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【特集】アクアライン Research Memo(1):2020年2月期も積極的な成長策を実施、8期連続増収、利益V字回復を予想

アクアライン <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

アクアライン<6173>は、1994年に広島で創業された水まわり緊急修理サービスの専門会社である。水まわり緊急修理業界は家屋の築年数経過などを背景に成長しており、同社は全国展開大手3社の一角を占める。エリア別の子会社を競わせる方式で全国展開し、2008年にスケールメリットを生かすために子会社を吸収合併して、本社機能を東京に移した。「水」に関連したミネラルウォーターの販売及びウォーターディスペンサー取扱事業(ミネラルウォーター事業)、業界特性が類似するパーソナルジム事業(ヘルスケア事業)も手掛けている。2015年8月に業界初の上場(東証マザーズ)を果たしている。

1. 水まわり修理市場とビジネスモデルの特長
水まわりの緊急修理の市場規模は約800億円と推定され、住宅の築年数増加による水まわり設備の老朽化などにより、緩やかな成長が続いている。プレーヤーとしては、地場の水まわり工事を行う工務店が高齢化などの要因で廃業が続いており、同社を含む全国展開大手3社が成長する構図である。大手の中では、(株)クラシアン(本社:横浜)の規模が大きく、次いで(株)イースマイル(本社:大阪、東京)、同社は業界3位のポジションであり、唯一の上場企業である。

同社は独自のビジネスモデルで古い体質の水まわり修理業界に変革をもたらしてきた。その特長は、1)集客の仕掛け、2)24時間・全国カバー、3)現場力(エンパワーメント)の3点に分類される。1)集客の仕掛けに関しては、機動的な広告宣伝と業務提携先の充実が推進要因となっている。2)24時間・全国カバーに関しては、自社運営の24時間コールセンターと北海道から沖縄までの全国サービス網で差別化されている。3)現場力(エンパワーメント)に関しては、全サービススタッフ正社員化とIoT搭載車両による動く店舗・倉庫化の取り組みが奏功している。

2. 業績動向
2019年2月期通期は、売上高が前期比10.3%増の5,797百万円、営業利益が同52.4%減の183百万円、経常利益が同52.2%減の184百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同72.5%減の69百万円と増収減益の決算となった。増収に関しては、主力の水まわり緊急修理サービス事業の施工件数が伸びたことが主要因だ。重要施策として取り組んできた業務提携先との関係強化が貢献した。一方で期初の売上高予想6,165百万円には到達できなかった。この要因としては、1)Webサイト企業経由の集客減(ポータルサイトの広告ペナルティ)、2)暖冬により水道管凍結などの修理依頼が減少、3)現場サービススタッフの人員計画の未達、が挙げられる。営業利益に関しては、販売手数料の増加(前期比145百万円増)や広告費の増加(前期比95百万円増)、その他の販売費及び一般管理費(以下、販管費)増加(前期比109百万円増)などがかさみ、減益となった。本来は販売手数料や広告費など戦略的な出費をカバーして余りある売上総利益の増加が想定されていたが、前期比147百万円増にとどまったために、減益となった。

2020年2月期通期の業績予想は、売上高で前期比16.3%増の6,742百万円、営業利益で同46.4%増の269百万円、経常利益で同43.7%増の265百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同141.8%増の166百万円と大幅に業績が回復する見通しだ。今期も全社売上高の9割弱を構成する水まわり緊急修理サービス事業の拡大が基本戦略である。外部環境としては、1)住宅の築年数の上昇による住宅の設備の老朽化、2)1人暮らし世帯及び工具箱のない家庭の増加など、基本的には追い風が吹く。今期波乱がなければ予想である16.3%の成長は十分可能である。各段階の利益は前期からV字回復となるが、本来の同社の実力値からすればやや保守的な予想となった。その理由としては、広告費や人件費に余裕を持たせているためである。ミネラルウォーター事業は安定成長予想、ヘルスケア事業は収支改善も進むことが想定される。前期のような突発的なマイナス要因が重ならなければ、予想を上回る業績が期待できる。

3. 中長期戦略
同社は2019年5月、ユーザーの利便性を向上させるために、携帯アプリから全国対応可能な様々な生活関連駆付けサービスを依頼できるプラットフォームサービス「SOS(「生活おたすけサービス」の頭文字)」を開始する。同サービスのメニューとしては、得意とする水道・水まわり/給湯器や、昨年開始した鍵の紛失・修理、子会社のリモデルコンシェルジュ(株)で行うリフォームはもちろん、ハウスクリーニング、電気工事、太陽光発電関連、害虫駆除、PC修理、データ復旧など多彩だ。水まわりと鍵以外は、専門会社との業務提携でサービスを完結する。ユーザーはApp Store及びGoogle Playから無料でアプリをダウンロードでき、サービスの依頼、手配状況確認、クーポン発行など様々な機能を利用できる。これまでの電話による顧客接点にスマートフォンアプリによる顧客接点が加わり、新たなメニューも追加されたことで、本業の顧客数の増加も期待できる。

4. 株主還元策
同社は株主への利益還元を重要課題としており、配当を実施している。配当の基本方針としては、必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を行うとしている。2019年2月期は、期初は配当金25円、配当性向20.0%の増配を予想していたが、一過性のマイナス要因が重なり減益となったことから、配当金20円(前期も20円)、配当性向58.9%となった。今後も配当額及び配当性向を上げていく方針に変わりなく、2020年2月期は期末の配当金25円、配当性向30.4%を予想する。

■Key Points
・「全サービススタッフ正社員化」や「IoT活用で車両を動く店舗・倉庫化」など独自のビジネスモデルで差別化
・2019年2月期は連続増収となるも減益。Webサイト企業経由の集客減少や暖冬など一過性のマイナス要因が影響
・2020年2月期も積極的な成長策(広告、採用等)を実施し、8期連続増収、利益はV字回復を予想。人員増強が鍵
・全国対応可能な生活関連駆付けサービス「SOS(生活おたすけサービス)」を開始。鍵のトラブル解決「鍵トラ本舗」の運用開始

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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