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【特集】クイック Research Memo(3):看護師やエンジニアなど専門職の人材紹介が主力


■事業概要

2. 事業内容
クイック<4318>は「人材」と「情報」にフォーカスし、人材サービス事業、リクルーティング事業、情報出版事業、その他(ネット関連事業、海外事業)の5事業を展開している。2019年3月期の売上高構成比は人材サービス事業とリクルーティング事業で81%、営業利益構成比(連結調整前)では同88%と、この2事業で収益の大半を占めた。しかし最近では、これら以外の事業も活発な動きを見せている。

(1) 人材サービス事業
人材サービス事業では、人材紹介や人材派遣、紹介予定派遣、業務請負などを行っている。主力は人材紹介で、登録型人材バンクとしてサービスを提供、就業希望者と求人企業にとって最適なマッチングを行っている。同社は、医療機関を対象とした看護師、製薬メーカーに向けたMR(Medical Representative:医薬情報提供者)、建設・プラント系エンジニアといった専門職の紹介に強みを持っている。専門職は労働需給がタイトだが、こうした分野でも競争は徐々に激化しており、同社は運営する登録サイトのサービスやコンテンツなどを強化するとともに、若手コンサルタントの育成、能力開発に積極投資をしている。なお、就業希望者の採用が決定した場合、求人企業から成功報酬として紹介手数料を受け取ることになるが、専門性の高い人材の紹介であるため収益性も必然的に高くなる。

人材派遣では、地域特性や得意分野に絞って業務を展開しており、登録した就業希望者の中から求人企業のニーズにマッチした人材を選んで派遣している。人材獲得競争の激化や派遣スタッフの正社員化、旺盛な医療・福祉施設からの求人ニーズなどにより、現在、派遣スタッフの登録数を確保すること自体が大きな課題となっている。これに対して、同社の「派遣deパート」や「メディケアキャリア」などパートタイム派遣や医療福祉分野に強みを持つサイトでは、プロモーションやコンテンツを強化するなど集客力を高める策を講じている。また、保育士派遣・紹介については、2017年9月に立ち上げた専門サイト「ほいとも大阪」が非常に好評、保育園運営サービスに関しては、大阪府で小規模認可保育・認可保育所「こぐまの森保育園」を展開するなど、待機児童問題の解消や女性の活躍もサポートしている。

人材サービスの利益率は、一般に売上高(紹介・派遣人数×紹介・派遣料金)、労務費(派遣スタッフ賃金及び周辺費用)、本社人件費(コンサルタントなど)、広告費(募集費・広告費)などによって決まる。現在、専門職を中心に人手不足が深刻となっているため企業の求人ニーズは強く、紹介・派遣手数料は上昇傾向となっている。一方、同様の理由でスタッフ賃金も上昇傾向にある上、コンサルタントや広告の質を高めて差別化するためのコストも必要である。このように人材サービス業界は、求人ニーズや紹介料金が強含んでいるものの、コストもプッシュ気味という傾向にある。しかも競争が徐々に激化しており、人材サービス会社にとっては厳しい収益環境と言える。しかし、看護師など専門職の紹介を得意とする同社は、専門職に直結する登録サイトの作成やブランディングで先行しており、人材サービス事業の営業利益率が17.3%(2019年3月期)と業界の中でも比較的高い水準を維持している。

(2) リクルーティング事業
求人広告では、求人情報サイトや求人情報誌などに掲載する広告の案内から求人企業のニーズに合わせた広告制作までを行っている。求人広告の取扱いは、Webサイト「リクナビ」やフリーペーパー「タウンワーク」など、(株)リクルートのトップ代理店の1社として、リクルート系メディアがメインとなっている。ほかにも、求人情報検索エンジン「lndeed」の運用による採用支援コンサルティング、採用活動で使用する会社パンフレットの制作、適性検査などの採用支援ツールの提供、採用業務の一部を代行する人事業務請負、入社後の人材教育・育成など様々なサービスを提供している。同社のリクルーティング事業は、リクルートのメディアに自社企画を交えた、採用活動の企画・提案から入社後の育成サポートまでのワンストップサービスや、求人企業が抱える採用・人事の課題解消に向けた高いコンサルティング能力に特徴がある。ちなみに、こうしたサービスは、同社の求人企業向けサイト「採用サロン」に集約されており、新たな顧客開拓にもつながっている。

(3) 情報出版事業
情報出版事業では、子会社の(株)カラフルカンパニーが北陸3県(石川、富山、福井)と新潟県において、地域情報誌の出版やポスティングサービス、「ココカラ。」ブランドで展開するコンシェルジュサービス(対面相談サービス)などの事業を行っている。地域情報誌の出版では、地元情報に特化した幅広いジャンルのフリーペーパーなどに飲食店や求人などの広告を載せて発行するほか、Webやイベントを使ったプロモーション支援も行っている。ポスティングでは折り込みチラシなどを各家庭に配布するサービス、コンシェルジュでは転職や家づくり、結婚を考える人と企業を対面カウンター形式でマッチングさせるサービスを展開している。近年、ポスティングや転職コンシェルジュなど好調な事業が増えている。

(4) その他(ネット関連事業/海外事業)
ネット関連事業では、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」の企画・運営や「HRカンファレンス」など、「日本の人事部」ブランドによるイベントの企画・運営、Webプロモーション支援といったHRビジネス(人事支援ビジネス)関連の事業を行っている。「日本の人事部」は経営者や人事担当者など人事キーパーソン14万人以上が正会員登録しているサイトで、「HRカンファレンス」は人事キーパーソンが集う日本最大規模のHRイベントであり、ともに強いブランド力を誇る。現在、「日本の人事部」サイトを活かした収益モデルの開発が課題となっている。海外事業では、現地の日系企業を対象に、米国では人材紹介や人材派遣、人事労務コンサルティングサービス、中国では人事労務コンサルティングや採用支援サービスなどを行っている。ほかに英国やベトナム、メキシコへも進出し、日系企業向けに人材紹介や人材派遣を手掛けている。現在、国内の少子高齢化や労働人口減少に伴い今後ますます活溌化する企業の海外展開を見据え、グローバル規模での人材流動化に向けた転職支援事業「クロスボーダーリクルートメント」の開発を進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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