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【特集】プラチナ、高値圏も供給過剰見通しが懸念要因 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は4月8日に昨年5月以来の高値915.26ドルを付けたのち、高値圏で推移している。史上最高値を更新していた パラジウムが調整局面を迎えるなか、南アフリカのプラチナETF(上場投信)に投資資金が流入し循環買いが入ったことや、米中の通商協議の合意期待などが支援要因となった。また、米労働市場の堅調が示され、景気減速懸念が後退したこともプラチナ価格を押し上げる要因となった。

 ただ、プラチナは供給過剰見通しが上値を抑える要因である。自動車触媒部門でパラジウムからプラチナへの代替の動きや、南アの電力供給への不安感から供給懸念が出るようなことがなければ、もみ合いが続くとみられる。

●プラチナは欧米の通商協議の行方も焦点

 米中の通商協議が最終局面を迎えており、5月下旬にまとまる可能性が出てきた。米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、米中の通商協議で、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が4月29日の週に北京を訪問することが暫定的に決まったと報じた。また、両国の交渉官は5月下旬、もしくは6月初旬に調印式を行うことを目指しているという。CNBCは、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との会談について、中国側はトランプ氏が5月下旬に日本を訪問する際に実現させる可能性を模索していると報じた。米大統領は5月25~28日に国賓として来日する予定となっている。

 米中の通商協議がまとまり、貿易戦争に対する懸念が後退すると、景気の先行きに対する楽観的な見方が戻り、プラチナの支援要因になるとみられる。ただ、欧州連合(EU)加盟国が、米国と正式な通商交渉を開始することを最終承認した。欧米の通商協議が難航し、貿易摩擦に対する懸念が再燃する可能性もある。トランプ米大統領は9日、米国はEUから輸入する110億ドルの物品に対し関税を導入することを明らかにしている。また、日米の通商協議も始まった。26日には日米首脳会談を控えており、協議の行方を確認したい。

●自動車各社はEVに積極投資

 ニューヨーク自動車ショーで業界幹部らは、忍耐が必要と主張しながら多額の電気自動車(EV)向け投資を推し進める姿勢を示した。メーカー各社は、世界的な規制強化を理由にEV車の開発に力を入れている。ただ、米国の昨年の自動車販売台数に占めるEVないしプラグインハイブリッドの割合は約2%にとどまっている。当面のEV販売台数は充電設備、価格、バッテリー性能が改善されるまで比較的控えめな水準で推移するとみられている。各社がEV開発を進め、ガソリン車やディーゼル車を現状維持とし、パラジウムからプラチナへの代替がなければ、パラジウムの大幅な供給不足とプラチナの若干の供給過剰が続くとみられる。

 一方、欧州では独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題をきっかけにディーゼル車離れが進み、プラチナの自動車触媒需要の伸びを抑制する要因となった。また、昨年9月に新たな燃費計測方法として「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」が導入され、自動車販売減少の一因となった。欧州でもEV開発が進められているが、EVの大量普及には発電事情に問題があるとみられている。

 EVの普及に最も積極的な中国では、3月の新エネルギー車の販売台数が前年同月比85.4%増の12万6000台となった。ただ、全体に占める割合は約5%にとどまっている。コストと利便性でガソリン車に匹敵する水準に達しない限り、EVへの完全な移行は難しいとみられている。

●プラチナは投資資金流入が価格を押し上げる

 プラチナはETFに投資資金が流入したことや、先物市場で大口投機家の買い越し幅拡大が価格を押し上げる要因になった。プラチナETF残高は23日時点の南アで32.55トン(昨年末21.87トン)、米国で20.74トン(同19.45トン)、18日時点のロンドンで11.01トン(同8.82トン)となった。ただ、米国では3月28日の21.93トンをピークに減少し、利食い売りが出ており、高値での買いは見送られる可能性がある。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月16日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは3万1111枚(前週3万1844枚)となった。2月12日の1606枚売り越しから買い越しに転じて買い越し幅を拡大した。ただ、売り玉が2月12日の4万7020枚から1万5229枚に急減し、買い戻し主導の上昇となった。今後は新規買いが入るかどうかが焦点である。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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