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【特集】パイプドHD Research Memo(5):2019年2月期決算は予想を若干下回るも懸念はなし

パイプドHD <日足> 「株探」多機能チャートより

■パイプドHD<3919>の業績動向

● 2019年2月期の業績概要
(1) 損益状況
2019年2月期決算は売上高5,419百万円(前期比5.4%増)、営業利益394百万円(同47.5%減)、経常利益390百万円(同47.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益140百万円(同69.3%減)となった。売上高が予想をやや下回った一方で、先行投資等は計画どおり遂行したことから営業利益も期中の予想を下回る結果となったが、概ね想定の範囲内であり大きく懸念される結果ではなかった。なお親会社株主に帰属する当期純利益の減益幅が大きくなっているのは、「美歴」事業の遅れから関連するソフトウェアの減損を特別損失として計上したことによる。

売上高は当初見通しに対して全体で約400百万円下回ったが、その内訳は情報資産プラットフォームが約300百万円、販促CRMソリューションが約300百万円計画を下回った一方で、広告は約200百万円上回り、xTechと社会イノベーションはほぼ計画どおりであった。また営業利益は約100百万円計画を下回ったが、内訳は情報資産プラットフォームが約100百万円、販促CRMソリューションが約50百万円計画を下回った一方で、広告は約50百万円計画を上回った。

(2) 従業員数の推移
同社では後述する2020年2月期を最終年度とする中期経営計画の達成のために、2018年2月期から2019年2月期にかけて積極的に人材の採用(先行投資)を行うと宣言してきた。事実、2018年2月期通期で90名を採用したのに続き、2019年2月期も新卒と中途採用合わせて76名の採用を行ったことから、期末の従業員数は466名と前期末に比べて大幅増(63名増、15.6%増)となった。

(3) セグメント別損益状況
「機能別事業群」の状況は以下のようであった。

a) 情報資産プラットフォーム事業
売上高は3,669百万円(前期比3.1%増)、営業利益は828百万円(同26.9%減)となった。主力の「SPIRALR」の売上高は153百万円増加したが、採用した人員が現場配属後に成果を出すまでに当初想定よりも時間を要するなどの要因により、計画に比べて伸びは鈍かった。この結果、セグメント売上高は3.1%増にとどまり、加えて人員増に伴う経費負担が増加し、増収ながら減益となった。

b) 販促CRMソリューション事業
開発請負の売上高は107百万円増加したが、デジタルCRMの売上高は2018年2月期に獲得した大型のスポット案件の影響もあり229百万円減少した。その結果、セグメント売上高は1,025百万円(同10.2%減)となり、営業利益も45百万円(同71.5%減)となった。

c) 広告事業
既存顧客への多面的提案の実践を行い顧客単価の向上に努めたことなどもあり、スパイラルアフィリエイトの売上高216百万円増、また以前から進めていた東日本旅客鉄道<9020>の広告関連子会社との合弁事業が上向いてきたことなどからネット広告の代理販売が56百万円増加した。この結果、セグメント売上高は482百万円(同130.4%増)と大幅増収となり、営業利益も81百万円(前期は17百万円の損失)と収益性は大幅に改善した。

「分野別事業群」の状況は以下のようであった。

d) xTech事業
IT技術の利活用により企業や団体の垣根を越えて情報を共有することで、業界に革新的なサービスを創出することが期待できる事業を行っている。売上高は163百万円(同1.8%減)、営業損失55百万円(前期は22百万円の損失)となった。主なサービスは以下のとおり。
1) ArchiTech:BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphonyR」
2) BeauTech:顧客と美容師のための電子ヘアカルテアプリ「美歴R」の提供
3) HRTech:企業の育成を革新する「オーダーメイド人材育成代行事業」、2018年3月に厚生労働大臣の許可を得て有料職業紹介事業を開始
4) FinTech:電子地域通貨プラットフォーム

e) 社会イノベーション事業
個々の企業や業界の内部にある問題の解決だけでなく、それらの枠を超えて存在する社会的問題の解決を図ることを目的とした公益性の高い事業を行う。売上高は78百万円(同19.1%増)、営業損失38百万円(前期は26百万円の損失)。自治体向け広報紙のオープン化・活用サービス「マイ広報紙」は順調に拡大が続いており、既に掲載自治体が700を超え、自治体数約1,750の約4割をカバーするまでになっている。またインターネット投票関連事業及び政治・選挙情報サイト「政治山R」も順調に拡大している。

