市場ニュース

戻る
 

【特集】いちご Research Memo(3):不動産価値向上ノウハウが強み。ストック収益とフロー収益がバランス良く成長

いちご <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

1. アセットマネジメント事業:特徴とトピック
当該事業セグメントは、いちごオフィスリート投資法人(2005年10月上場)、いちごホテルリート投資法人(2015年11月上場)及びいちごグリーンインフラ投資法人(2016年12月上場)などのいちご<2337>がスポンサーを務める上場投資法人に対し、投資対象資産の発掘及び供給による成長支援、運用期間中の運用・管理等を展開している。

いちごオフィスリート投資法人は運用資産残高の増加や保有不動産の価値向上による賃料収入の増加等により、J-REIT最長の17期連続増配を実現している(2018年10月期)。安定的かつ収益成長が見込める中規模オフィスに特化したポートフォリオに特徴がある。2019年2月末日の運用資産は85物件、残高2,030億円、2019年2月期の期中運用フィー粗利1,426百万円(前期比53百万円増)となった。いちごホテルリート投資法人は2015年11月に上場し、その後も運用資産残高を増やしている。ビジネス・観光に優位性のある好立地の宿泊主体・特化型ホテルで構成されるホテル特化型J-REITで、グループの資産運用会社に対する報酬体系を、投資主価値向上に連動するJ-REIT初の完全成果報酬へ移行する等、積極的な運用を行っている。2019年2月末日の運用資産は21ホテル(上場時は9ホテル)、残高507億円、2019年2月期の期中運用フィー粗利547百万円(前期比97百万円増)となった。いちごグリーンインフラ投資法人は2016年12月に東証インフラ市場に新規上場を果たした、グリーンインフラ特化型投資法人である。長期にわたる安定収益を背景に、史上初となる10ヶ年の長期業績予想を行った。2019年2月末日の運用資産は15発電所、残高は114億円、2019年2月期の期中運用フィー粗利85百万円(前期比8百万円増)となった。

同社はスポンサーとして各投資法人の成長サポートを担う。同社が心築を施した物件と各投資法人の保有する物件の入替を行うなど、スポンサー(同社)と各投資法人が連携することで、グループ全体として株主価値を向上させ、安定収益を生み出せるシステムが同社の総合力である。

2. 心築(しんちく)事業:特徴とトピック
心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。心築という言葉は同社の造語であり、「心で築く、心を築く」の信条のもと、同社の技術とノウハウを活用し、1つ1つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することを言う。

心築事業は、保有不動産の賃貸収益(ストック)と譲渡収益(フロー)の両面がある。賃貸収益(ストック)は自己保有資産219,427百万円(2019年2月末)から生み出され、2019年2月期の粗利ベース収益は12,867百万円(前期比1,795百万円増)だった。保有資産の特徴は、物件タイプとしてはオフィス(27%)、ホテル(25%)、商業施設(22%)が多く、地域別には東京(55%)が多く、福岡(16%)と東京以外首都圏(12%)が続く。また物件規模では、10~50億円未満の中規模物件が52%と多く、いちごオーナーズが対象とする10億円未満の物件も19%と一定割合を占める。一方の譲渡収益(フロー)は2019年2月期に順調に伸び、粗利ベース収益で14,893百万円(前期比2,796百万円増)となった。

心築事業の成功のカギは良質な物件の取得である。2019年2月期累計では40物件、50,840百万円(平均1,271百万円/物件)の資産が取得された。2018年2月期累計が93物件、54,300百万円(平均584百万円/物件)だったのと比較すると、総額が減少し、案件規模が大型化した。取得総額に関しては不動産市場が活況を呈しているなかで、前期から減少したものの、依然として高水準を保っている。

含み益(鑑定ベース価格-簿価)は、2016年2月期の28,056百万円から2019年2月期の50,916百万円まで一貫して増加してきた。物件の売買により中身が回転するなかで、この数字から確認できる点としては、不動産マーケットが活況を呈するなかで継続的に資産を取得できていること、同社が“高値掴み”をしていないこと、また心築により物件の価値を高めていることなどである。また、期中売却物件の含み益が約5,900百万円に対して、実際の売上総利益が14,892百万円という結果から、鑑定評価額以上の価格で効果的な売却ができており含み益を超えた売却益を享受できていることが確認できる。

3. クリーンエネルギー事業:特徴とトピック
クリーンエネルギー事業は2012年に開始され、全国58ヶ所の太陽光、風力発電所プロジェクトをグループで開発および運営するまでに成長した。2019年2月時点で同社が保有する発電所のうち売電開始済が40ヶ所、113.06MW(うち、いちごグリーンインフラは15発電所、29.43MW)、開発中の発電所が18ヶ所、57.65MWあり、合計で58ヶ所、170.71MWである。

同社のクリーンエネルギー事業の特徴は、1)遊休地の不動産の有効活用を図ること、2)北海道から九州・沖縄まで全国に分散していること、3)固定買取価格制度のもと20年間の安定した収益が保証されており、36円以上の買取価格が過半であること、4)2MW以下のものから関東最大級の43MW(いちご昭和村生越ECO発電所)まであることなどである。2016年2月期決算で黒字転換して以来、安定収益を生んでいる。

2019年2月期は、発電所の譲渡はなく、売電収入が大幅に増加した。関東最大級のいちご昭和村生越ECO発電所(いちごECOエナジー、43.34MW、売電開始済出力の51.8%)が年間稼働したインパクトが大きい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《SF》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均