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【特集】ホットリンク Research Memo(5):中国市場を中心にクロスバウンド事業が本格的に拡大

ホットリンク <日足> 「株探」多機能チャートより

 

■業績動向

2. 部門別売上高の動向
(1) SaaS事業
SaaS事業の売上高は前期比5.0%減の755百万円となった。「クチコミ@係長」は堅調に推移したものの、「e-mining」の減少が減収要因となった。なお、「e-mining」事業を行う子会社のリリーフサインに関しては、2018年12月に株式の過半を売却し持分法適用関連会社(出資比率34%)となっている。

2018年12月期は新サービスとして、ソーシャルメディアマーケティングツール「BuzzSpreader」の販売を2018年5月より開始した。ホットリンク<3680>が独自開発するAIエンジンとソーシャル・ビッグデータを活用することで、広告やアカウント運用にかかる工数を削減し、ソーシャルメディアマーケティング運用の効率化とROI向上に寄与するサービスとなる。Twitterのデータ値上げに対応するためAPI機能の改良を行ったことでサービス開始時期が遅れ、売上への貢献はほとんどなかったものの、今後はTwitterを使ったマーケティング支援サービス(広告販売・運用コンサルティング)と合わせた販売活動を行い、拡販を進めていく計画となっている。また、将来的には労働集約型である運用コンサルティングサービスの機能もAIエンジンで実現していく考えで、2020年夏頃のリリースを目標に開発を進めている。

(2) ソリューション事業
ソリューション事業の売上高は前期比22.3%増の1,878百万円となった。このうちEffyisの売上高は同20.6%増の1,632百万円と順調に成長した。ソーシャル・ビッグデータを経営に活用する企業が年々増加するなかで、米国や中国の大手SNSデータアクセス権の販売が拡大したほか、米国外の大手SNSデータアクセス権の販売ライセンスを新規獲得したことも増収要因となった。

また、Facebookが個人情報漏えい問題によりデータ販売を中止したことも、Effyisにとって追い風になったと見られる。Facebookからデータが取れなくなったことで、他のソーシャルメディアデータの価値が相対的に上がったためだ。Effyisは今後も安定成長を継続していくため、新規メディアのデータアクセス権獲得を進めていく方針となっている。

なお、Effyisの業績は前期比2ケタ増収となったが、営業利益は1億円強のとなり前期比で1割程度の減益になったと見られる。新規獲得した米国外の大手SNS会社のデータアクセス権販売に伴うミニマムギャランティーが、第3四半期以降で発生したためだ。このミニマムギャランティーについては2019年第2四半期まで続くが、月額利用料は前年比2ケタ増ペースで右肩上がりに成長しているため、2019年12月期第3四半期以降は増益基調に転じるものと予想される。

一方、国内のソリューションサービスについては前期比34.2%増の246百万円となった。Twitterを活用したマーケティング支援サービス(広告販売及び運用コンサルティング)を新たに開始し、約90百万円の増収要因となったことが寄与した。同サービスを使ったマーケティング施策によりSNS上での反響数が格段に増加するなど成功事例も多く出てきており、2019年も高成長が期待できる領域となっている。

(3) クロスバウンド事業
クロスバウンド事業の売上高は前期比141.6%増の606百万円と大幅増収となった。訪日外国人や中国市場での消費行動を分析するレポーティングサービスが堅調に推移したことに加え、2017年から立ち上げた中国でのプロモーション支援サービス「トレンドPR」が本格的に拡大してきたことが増収要因となっている。「トレンドPR」の顧客数は前期末比で1.2倍に拡大し、顧客単価も2倍に上昇した。成功事例も多く出始めており、開催するセミナーは毎回盛況で新規獲得も順調に進んでいる。

成功事例となった三越伊勢丹ホールディングス<3099>のケースでは、事前分析によるプロモーションインサイトの発掘とコンテンツ設計を行い、毎年11月11日に行われる中国EC業界の一大イベントである「W11(ダブルイレブン)」向けのKOL施策を実行したところ、サイトのファン数が400%以上増加したほか、施策前と比較してサイト訪問者数も300%以上となり、大幅な売上アップを実現した。また、某化粧品メーカーでは施策後にSNSでの口コミが急増し、口コミ露出数で競合商品を超えたほか、ターゲット層の拡大や大手ECモール「Taobao」での取扱店舗数も顕著に増加し、売上増につながったとしている。「Taobao」での商品取扱店舗に関して施策前はほとんど無かったが、施策後には308店舗に増加している。

一方で、新サービスとして開始した「越境EC X」に関しては、商品の貿易手続きに時間がかかるなど販売プロセスの構築に時間を要したことで、当初の計画よりも立ち上がりが遅れ、売上への貢献は軽微にとどまった。ただ、2018年4月には中国最大級のCtoCソーシャルコマースアプリ「微店」と業務提携し、日中間の45万店舗に及ぶソーシャルバイヤーのネットワークを活用できるようにするなど、販路の拡大は順調に進んでいる。現在は、販売ノウハウを蓄積・分析している段階で、事業スキームを構築後に本格的に拡販していく予定となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

 提供:フィスコ

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