子会社の統合
同社は過去数年、機械工具販売会社を積極的にM&Aにより取得し子会社化してきた。しかしなかには仕入先や販売先が重複していた部分も多くあったことから、これら子会社の統合を実施した。前述のように2018年8月にトヨシマの事業を吸収分割により継承したが、2019年4月1日付でトヨシマを存続会社としてイチネン前田、イチネンミツトモ、ゴンドー、イチネンSHOKOの4社を吸収合併し、イチネンMTMに商号変更した。この整理統合により、重複していた仕入先や販売先だけでなくコスト面での整理統合も進め、利益率を改善する方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《MH》

 提供:フィスコ

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