(4) 財務状況及びキャッシュ・フローの状況
2019年2月期末の財務状況は、資産合計は5,877百万円(前期末比770百万円増)となった。流動資産は670百万円増加したが、主に現預金の増加507百万円、受取手形及び売掛金の増加118百万円による。固定資産は100百万円の増加となったが、無形固定資産の減少68百万円、投資その他の資産の増加183百万円による。負債合計は3,434百万円(同715百万円増)となったが、主に1年内返済予定の長期借入金を含めた短期借入金の増加495百万円、未払金の増加136百万円などによる。純資産は、55百万円増加して2,443百万円となったが、主に当期純利益の計上による利益剰余金の増加19百万円などによる。

また、営業活動によるキャッシュ・フローは458百万円の収入となったが、主な収入は税金等調整前当期純利益の計上305百万円、減価償却費218百万円、主な支出は売上債権の増加118百万円であった。投資活動によるキャッシュ・フローは383百万円の支出となったが、主にソフトウェアを中心とした無形固定資産の取得200百万円、投資有価証券の取得159百万円等による。財務活動によるキャッシュ・フローは431百万円の収入となったが、主に借入れ(ネット)による収入535百万円、配当金支払いによる支出121百万円などによる。この結果、期間中の現金及び現金同等物は507百万円増加し、期末の残高は2,423百万円となった。

(5) 2019年2月期下半期中の主な施策及びトピックス
a) 「SPIRALR」のLINE連携ソリューションを強化(2018年9月)
操作性とデザイン性に優れたパーソナルなメッセージを送れる「Flex Message」、LINEユーザーが入力したメッセージに対してあらかじめ設定しておいた内容を自動で応答できる「LINE Bot」に対応し、「SPIRALR」との連携を強化した。

b) 下北沢地域で使える電子地域通貨シモキタコインの発行を開始(2018年9月)
既述のようにエルコインの子会社として2018年3月にシモキタコインを設立。エルコインが提供する電子地域通貨プラットフォームを利用し、下北沢地域に限定した電子地域通貨の発行を開始した。またアイラブと協業して地元の店舗から出資・加盟店を募り、地域経済の活性化を目指している。2018年10月のカレーフェスティバルでは利用者が1,000人に達した。

c) 「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2018」受賞(2018年11月)
ASPIC(特定非営利活動法人ASP・SaaS・IoTクラウドコンソーシアム)が発表した「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2018」において、パイプドビッツの「SPIRAL マイナンバー管理サービス」が基幹業務系分野の準グランプリを、「こころの健診センターR」が同分野のベスト社会貢献賞を、パブリカの「マイ広報紙」がデータ活用系分野のベストイノベーション賞をそれぞれ受賞した。

d) 自動発信・音声応答搭載ソリューションを提供開始(2018年11月)
自動発信と自動音声応答を兼ね備え、電話応対業務を効率化する「オートコールBB」の提供を開始した。テキストを音声化する機能や指定日時・リストに自動で発信する機能を搭載しており、最低1席からの購入が可能。

e) 「SPIRAL ECR」がWorld Shopping BIZと連携(2018年11月)
アパレル特化型ECプラットフォーム「SPIRAL ECR」が越境ECソリューション「World Shopping BIZ」と連携した。これにより、ECサイトを最短1日で125ヶ国の越境対応を可能にし、人的コストやオペレーション課題を包括的に解決できる。

f) 「SPIRAL ECR」ユーザーのInstagramショッピング導入支援を開始(2018年12月)
アパレル特化型ECプラットフォーム「SPIRAL ECR」で構築したECサイト、Facebook、Instagramのショッピング機能の連動を支援するサービスの提供を開始した。

g) 割賦・クレジットカード申込電子化ソリューションを提供開始(2019年2月)
紙で行っていた各種申込業務を「SPIRALR」で電子化することで、申込者と加盟店双方の業務負荷を軽減し、業務効率化を実現する割賦・クレジットカード申込電子化ソリューションの提供を開始した。

h) 「SPIRALR」の新版1.12.6の提供を開始(2019年2月)
「SPIRALR」で作成したフォームを効率的かつ安全に切り替え可能な機能を実装し、フォームの切り替えに伴うダウンタイムの発生防止や、切替作業人員の削減に貢献する新版1.12.6の提供を開始した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《YM》

 提供:フィスコ

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